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ダンジョン配信課の裏方エンジニアが実は最強だった件 〜配信で規格外の実力がバレたので、探索者になってS級美女ヒロインとダンジョンで無双する〜  作者: 卯月 幾哉
3章 龍門の滝登り

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#47 鬼哭峠ダンジョン③X級ボス戦【鋼侍視点】

 鬼哭(きこく)(とうげ)ダンジョン、地下10階層。

 俺――破瀬(はせ)鋼侍(こうじ)は、叶純(かすみ)と共にこの階層に降り立っていた。


 ここに来る直前、地下8階層で破壊されていたネットワーク機器の交換を行った。その結果、ここ地下10階層までの配信インフラは復旧していた。


 世音(ぜおん)さんのDフォンは壊れてしまったのだろう。信号をキャッチすることはできなかった。

 じゃあ、手がかりは何もなかったのか――というと、そんなことはない。


『――いました! 地下10階の非常用シェルターです!』


 世音さんの姿を無数のカメラ映像の中から見つけ出したのは、ギルド『無明六文衆むみょうろくもんしゅう』でダンジョン・オペレーターを務める四方津(よもつ)見晴(みはる)さん。世音さんの奥さんだ。


『ゼオンを、夫を助けてやってください! お願いします!』


 見晴さんは、叶純と俺に対して切実な声で(うった)えた。――きっと、不安でいっぱいだろうな……


「全力を尽くします!」


 俺はそう(こた)えた。

 「任せてくれ」と言えないのは情けないが、敵モンスターはあの『無明六文衆』のベストメンバーに、たった1体で壊滅的な被害を与えたという。……(やす)()け合いするところじゃないよな。


 幸村さんやダン対の隊員たちとは、地下9階層への階段で別れた。だから、10階に降りたのは俺と叶純だけだ。

 また、この前の「ダンジョンブレイク」のときみたいに、関係者向けの限定配信も行っている。さすがに今回は、一々コメントを拾っている余裕はないかもな……


 10階に降りた瞬間のことだ。


 ――うなじの毛が、ぞわりと逆立ったような気がした。


 この敵は、ヤバい。


 S級モンスターやあの「アトラス」を(ふく)めて、今まで戦ったことのあるどんなモンスターと比べても段違いだ。


 ふと隣を見ると、叶純(かすみ)の顔色が蒼白になっていた。


「叶純……? 大丈夫か……?」

「あ、ああ……」


 叶純もあの敵のヤバさを感じ取ったのだろう。

 いつもより足取りが重そうだった。


 すると、叶純は自ら両手で頬を叩いた。気合を入れ直したんだな。


「――ごめん、もう大丈夫。さあ、行こう」


 その後の叶純の振る舞いは、すっかりいつも通りだった。

 ……さすがは叶純だな。


 それから間もなく、俺たちはシェルターの前で3メートル級の阿修羅(あしゅら)像のような怪人モンスターを見つけた。

 そいつは世音さんの『竜殺し』だったと思われる折れた大剣を2本の手で持ち、今にも手負いの世音さんに攻撃しようとしていた。


 ――ので、とりあえず殴り飛ばしておいた。

 強敵には違いないが、攻撃は通るようで安心した。


 ……なぜだろう? 槍を構えた世音さんが、あきれた顔で俺を見ているような……?


 ――が、ボサッとしている場合じゃない。


「叶純、世音さんの手当を!」

「わかった!」


 世音さんは右腕が動かないようだった。

 さっき拾ったS級ポーションが役に立つといいんだけど。


 ……ああ。ポーションっていうのは、モンスターからのドロップアイテムの一種だよ。飲んだりかけたりして使う、不思議な回復薬だ。ゲームみたいだろ?

 ダンジョンの外に持ち出すと消滅しちゃうから、(いま)だにあまり研究が進んでいないらしい。ダンジョン七不思議の1つだな。


 ――さて、俺が殴り飛ばしたモンスターの異常(イレギュラー)個体。仮に〝アシュラ〟と呼ぶことにするか。

 まだアシュラはピンピンしている。俺たち探索者には、ある程度感覚でモンスターの様子がわかる。


 アシュラを叶純や世音さんに近づけるのは、マズい気がする。

 ……2人には失礼かもしれないが、メチャクチャ悪い予感がする。


 実際、ギルド『無明六文衆むみょうろくもんしゅう』に属するA級探索者の1人が一瞬で殺されたと聞いている。……配信で見てた人は、ひょっとしたらスプラッタを目撃したんじゃないか?


 ――が、たぶん俺なら大丈夫だ。

 最新のS級魔鋼(まこう)製の装備もあるし、綺花(あやか)先生お(すみ)付きの無尽蔵のSP(スピリット・ポイント)があるからな。SPのバリアが破られることはないだろう。

 ってか、俺で打ち合えないようなら、撤退した方がいいと思う。……それができるのかはさておき。


「――2人とも聞いてください。あの〝アシュラ〟とは、俺が前衛で打ち合います」


 アシュラが飛んで行った方をにらみながら、叶純と世音さんに俺の考えを話した。


「……お前なら行けるかもな」

「確かに、鋼侍(こうじ)なら……――さっきは殴り飛ばしてたし」


 2人が意外とあっさり同意してくれたので、俺の考えは間違ってなさそうだ。


「2人には攻撃をお願いします。叶純の『断空』なら、きっとアイツにも通じるでしょう」

「わかった!」

「……無理はすんなよ」


 俺には、叶純のような攻撃スキルがない。

 探索者活動を再開してから練習はしてるんだが、出来たのはSPを鎧のようにまとうことぐらいだった。

 だが、前衛でタンクを務めるにはぴったりのスキルだとも言える。


 作戦は決まった。


《ご武運を祈ります……!》

《相手はX級モンスターよ! 気をつけて!》


 ふと、そんな配信視聴者のコメントが目についた。

 どうやら俺たちのダンジョン攻略の裏では、ダンジョン管理局が必死にアシュラの情報を調べているらしかった。


《お(にい)、そんなヤツ、やっつけちゃえ!》


 ……さららも応援してくれてるみたいだな。


 ちょうどそのとき、アシュラがひらりと空中を飛んで帰って来た。

 三面六臂(さんめんろっぴ)の怪人モンスターが、ずしりと地面に降り立つ。


 その顔は、真っ赤な憤怒(ふんぬ)形相(ぎょうそう)になっていた。


 ――へへっ。コイツ、怒ってやがるぜ。


 ガチリと両拳のガントレット『破天(はてん)』を打ち鳴らし、前に出る。


「――っしゃあ! 行くぞ、オラァ!」



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