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それからのクリスタニア〜静かな海に灯はともる  作者: おーがすてぃーぬ


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43/57

嵐の後でーキャプテンは愛妻家

金融戦争に敗北したAlluringとDMC。


レジェンディア以降久しぶりにレイコは酔っ払いです。

少しだけ平和なソブリン船内をお楽しみください。

ソブリンの船長室は、とても静かだった。


日向キャプテンは重厚なデスクに置かれた愛妻の写真を眺めながら、わずかに口元を緩める。


「クリストファー……さぞかし苦しいだろう」


低く、抑えた声。

「桜を傷つけた報いだ。存分に苦しめばいい……」


思い出す、あの日のこと。

今でも忘れない。


だが、その男は記念すべき日にすべてを失った。


これで、妻が怯えることも、震えることもない。


そう思うと、この上なく気分が良かった。



その頃、Alluringのパーティーは時間を早めて散会となり、本来乗せるはずだったゲスト数を大きく下回ったまま、記念航海へと出港していった。


かくして、漆黒の巨船は敗北した。


まだ夜には早い時刻。

ソブリンでは、和やかなディナータイムが続いていた。


「お父様!お母様!」


レイコは着替えもせず、家族との再会を喜ぶ。


実の両親、エヴァンスとキョウコは、嬉しそうに娘の背中を撫でた。


「レイコ!!会いたくて来てしまったよ!」


ダークグリーンのジャケットにダイヤモンドのブローチをつけた紳士、エヴァンス・オーガスティア。


そして、同じくダークグリーンのドレスに身を包んだキョウコ・オーガスティア。


レイコは母に似ているらしい。

リヒトは静かに一歩進み、船長として挨拶した。


「お父様、お母様。初めまして。夫のリヒト・ヴァルナーと申します」


「やぁ!婿殿!話は兄さんから聞いてるよ!紅海では空母が驚くほどの英雄だったそうじゃないか!」


「大将閣下のご令息が息子になるなんて、鼻が高いわ」


「お父様、なかなか会いにいけなくてごめんなさい。ノアは元気?」


「レイコ、パパったらあなたたちに会いたくて、ノアをハワード家に預けてすぐシンガポールに飛んできたのよ。今頃ノアは、ハワード邸で飛び回ってると思うわ」


レイコは、愛犬が庭を駆け回る姿を思い浮かべ、くすりと笑った。


「……ところで、婿殿」


エヴァンスがふと真顔になる。


「うちの娘のどこが好きなんだい?父としては、娘の魅力は分かっているつもりだが」


リヒトは、ほんのわずかに遠い目をした。


(ここで言うのか……)


どこの世界に、妻の父に大声で妻のここが好きです!と言う人間がいるだろうか。


サウサンプトンでの公開プロポーズの方が、何倍もマシだとリヒトは思った。


「あなた!リヒトさんを困らせてはだめよ!」


キョウコがすかさずたしなめる。


「いや!婿に来る覚悟をした男だ!ぜひ聞いておきたい!」


逃げ場はなかった。


リヒトは静かに覚悟を決めた。


「レイコは、とても小悪魔ですが、投資家らしく頭の回転が速い。言い出したら聞きませんが……怒ると可愛いんです。子猫みたいに」


一瞬の沈黙。


そして——


エヴァンスは豪快に笑った。


「……そうだろう!妻にそっくりなんだ!私も出会った時、同じことを思った!」


なぜか意気投合する男たち。


キョウコとレイコは顔を見合わせ、ため息をついた。

「お母様……素敵だけど……」


「嬉しいんだけど、パパが始まると止まらないのよね……」


その後も二人は、あれが可愛い!ここが可愛い!と言っては楽しそうに笑い続けた。


その様子を見ていたソブリンクルーたちは、ヴァルナーキャプテンの愛妻家ぶりは、おそらく日向キャプテンを上回ると確信し、微笑ましく見守っていた。


やがて夜も更ける。


レイコは、名残惜しそうに両親へ言った。

「お父様、お母様。今度イギリスに来てくれない?私たち、式を挙げようと思うの」


「それはいい!ヴァージンロードは兄さんには譲らないぞ!」


上機嫌な両親を見送り、部屋に戻った頃には、レイコは今更酔いが回ってきていた。


「疲れたわー。ドレス脱ぐー。」


キラキラしたヒールを脱ぎ捨て、ショールも無造作に投げる。


完全に酔っ払いだ。


リヒトは覚えのある光景に苦笑いした。


「レジェンディアじゃないぞ」


「なんでもいいのよー。ファスナー下ろしてー。」


「おい。俺がバルセロナでどれだけ悩んだと思ってる」


レイコは振り向き、ふっと笑う。

「分かってるわよ。あなた、私のこと大好きだもん」


「気に入らないな。俺だけなのか?」


穏やかな時間が流れていく。


その頃、エヴェリーナは日本行きの飛行機に乗っていた。


その表情は、どこか険しかった。


「社長、富士崎社長の旦那様から、十日後にお茶会のご招待が」


差し出された美しい招待状に目を落とし、エヴェリーナは微笑む。


「まぁ……富士崎社長が日本のお茶をお出しになるそうよ。楽しみね」


誰もまだ知らない。


その日が、新たな波乱の幕開けになることを。


ノルウェーには、静かに、しかし確実に嵐が近づいていた。

エヴェリーナが富士崎社長に会うために日本へ。


日向キャプテンの以外な嗜みが。

次回もお楽しみください。

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