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それからのクリスタニア〜静かな海に灯はともる  作者: おーがすてぃーぬ


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28/57

見えてはいけないものーすでに支配下にある

ゴードン次長の勘。クリスタニアから何を感じたのでしょう。

金融市場の恐怖をどうぞ

そして迎えた出港前日。


 クリスタニアとソブリンは、それぞれ出港準備に追われていた。埠頭では、ゴードン次長がクリスタニア機関長の谷屋と話している。


「……あの若いのが乗らねえから、少しは機嫌が悪くなると思うがな。問題はねぇだろう。だが——少しばかり気になることがある」


「何ですか?」


 谷屋が視線を上げる。


「スタビライザーだ。酷使してるからな。異常はなかったが……何でか違和感が拭えねぇ」


 谷屋は小さく頷いた。


「クリスタニアなら、他でカバーできます」


 だがゴードンは、海の方へ目をやったまま動かない。


「……それでも、引っかかるんだよ」



 その頃、ソブリン船内。


 日向キャプテンとリヒトは、クルーを前にブリーフィングを行っていた。軍出身者が多いせいか、空気は張り詰め、まるで軍艦のようだった。


「……以上だ。シンガポールでは埠頭の警備も厳重にしてある。くれぐれも警戒を怠るな」


 短く、しかし重い言葉。


 ブリーフィングを終えた日向キャプテンは、そのままブリッジへ向かい、機器を一つ一つ確認していく。


「ヴァルナー」


「はい」


「船内パーティーのことだが、ファーストダンスに宮廷舞踊を選んだそうだな」


「妻の提案です」


「その様子を中継する。こちらに意識を向けさせれば、クリスタニアの意図を読まれる可能性は下がる」


「承知しました」


 一拍置いて、日向は視線を向けた。


「……DMC出身のお前に、対DMCの先兵を任せるとは思わなかったがな。ニューヨークの件は、これで水に流してやろう」


 リヒトがわずかに眉を寄せる。


「ニューヨーク……?」


「ゲストを全員下船させろと指示したのに、オーガスティア様だけ残った件だ。ソブリンでは、そのような例外は認めん」


「しかし、あの時は——」


「あの時どうだったかは関係ない」


 冷たく言い切る。


「この船では、どんな弱点も排除する」


 それは命令ではなく、原則だった。



 同じ頃、ニューヨーク。


 大手投資ファンド、キャピタル・ウォーデンが動いていた。DMCの子会社となっているコラールラインをはじめ、複数の企業に対して、静かに、しかし確実に買収が進められている。


 市場はまだ、それに気づいていない。


いよいよシンガポールへ!

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