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それからのクリスタニア〜静かな海に灯はともる  作者: おーがすてぃーぬ


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26/57

白の皇帝ーすべてはシンガポールへ

DMCに勝つために、レイコは知恵を絞ります。

それから一週間ほどして、ソブリンが晴海に姿を現した。


白く、虹色に輝く船体は、まるで雪のようだった。


船首にはBMMのエンブレム。


王冠を思わせる金色の繊細なラインが、優雅に走っている。


晴海で、レジェンディアとクリスタニアを従えて係留されるその姿は——


王を飛び越え、


まるで皇帝のようだった。



日向キャプテンはオフィスの窓辺から、その姿を満足げに眺めている。


「どうかしら?あなたにもっとも相応しい船だと思うわ」


富士崎社長の声に、日向はわずかに口元を緩めた。


「素晴らしい贈り物だ」


静かに言う。


「この船で、君に勝利を捧げると約束しよう」



埠頭では、次席船長となったリヒトが、レイコとともに船内を確認していた。


ロビーに足を踏み入れた瞬間、思わず息を呑む。


深紅のカーペット。


金色の調度。


磨き上げられた木目に走る、繊細な装飾。


まるで宮殿のような空間だった。


中央には、専属奏者のためなのか、豪華なグランドハープが静かに佇んでいる。


「レジェンディアの三倍は豪華ね。あなたが次席で良かったわ」


レイコが楽しげに言う。


「俺はクリスタニアでいい。この船は日向キャプテンしか似合わないさ」


「そう?レジェンディアでは王子様みたいだったし、このフロアであなたが踊れば——」


くすりと笑う。


「ソブリンは間違いなくNo.1になれるわよ」


リヒトは小さく息をついた。


「バカを言うなと言いたいが……」


一拍。


「この船のパーティーでは、ファーストダンスは船長夫妻と決まっている。それも決めなければならないな」


レイコは楽しそうに目を細める。


「ねぇ、ポルカは踊れるかしら?」


「BMMクルーズはイギリスが本社でしょ?それならマズルカはどう?」


軽やかに続ける。


「ボールダンスはありきたりだもの。バロックダンスはできる人が少ないのよ。私もエディも踊れるから、今から教えてもらえば間に合うわ」


「宮廷舞踊か……悪くないな」


リヒトは頷く。


「だが、ドレスは専用のものにするんだろうな」


「もちろんよ。提督令嬢で、上級大将令息夫人に相応しいものにするつもり」


少しだけいたずらっぽく笑う。


「あとで選ぶの、手伝ってくれる?」


「責任重大だな」


「よし、船内も確認できたし、あとは準備ね」



ソブリンの出港準備が慌ただしく進む頃。


イギリス、ハワード邸では——


レイコの両親、エヴァンスとキョウコが訪れていた。


庭ではドーベルマンのノアとシェパードたちが、楽しげに駆け回っている。


「姉さん、しばらくノアを頼むよ」


「大丈夫よ。ノアもすっかり立派になったわねぇ。うちの人にスカウトされそうだわ」


軽く笑い合う。


エヴァンスは、ふと思い出したように言った。


「それはそうと、レイコの旦那はどんな奴なんだ?兄さんがずいぶん気に入ったらしいが」


「私もまだ会ったことはないけれど、とても洒落た方だそうよ」


キョウコは穏やかに微笑む。


「ドイツのヴァルナー大将のご子息で、セレモニーで公開プロポーズをしたんですって。王子様みたいだったって、艦隊の子たちが騒いでいたわ」


「それは早く会わねばならんな!」


エヴァンスは勢いよく立ち上がる。


キョウコがくすくす笑った。


「この人、早く会いたくてシンガポールで待ち構えるつもりなんですよ」


「まあ!それでノアを預けるのね」


姉は楽しそうに笑いながら言う。


「レイコのご主人に、よろしく伝えてちょうだい」



ソブリン出港まで、あと十日。


舞台は、静かに——


しかし確実に整えられていく。

Mazrukaはポーランド発祥のポルカ。

19世紀のヨーロッパで流行し、舞踏会では定番になったと言われているものです。

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