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それからのクリスタニア〜静かな海に灯はともる  作者: おーがすてぃーぬ


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33/57

魔王の純心ーマダムの苦悩

少しずつ明かされるクリストファーの過去。

クリストファー崩壊はすぐそこです。

船内パーティーから一夜明けた、ソブリン。


ブリッジでは、リヒトが日向キャプテンに代わって指揮を取っていた。


海は穏やかだったが、船内にはまだ昨夜の余韻が残っている。



午後の茶会の会場となる小サロンでは、レイコが宝石商のマダム・デルフィーヌとともに準備を進めていた。


テーブルに花を整えながら、レイコは静かに言う。


「先日いただいた絵ですけれど……クリスタニアの船長室に飾ることにしましたの。」


マダムは柔らかく微笑んだ。


「お父様の代わりに天使が船長だなんて……素敵ですわね」


その言葉に、レイコはわずかに目を伏せる。


「えぇ……そう思います」


一瞬の静けさ。


マダムの表情が、ふと曇る。


「あの方も……そうであれば良かったのかもしれません」


「……あの方?」


レイコが問い返す。


マダムは静かに続けた。


「DMCのクリストファー副社長のことですわ」


言葉を選ぶように、ゆっくりと。


「ヴェガルド社長の奥様、リディア夫人は社交が忙しくて……幼い副社長をナニーに預け、家を空けることが多かったそうです」


花の香りが、わずかに揺れる。


「優しい方ではあると思いますわ。でも……今の副社長を見ておりますと、やはりご両親の愛情に飢えていたのではないかと……」


レイコは手を止めずに、ただ黙って聞いていた。


マダムは続ける。


「それに、Preceptのエヴェリーナ社長が就任して間もなく、福祉事業の視察でノルウェーに派遣された副社長は……」


一拍。


「馬術の腕もよくて、施設の子どもたちにとても人気だったと聞いております。」


その声には、かすかな戸惑いが混じる。


「そう聞きますと……あの悪辣な評判も、幼い頃の傷が深すぎるせいではないかと……胸が痛みますのよ」



そして、ゆっくりと。


「もしウォーデンのTOBが完了したら……副社長は、この世に居場所を失うのではないかしら」


静かな声だった。


「本当はお父上に、褒めてもらいたかったのでしょうね……何としても成果をあげて……」



レイコは言葉を失う。


幼い頃の話を聞けば、彼がしてきた行いの理由として成立はする。


それでも、許されることではない。



「マダム」


レイコは静かに言った。


「これから何が起きたとしても……副社長が救われるか否かは、神のみぞ知る、ですわ」


マダムに向き直り、その手をそっと取る。


「私たちが手を差し伸べることは出来ませんもの」


優しく、しかし揺るがずに。


「神がお許しになるなら、いつか救いの手が訪れるはずです」


その言葉に、マダムは再び微笑んだ。


「レイコ様は……どんな時でも見極めようとなさいますのね」


やわらかな声。


「亡きヴァルナー夫人も、きっと安心なさるでしょう」



やがて、茶会の時間が訪れる。


レイコは船長夫人として、優雅に微笑んでいた。


その表情は穏やかで——


何一つ、内側を見せてはいなかった。

愛に飢えたクリストファー。

取り戻せるのか、それとも魔王のままで終わるのか、引き続きお楽しみに。

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