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それからのクリスタニア〜静かな海に灯はともる  作者: おーがすてぃーぬ


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カウントダウンー見えざる危機

タイムリミットは迫ります

Alluringの黒い大理石のホールに、それは現れた。


船長の正装を纏ったリヒトは、宮廷舞踊Mazurkaの旋律に合わせて軽やかにステップを踏み、そのままレイコを迷いなく中央へと導いていく。


その瞬間、ヴィクトリアは手にしていたグラスを割らんばかりの力で握りしめた。

隣にいたマクシミリアンは何も言わず、そっとその手に自分の手を重ねる。


「……ヴァルナー。やってくれたわね…」


Mazurka。それは本来、この場で踊られるものではない。プログラムにも存在しない。それでも、目の前で繰り広げられているのは、紛れもなくそれだった。


ホールに静かなざわめきが広がる。


「あれが、BMMの紅海の英雄か……」

「宮廷舞踊を持ち出すとは……」


DMCの関係者たちは言葉を失い、招待客たちはただ息を漏らすばかりだった。その中で、BMMの者たちだけがわずかに口元を緩めている。


シャンデリアの光を浴びて、レイコのドレスは黄金に輝いていた。踵が床を打つたびに、掌が打ち鳴らされるたびに、閃光のような輝きが弾ける。それは単なる舞ではなく、明確な意思表示だった。


その頃、ニューヨークのキャピタル・ウォーデンでは静かに動きが進んでいた。


「合図が来た。発表させろ。」


『速報です。ニューヨークに本社を置く投資会社キャピタル・ウォーデンは先ほど、クルーズ大手Dream Meridian Cruises傘下、コラールラインほか複数社へのTOBが完了したと発表しました——』


控室で市場を確認していたヴェガルドの秘書は、血の気を失った。


「……キャピタル・ウォーデン……!なんてことだ……!!」


市場は容赦がなかった。モニターに映る株価は無情なまでに崩れ落ちていく。

14ドルを割り、13.8、13.7…とみるみるうちに下がっていく。


(このままでは……我が社は終わりだ……)


優雅な宮廷舞踊の旋律が流れ続ける中、DMCグループは水面下で大混乱に陥っていた。


やがて曲が終わると、ホールはまるで王宮のような空気に包まれる。リヒトが胸に手を当てて礼をし、レイコが深くカーテシーを落とす。わずかな静寂のあと、爆発するような歓声が沸き起こった。


レイコはまっすぐにシャンパンを受け取り、一瞬だけリヒトへ視線を向ける。言葉はない。それでも、すべては通じていた。


そのまま彼女は静かにデッキへと向かう。


その動きを、クリストファーは見逃さなかった。

人の流れに紛れながら、一定の距離を保って後を追う。

その視線は、獲物を見定めた狼のそれだった。


同じ頃、秘書は広すぎる船内を呪うように走っていた。


(ダメだ……間に合わない……)


ホールでは、それぞれが異なる表情を浮かべていた。静かにシャンパンを傾ける者、

歯噛みする者。

そして何事もなかったかのように微笑む者。


誰もが、すぐ側に迫る崩壊に気づいていなかった。

穏やかな表情を見せたはずのクリストファー。

普段なら理性的になれたはずですが…

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