#7 規格外
第2探索者検査室。
――それが、瑠依が鋼侍を案内した部屋の名前だ。
それなりに広い検査室の中には、様々な計測機器が棚にぎっしりと詰め込まれていた。
室内でひと際目立つのは、コの字を下に伏せたような縦長のゲートだ。
空港で見られるゲート型金属探知機によく似ており、高さは2メートルほどもある。
このゲート型の機械こそが、最新の探索者資質検査機である。
「――浅見君、お待たせ」
「はい。準備はできてますよ」
浅見という管理局の職員は、鋼侍の検査に備えて瑠依の指示に従い、室内で待機していた。
「じゃあ破瀬君、そこのゲートをくぐってくれる?」
「はい」
鋼侍は、瑠依に言われるがままに検査機であるゲートの中を通り抜ける。
その直後、――ゲート上部にグリーンのランプが点灯した。
……それは、計測の成功を意味していた。
「結果が出るまで、少し外で待ってて」
瑠依にそう言われたので、鋼侍は検査室前のソファで座って待つことにした。
†
瑠依が検査室から出て来たのは、数分後のことだった。
「――どうだったんですか?」
立ち上がった鋼侍がたずねると、瑠依の表情に苦笑いが浮かんだ。
「…………それが、機器の調子が悪くて上手く測定できなかったみたい」
それを聞いた鋼侍は、ガクッと体勢をくずした。
「……もう1回、測り直します?」
鋼侍のその問いに対し、瑠依は首を横に振る。
「ううん、今日はもう大丈夫よ。――ごめんね。せっかく付き合ってもらったのに」
「いえいえ。……じゃあ、俺はもう帰ってもいいですかね?」
「うん。今日はありがとう!」
瑠依はその場で、施設の出口へ向かう鋼侍を見送った。
角を曲がった鋼侍の姿が見えなくなった瞬間、――瑠依はくるりと反転し、再び検査室の中に戻った。
†
「――浅見君。さっきの測定結果、もう1回見せてくれる?」
「は、はい……」
再び第2探索者検査室の中に戻った瑠依の要求に応じ、部下の浅見は検査機と接続されたPCを操作する。
……その手は、小刻みにふるえていた。
先ほど鋼侍の探索者資質を計測したデータが、モニターに大きく映し出される。
――そこには、異常しかなかった。
「……す、全ての計測値が、振り切れています。……たくさんの探索者の検査をしてきましたが、こんなことは初めてです。し、信じられませんが、これは――――」
「浅見君」
瑠依は片手を上げて、浅見の言葉をさえぎった。
「この件は私が預かります。この測定結果は破棄しておいてください」
「えっ! そ、そんなっ……」
浅見はショックを受けた。
……が、上司である瑠依の命令には従わざるを得なかった。
「私から局長と相談して対応を考えます。――それに、いま彼が現場から抜けたら、東京都内の配信インフラの保守が追いつかなくなるわ……」
「きょ、局長案件ですか……。そこまで……」
動揺を隠せない浅見に対し、瑠依は断言する。
「ええ。それだけの問題よ、これは――」
瑠依はその先の言葉を言うのをためらった。
しかし、ここだけの話として、震える声で告げる。
「――彼の力は、おそらくS級を凌駕している。……日本で初めてのX級――eXtra級の探索者の可能性がある」




