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13/16

13:修学旅行~帰国

 朝から列車に揺られること5時間?トロントに着いた。ここで2泊ホテルに滞在して帰国になる。初日は主にバスの中からCNタワーやトロント大学を眺めるだけで終わった。感想特になし。


 翌日は半日かけてカーサ ロマを見学した。クラスメートたちは大騒ぎだったけれど、セツナにはさほど興味の湧くものではなかった。素晴らしい邸宅だとは思う。けれど私には似たような住まいに暮らした経験が何度もあるからね。その全てが家主の娘や女主人だったわけではないが、友達らのような新鮮な感動を味わうことはなかった。せっかくならナイアガラの滝を見てみたかった。トロントに来たのは初めての経験だ。ナイアガラの滝も写真でしか見たことがない。残念だ。そうそう、用心して理子ちゃんもセツナもスカートを履いていった。


 午後は市内で自由行動だ。主にお土産探しをした。カナダと言えば誰もが思い浮かべるメープルシロップは、割れたらキャリーバッグの中が悲惨なことになりそうで、買うつもりはなかった。のだけれど、カナダには缶入りのメープルシロップがあるんだね。これなら安心して持ち帰れそう、と2つ買った。

海外旅行のお土産定番イメージのあるチョコレートも買った。妹が喜ぶと思って。ブサい絵が可愛くてつい買ってしまったのはサーモンの燻製。父親に渡そう。母にはオーガニックブランドの石鹸とハンドクリームにした。後は適当に皆が買っているからメープルの飴ちゃんとかクッキーを買った。

 自分用にはM·A·Cのコスメを買ってみた。今まで競技用のメイクしかしたことがなかったから、ナチュラルな色のものを使ってみたかったんだ。リップを1本と、アイシャドウのパレットを1つ買った。


 ホテルの部屋でパッキングをする。ゆとりを持たせてきたはずのキャリーバッグは、パンパンになっていた。隣では「無理、入んない」とミチルが嘆いている。だから何をそんなに持ってきたんだよ。


「やってあげようか?」


「神!セツナお願いー」


 調子いいなぁ、と笑いながらミチルのスーツケースを覗き込んだ。確かに溢れかえっている。ミチルは「一旦全部出すね」と荷物をベッドの上に並べた。よし、任せてよ。


 箱状のお土産や、ドライヤー、変圧器など固いものの場所を最初に決めた。なんでドライヤーまで持ってきたかなぁと突っ込みたかったのは内緒だ。ホストファミリーの家では貸してもらえたし、ホテルには当然備え付けがある。セツナは持ってこなかった。ま、ミチルの髪型には、そのクルクルドライヤーが必要ぽいもんね。そして服の枚数が尋常じゃなかった。これ、着てないよね。これも着てなかった。少し呆れつつもそんなミチルが可愛いなと思った。


「明日着るものだけ除けてくれる?ハンガーにかけておいて」


 親友は素直に「うん」と頷くと、少し迷いながら服を選んだ。うんうん、かさばるものをちゃんと選んでるのは偉いよ。下着も忘れずにね。そして残りの服をくるくると丸めて、隙間にどんどん詰めていった。捨ててもいいのに、と思ったガイドブックも、仕切りのポケットにちゃんと入れておいた。撮影済みの写ルンですを残りの隙間に埋めていく。未使用のものが4つあった。どうするの?これ。


「すご!まだ入るじゃん!」


 目を輝かせた親友に「もうお土産買うな」とくぎを刺すことは忘れなかった。


 あくる日、セツナたちのグループは乗継便で帰国した。別グループが帰りは直行便なんだ。貸し切りバスで学校に着いたのは夕方だった。時差ボケなのか、皆くたびれた顔をしている。明日は休み、また明後日ねーと言って駅で別れた。何人かは学校まで親が迎えに来ていた。

 いつものクセで二子玉川の駅で降りてしまった。キャリーバッグを転がして多摩川を渡る。


(帰ってきた)


 ただいまを言った後で、今日のうちに両親に話さなければならないことがある。謝ること、があるんだ。できれば父親も揃っているところで話したい。


「ただいま」


「お姉ちゃんおかえり!」


 妹が走って出迎えに来てくれた。妹は合唱部に入っているんだ。さほど熱心な部活ではないようで、週に3回程度しか部活の日がない。今日は休みだったみたいだね。


「ただいまー」


 ねえねえ楽しかった?写真いっぱい撮ってきた?何食べたの?矢継ぎ早に質問してくる。可愛いなぁ。


「おかえりセツナ」


 お出汁のいい香りがする台所から、母親が顔を覗かせた。今夜も和食みたいだ、ありがとう嬉しい。

キャリーバッグを開けて、最初にお土産を取り出した。妹はチョコレートに喜んでいる。「今1個食べてもいい?」って言いながら、もう箱を開けていた。キーホルダーもおまけであげた。


「ママ、これお土産。後で見てね」


 食卓テーブルの上にお土産を積んでおいた。クッキーとかシロップとかが小山を作っている。ブサーモンの箱も一緒に置いておいた。


 夕食の時間には父親は帰ってこなかった。いつものことだ。お風呂を済ませて待っていようかな。

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