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それからのクリスタニア〜静かな海に灯はともる  作者: おーがすてぃーぬ


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激動の布陣—動き出す艦隊—

よく考えると、日向キャプテンは24時間戦える男なのかと思うくらい、仕事している気がします。

日向キャプテンの執務室。


応接用の椅子には、葛城統括部長、ヘンリー船長、リヒト、そして常務のエリコが座っていた。


テーブルの上には「SOVEREIGN」と記された資料が広げられている。


全員が難しい顔をしていた。


「ロゼリアが目眩しになり、無事に晴海まで到着できそうで何よりですが……今後の艦隊編成はどうするおつもりかな?」


ヘンリー船長は、資料から目を上げずに尋ねた。


エリコ常務が静かに答える。

「ソブリンは主席に日向キャプテン、次席にヴァルナーキャプテンを。


「クリスタニア主席は引き続きヴァルナーキャプテン。ロゼリアはルイ副長を船長に昇格させます。ルナディアは日向キャプテンがしばらく兼務になります」


そして続ける。


「ヘンリー船長には、艦隊統括とレジェンディアでの教官をお願いしたいのです」


「……人手が足りておらんのですな?」


「その通りです。DMCに対抗するための編成ですが、クリスタニアの人選に時間がかかったので、ルナディアとロゼリアの人選が間に合っていないのです。」


エリコはわずかに息を整える。


「船長候補たちこ教育段階は次のフェーズに入ります。レジェンディアを練習船としてお力添えいただきたく。」


「ふむ……」


ヘンリーは静かに頷いた。


「我が女王と離れがたいと思っていたが、ありがたい。お引き受けしよう」


日向キャプテンが口を開く。


「問題はシンガポールだ。クリスタニアは行かせるなと、社長が言っている。DMCから守るためだ」


リヒトが視線を上げる。


ソブリンはクリスタニアよりも更に大型だ。クルー数も必要になる」


短く言い切る。


「そこで今回は軍出身者を優先する。ソブリンは旗艦ではなく、指揮艦だからな」


エリコが引き継ぐ。


「ヴァルナーキャプテン、奥様には仕事をお願いしなければならないわ。」


「仕事……ですか?」


「えぇ、ご存知の通り日向キャプテンの奥様は富士崎社長。今回のパーティーは社長は欠席されるから、日向キャプテンが代理を務める。」


穏やかに、しかし明確に告げる。


「ヴァルナーキャプテン、実質的な運航全権は、あなたにあると思ってちょうだい」


リヒトの表情がわずかに変わる。


「パーティーのゲストも乗せることになっているの。DMCに艦隊編成を悟らせないためにも——」


一拍。


「レイコさんが船長夫人として、あなたと共にホスト役を務める必要がある。」



静かな圧がかかる。


「レイコさんなら問題ないでしょう。オーナーでもあり、クリスタニアもレジェンディアも経験している」


そして、わずかに柔らぐ。


「……返事は一週間待つわ。」


リヒトは視線を落とした。


「二人でよく話し合いなさい。今、我が社にはあなたたちの力が必要なの」


エリコは腹部に手を当て、苦笑する。


「私が行ければいいのだけど、ご覧の通りね」


日向キャプテンが静かに言った。


「ヴァルナー、返事は後で聞かせてくれ」


そして、話題を切り替える。


「次にPreceptのエヴェリーナ社長が、極秘で社長会談を望んでいる。DMCに対して考えがあるようだ」


「……動くだろうな。あの男なら」


ヘンリーが眉をひそめる。


「だが、艦隊統括は日向に任せるべきだ。対DMC戦略ならなおさらだ。私には荷が重い」


それまで黙っていた葛城が口を開く。


「日向キャプテンは適任です。しかしエリコ常務の産休もあり、体制を組み直したばかりです」


さらりと続ける。


「さらに日向キャプテンには、BMMクルーズ設立にも関わっていただく必要があります。これ以上仕事を増やすのは合理的ではない。


一拍。


「そこで、私はヴァルナーキャプテンに日向キャプテンの補佐をしてもらいたいと考えています。あ。ちなみに、クリスタニアはBMMクルーズ本社のあるロンドンへ移籍予定です。サウサンプトンですね」


リヒトが顔を上げる。


「……は?」


「DMCヨーロッパ本社もイギリス。Alluringの母港も同じです」


淡々と続く。


「敵の本拠地で、ロイヤルネイビーの目がある中、好き勝手は出来ないでしょう」


「いつ動かすつもりですか。クルーの調整も考えれば、半年は欲しい」


「だめだ」


日向キャプテンは即答した。


「シンガポール出航後、すぐに移動させる」


その理由は明確だった。


船籍変更の手続きはすでに進行済み。


サウサンプトンのオフィスも準備済み。


そして——


「DMC幹部がシンガポールに集まる今が、唯一の機会だ」


静かに言い切る。


「各位には急がせてすまないが、BMMクルーズ設立まで尽力願いたい。ソブリン出港は二週間後だ」



リヒトが本社を出ると、


ロビーにはレイコが立っていた。


クリーム色のワンピースに身を包み、穏やかに微笑んでいる。


「レイコ……迎えに来てくれたのか。ちょうどいい、話がある」


自然と並び、二人はクリスタニアへ向かう。


——それは、


二人にとって、大きな試練の始まりだった。

リヒトがつべこべ言う前に準備は万端。


クルーズ部門の仕事の速さは、作者も追いつけません。

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