#32 潜在能力◯級?【鋼侍視点】
引き続き、東京都北区のJ-EMS研究所にて。
あれから俺は、特任研究員である如月綺花さんの指示に従って様々な検査を受けた。
単純な身体測定や体力テストに始まり、血を採られたり、人工的に魔素を発生させた環境での活動テストまでやらされた。……世の中には、こんな施設まであるんだと知った。
「……なるほどなるほど。これは……それに、あれもそれも……――うん。異常だ、異常すぎる」
「………………」
目の前で「異常」を連呼する綺花さんを、俺は半眼でじぃっと見つめた。
……この人もだいぶ変わってると思うんだが……
「――君、ちょっと1週間ぐらいここで寝泊まりしてくれない? やりたい実験が次々に思い浮かんできたんだ」
「いやぁ、それはちょっと……」
「だ、駄目ですよ! 綺花さん」
とんでもないことを言い出す綺花さんに対し、俺とカスミが口々に苦言を述べた。
――ん? いま「実験」って言った? こわぁ……
「仕方ない。一旦それは諦めよう」
永久に諦めてくれ。
――コホン、と綺花さんが咳払いをした。
どうやら、ここからが本題らしい。
「君たちは探索者資質というものが何か、理解しているかな?」
俺はカスミと顔を見合わせ、首を横に振った。
改めてそう聞かれると、自分がその意味をよく知らないことに気づいた。
「魔素への適性――そう理解しています」
カスミが答えた。
……そういう指標だったのか。てっきり、潜在能力的なものを計測してるのかと思ってた。
綺花さんも正解だという風にうなずいていた。
「うん。ただし、『適性』という表現はあいまいだ。より厳密には『許容量』というべきだろう」
「キャパシティ……?」
俺が首をかしげると、綺花さんが解説してくれる。
「魔素をどれだけ体に蓄積できるか、という意味さ」
なるほど。
「探索者やモンスターは、体に宿した魔素をSP――スピリット・ポイントとして消費して戦う。S級の方がA級よりも、蓄えられる魔素の量が多いから有利というわけさ」
「はい」
カスミがうなずいた。
……へー、全然知らなかった。探索者の間では常識なのかな。
「ところが鋼侍君の場合、この『許容量』に上限がないようだ」
「「は……?」」
カスミと俺の声が重なった。
――それって、むちゃくちゃ有利なのでは……?
「……もしかして、それは〝X級〟ってことですか……?」
〝X級〟――S級より上の、幻や伝説と言われるようなランクのことだ。
いやいや、そんなまさか……
恐る恐るという雰囲気でたずねたカスミに対し、綺花さんははっきりとうなずく。
――マジかよ
「〝X級〟の定義に従えばそうなる。こと『許容量』という1点に関していえば、当代のどの探索者よりも上だろう」
「すごい……」
カスミが息を呑んだ。
無理もない。
計測結果に従えば、俺はダンジョン内でSPを使い放題ってことになる。だって、ダンジョンでは常に魔素が湧いてるからね。
……確かに、思い返してみれば、最近ダンジョンでSPが切れそうになったことないな。むしろ、ダンジョンから出ると体がだるいぐらいだ。
人と比べることなんてないからわからなかったが、ひょっとしてこれもおかしいのか……?
――とはいえ、今までの話はあくまで探索者〝資質〟に注目したものだということは補足しておこう。
たとえ資質があったとしても、ちゃんとランクに見合った実力を発揮しないとライセンスはもらえない、ってことは理解しておいてくれ。
それに、俺の特性も良いことばかりではないのかもしれない。
「鋼侍君の体質は、他の探索者とは違うのかもしれない。例えるなら、そう――〝電気回路〟と〝電池〟の違いか」
「「?」」
俺とカスミはそろって顔に疑問符を浮かべた。
「魔素、及びSPを電力に見立てたとしよう。他の探索者を効率の劣る充電式の〝電池〟とするならば、鋼侍君は超高効率で魔素をSPに変換する〝回路〟そのものという意味だよ」
「なるほど……」
カスミはその説明で納得したようだが、俺はなんとなくわかったような……というぐらいだ。
「こう考えれば、彼が地上でSPを発揮できないのも納得だ。〝回路〟には、電気を蓄える機能はないからね」
「……そういうことか」
まだ完全に話を理解できたわけではないが、最後の例えはよくわかった。
「ただし、全てはまだ仮説の段階だ。より詳しく調べるために……少し解剖でもして行くかい?」
「「しません!」」
俺とカスミの叫び声がシンクロした。
お読みいただき、ありがとうございます。
「面白かった」「次も読むよ」という方は、★評価を満タンにして頂けると、作者の執筆意欲も満タンになります!
本日(5/10)も3話更新します! お楽しみに☆




