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それからのクリスタニア〜静かな海に灯はともる  作者: おーがすてぃーぬ


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26/101

白の皇帝ーすべてはシンガポールへ

DMCに勝つために、レイコは知恵を絞ります。

それから一週間ほどして、ソブリンが晴海に姿を現した。


白く、虹色に輝く船体は、まるで雪のようだった。


船首にはBMMのエンブレム。


王冠を思わせる金色の繊細なラインが、優雅に走っている。


晴海で、レジェンディアとクリスタニアを従えて係留されるその姿は——


王を飛び越え、


まるで皇帝のようだった。


⸻


日向キャプテンはオフィスの窓辺から、その姿を満足げに眺めている。


「どうかしら?あなたにもっとも相応しい船だと思うわ」


富士崎社長の声に、日向はわずかに口元を緩めた。


「素晴らしい贈り物だ」


静かに言う。


「この船で、君に勝利を捧げると約束しよう」


⸻


埠頭では、次席船長となったリヒトが、レイコとともに船内を確認していた。


ロビーに足を踏み入れた瞬間、思わず息を呑む。


深紅のカーペット。


金色の調度。


磨き上げられた木目に走る、繊細な装飾。


まるで宮殿のような空間だった。


中央には、専属奏者のためなのか、豪華なグランドハープが静かに佇んでいる。


「レジェンディアの三倍は豪華ね。あなたが次席で良かったわ」


レイコが楽しげに言う。


「俺はクリスタニアでいい。この船は日向キャプテンしか似合わないさ」


「そう?レジェンディアでは王子様みたいだったし、このフロアであなたが踊れば——」


くすりと笑う。


「ソブリンは間違いなくNo.1になれるわよ」


リヒトは小さく息をついた。


「バカを言うなと言いたいが……」


一拍。


「この船のパーティーでは、ファーストダンスは船長夫妻と決まっている。それも決めなければならないな」


レイコは楽しそうに目を細める。


「ねぇ、ポルカは踊れるかしら?」


「BMMクルーズはイギリスが本社でしょ?それならマズルカはどう?」


軽やかに続ける。


「ボールダンスはありきたりだもの。バロックダンスはできる人が少ないのよ。私もエディも踊れるから、今から教えてもらえば間に合うわ」


「宮廷舞踊か……悪くないな」


リヒトは頷く。


「だが、ドレスは専用のものにするんだろうな」


「もちろんよ。提督令嬢で、上級大将令息夫人に相応しいものにするつもり」


少しだけいたずらっぽく笑う。


「あとで選ぶの、手伝ってくれる?」


「責任重大だな」


「よし、船内も確認できたし、あとは準備ね」


⸻


ソブリンの出港準備が慌ただしく進む頃。


イギリス、ハワード邸では——


レイコの両親、エヴァンスとキョウコが訪れていた。


庭ではドーベルマンのノアとシェパードたちが、楽しげに駆け回っている。


「姉さん、しばらくノアを頼むよ」


「大丈夫よ。ノアもすっかり立派になったわねぇ。うちの人にスカウトされそうだわ」


軽く笑い合う。


エヴァンスは、ふと思い出したように言った。


「それはそうと、レイコの旦那はどんな奴なんだ?兄さんがずいぶん気に入ったらしいが」


「私もまだ会ったことはないけれど、とても洒落た方だそうよ」


キョウコは穏やかに微笑む。


「ドイツのヴァルナー大将のご子息で、セレモニーで公開プロポーズをしたんですって。王子様みたいだったって、艦隊の子たちが騒いでいたわ」


「それは早く会わねばならんな!」


エヴァンスは勢いよく立ち上がる。


キョウコがくすくす笑った。


「この人、早く会いたくてシンガポールで待ち構えるつもりなんですよ」


「まあ!それでノアを預けるのね」


姉は楽しそうに笑いながら言う。


「レイコのご主人に、よろしく伝えてちょうだい」


⸻


ソブリン出港まで、あと十日。


舞台は、静かに——


しかし確実に整えられていく。

Mazrukaはポーランド発祥のポルカ。

19世紀のヨーロッパで流行し、舞踏会では定番になったと言われているものです。

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