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それからのクリスタニア〜静かな海に灯はともる  作者: おーがすてぃーぬ


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皇帝の夜会ー星降る夜のファーストダンス

リヒトとレイコのダンスシーンは、レジェンディアより愛をこめてでもお楽しみいただけます。

新月の夜。星が無限に広がる夜空の下、闇の海を進む光があった。


白き皇帝、ソブリン。


その船内は闇を忘れさせるほどに煌めき、その光は静かに海面を照らしている。


⸻


VVIPの一室で、レイコはスタイリストに手伝われながら、黄色に輝くドレスへと身を包んでいた。


幾重にも重ねたパニエで膨らませた宮廷舞踊用のドレスは、シャンデリアの光を受けて眩く輝く。


「確かにキャプテンの髪の色ですねぇ。それにプロイセンブルー……キャプテンの目の色みたいです!」


スタイリストは髪に飾りを添えながら、嬉しそうに言う。


胸元にはヤグルマギクのネックレス。耳元にも同じピアス。

黄色にプロイセンブルー。

確かにリヒトを思わせる色だった。


鏡の中で少しはにかみながら、レイコは言った。

「結構決めるの大変だったのよ。でも、これなら気に入ってくれると思うわ」


「絶対キャプテン喜びますよ。さ、完成です」


バロックダンスに似合うよう編み込まれた髪は頭頂でまとめられ、真珠の飾りが散りばめられている。


まるでお伽話の中の姫のようだった。


レイコは満足げに立ち上がり、白いグローブを腕に通す。

「そろそろキャプテン、いらっしゃる頃ですね。」


スタイリストは最後のチェックを丁寧に行った。


⸻


ノックの音がして、扉が開く。


現れたリヒトは、珍しく制帽を被り、白のグローブを着けていた。


「キャプテン、奥さまのお支度はバッチリですよ!」


リヒトは一瞬、言葉を失った。

(……本当に、お姫様だな)


「どうかしら?」


少しだけ照れた声。


「……綺麗だ」


短い言葉だったが、それで十分だった。


「さ、キャプテン。エスコートを」


スタイリストに促され、リヒトは静かに腕を差し出す。


レイコはそっと腕をからめた。


⸻


ソブリンのボールルームは、色とりどりのドレスと花の香りが混じり、磨き上げられた床にはシャンデリアが映り込む。


眩いほどの光だった。


その奥に設えたステージに、日向キャプテンが立った。

正装に身を包み、社長代理としてゆっくりと前へ出る。


一切の無駄のない所作。


視線を上げた瞬間、空気が引き締まる。

「本日はご乗船、誠にありがとうございます。」


低く、よく通る声。


簡潔でありながら、揺るがない。

その存在だけで、この船の格を示していた。


レイコは小さく呟く。

「まるで皇帝ね」


リヒトはわずかに笑う。

「まったくだ」



そして、その時が来た。


宮廷舞踊の旋律と共に、リヒトはレイコの手を取り、軽やかにステップを踏みながら中央へと導いた。


それだけで、人々は息を呑んだ。


ドレスがふわりと舞い、ドレスはその度に煌めいた。


ヒールが床を打つ音が響き、クルクルと2人が回ればリヒトの制服のジャケットか飜る。


ただ、美しい。

それは——芸術だった。




その様子は、BMMの全クルーズ船、本社、支社へと中継された。


本社のモニター前。


社員たちは思わず息を呑む。


「さすがキャプテン……」


「これがソブリンのファーストダンスか……」


「すごい……」


誰もが目を離せない。


それは単なるダンスではなかった。

BMMという組織そのものの完成度を、見せつける瞬間だった。



同じ頃、クリスタニア。


全モニターにその光景が映し出されている。


「すげぇ!キャプテン、マジで王子様じゃないっすか!」


三井が声を上げる。

「いや……すごいな」


谷屋も小さく呟く。

「クリスタニアが惚れる理由分かる気がする。」


シンシアは、静かに見つめたままうっとりしながら言う。

「……レイコさん、素敵だわ。お姫様みたい。」




ダンスが終わり、レイコは優雅にカーテシーを、

リヒトは胸に手を当てて礼をした。


一瞬の静寂の次の瞬間——

ボールルームは大歓声に包まれた。


⸻


端で見ていたフリートヘルムは、静かに頷く。


「これは……勝負は決まったようなものだな。さすがはBMMだ。」




その頃のシンガポール。


係留されているAlluringの船長室で、ビクトリアはゆっくりと部下を呼び出した。


「マックス」


「はい」


「社長命令よ。今度の記念パーティーのファーストダンスは、私とあなたになったわ。」


マクシミリアンは驚く。

「光栄ですが、副社長がお相手だったはずでは?」


「事情が変わったの」


ビクトリアは少し面倒そうに言った。


「プログラムを変更するわ。あなた、タンゴは得意だったわね。リベルタンゴにしましょう。あたくしの船のパーティーだもの」


「承知しました。準備致します。」


ビクトリアはゆっくりと微笑む。

「そういえば…ヴァルナーもタンゴが得意だったわね」


視線が鋭くなる。


「久しぶりに見せてもらいましょう」


その笑みは、美しく——そして鋭かった。


⸻


シンガポールまで、あと数日。

その日は、すぐそこまで迫っていた。

宮廷舞踊は、クルーズ船で踊られるものではありません。その分レイコとリヒトの格の高さが明確になります。

シンガポールでDMCとのダンス対決になりそうですが、軍配は果たして…

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