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#31 J-EMSの特任研究員【鋼侍視点】

 10月31日、月曜日。

 ゼオンこと四方津(よもつ)世音(ぜおん)さんが、大阪に帰るのを見送った翌日のことだ。


 東京都北区にて。

 駅を出た俺――破瀬(はせ)鋼侍(こうじ)は、カスミと連れ立って目的地へと歩いていた。


「カスミは、J-EMS(ジェムス)に行ったことがあるんだっけ?」

「うん。U-17アンダーセブンティーン競技会の前が最初だったかな」


 J-EMS(ジェムス)――国立探索者メディカル&サイエンス・ラボというのが、その目的地の名前だ。

 その名の通り、探索者の研究をしている国立の専門機関だ。

 なんでも、高ランク探索者向けのメディカルサポートなんてのも行っているんだとか。


 3日前の金曜、団長の寧々(ねね)さんから指示を受けた俺は、J-EMSで検査を受けることになったのだ。

 ……単に検査を受けるだけにしては、妙に調整に時間が掛かってたような……。何か不都合でもあったのかな?


 俺は今回、J-EMSに行くのは初めてだ。

 一方のカスミは何度もJ-EMSに行ったことがあるようで、俺のためにわざわざ案内を買って出てくれた。ありがたい。


「いっときは探索者の研究に協力してたから、しょっちゅう(かよ)ってたよ。ひょっとしたら、鋼侍(こうじ)の担当も私が知ってる人かもしれないね」


 ……なるほど。さすがはトップ探索者だな。


 そんな会話をしつつ、およそ15分の道のりを歩いた。


「でっか……」


 たどり着いた住所にあったのは、大きな体育館がいくつもつながったような巨大な施設だった。


「――鋼侍(こうじ)、こっちだ」


 ……と思ったら、入り口の方は比較的小さなラボの方だった。



    †



「……やあ、いらっしゃい」


 ――身長、高っ……


 来館手続きを終えた俺たちの前に現れたのは、気だるげな雰囲気をまとった長身の美女だった。

 背丈は俺より若干低いが、寧々(ねね)さんよりは高そうだ。色白で線が細いので、余計に背が高く見える。


綺花(あやか)さん、お久しぶりです」

「ああ、カスミ……――そうか。2人は同じギルドだったね」

「はい」


 彼女の名前は如月(きさらぎ)綺花(あやか)

 ここJ-EMS(ジェムス)の特任研究員で、魔素(まそ)生態学という分野の博士号を持っているのだとか。

 イマイチすごさがわからんが、とにかくメチャクチャ頭が良いということだろう。


「くぁ……」


 自己紹介を終えたところで、綺花さんは眠そうに大あくびをした。……美人なのに、なんか残念感あるな……。


 ――かと思ったら、急にぐいっと俺に顔を寄せて来たっ!?


「うわっ!?」

「綺花さん!?」


 近いっ! 近いからっ!


「……ふーん……」


 俺の動揺などおかまいなしに、綺花さんは俺の顔を様々な角度から見つめていた。アーモンド形の両目をいっぱいに見開き、毛穴まで見通すんじゃないかという勢いだ。

 ……あ、なんかいいニオイしてきた……


「綺花さん。あの、鋼侍(こうじ)が困ってると思うんですが……」


 そう言ってカスミが俺の肩に手を掛けたタイミングで、綺花さんは1歩後退した。


「――ふむ。見た目は普通……いや、これといって特徴のない顔立ちだね」


 悪かったな。


「ここで話すのもなんだな。――ついてきたまえ」


 綺花さんはそう言ってさっと背を向けると、返事も聞かずに歩き出す。

 ……っとと。おそろしくマイペースな人だな。



 移動した先は、綺花さんの研究室だった。

 そこにはつい先日、ダンジョン管理局の本部で見たものと同じ最新鋭の探索者資質検査機が用意されていた。あの、空港の金属探知機のゲートみたいなやつだ。


 銀縁(ぎんぶち)眼鏡を掛けた綺花(あやか)さんが、俺に向かってゲートを示しながら言う。


「君の異常性については聞いている。……が、私はこの目で見たもの以外、信じる気はない。――というわけで、早速検査を受けてもらおうじゃないか」


 そんなわけで、俺は指示された通りにそのゲートをくぐり抜けた。

 ……そういえば、あのときの検査結果って結局どうだったんだろう?



 それから間もなくして――


「な、なんじゃこりゃあぁぁっ!!」


 研究室内に、綺花さんの絶叫がこだました。


 えぇ……? そんなに…………?





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