#27 西の強者【鋼侍視点】
「いててて……」
「まだ痛むの? ごめんね、父さんがやりすぎちゃって」
カスミの親父さん――天王寺和馬さんとの衝撃的な対面があった翌日のこと。
俺――破瀬鋼侍は、カスミと2人で東京駅に来ていた。
……うう、まだ首が痛ぇ。ひどい目に遭ったなぁ……
それにしても、まさかカスミの親父さんがあの天王寺グループの代表だったなんて。めっちゃビビったなあ。
天王寺なんて名字そうそうないから、気になってはいたんだよね。
不慮の事故のせいとはいえ、しっかりと目をつけられてしまった気がする……。
もしクビになったら、契約金返さなきゃいけないのかな……。俺の夢の探索者生活が……
「――時間だ。そろそろ着くころだと思うよ」
「お、そうか」
カスミにそう言われ、俺は改札口の向こう側に目をこらす。
今日はカスミの知り合いの探索者が上京して来るということで、こうして出迎えに来たのだ。
一応、俺も名前だけは知ってる人で、ふだんは大阪で活動している探索者だ。
ちなみに、俺とカスミは一般人に身バレしないように変装している。
俺はニット帽と伊達メガネだが、カスミは金髪のウィッグにカラーコンタクトまで着けている。
――ぶっちゃけ、外国人かハーフのモデルにしか見えない。
……ってか、めっちゃ目立ってるんですけどぉ……。……通りすがる男どもが殺意の込もった目で俺をにらみつけ、舌打ちして去って行く……
――たぶん、向こうも変装して来るのかな?
まあ、カスミに任せておけば大丈夫だろう。
「……あ、来た来た。世音さん!」
そのとき、サングラスを掛けた男性がスーツケースを引いて改札を通ろうとしていた。
カスミが手を振ると、彼が俺たちの方を見る。
でかい。
カスミの親父さんもデカかったが、それより更に長身だ。俺より10cmは高いだろうか?
しかも、バリバリのアスリート体型だ。
……争ったら絶対勝てそうにないな。大人しくしておこう。
そう思って見ていると、ふっと彼の姿が視界から消えた。
「――てめぇが噂の新人か。……防いでみろ」
その声は、すぐ耳元で聴こえた。
次の瞬間、ガツンッと後頭部に激しい衝撃を受け、俺の意識は暗転した。
「……世音さん! ちょっと待って……!」
意識を失う直前、カスミのそんな声が聞こえた気がする。
……もうちょっと早く、止めてほしかったなぁ……
†
――俺が意識を取り戻したのは、今では見慣れてきた『スター・ウィッシュ』のギルド本拠地だった。
休憩室のベッドで身を起こすと、すぐそばでさっきの大男――四方津世音さんが椅子に腰掛けていた。
「いやぁ、悪ぃ悪ぃ。兄ちゃんが特異体質だったとは知らなくてよぉ」
ついさっきの凄みのある雰囲気とは一変して、人好きのする明るい笑みを浮かべながら、世音さんは俺に頭を下げた。
それはそれでどうなんだ――という思いはありつつも、俺はすっかり毒気を抜かれてしまった。
「……まあ、それならしょうがないッスかねぇ」
「おう! そう言ってもらえると助かるぜ!」
それから俺は、ベッドから立ち上がって世音さんと握手を交わした。
「四方津世音だ。世音でいいぜ」
「破瀬鋼侍です。破瀬でも、鋼侍でも構いません」
これが、国内最強のS級探索者「ゼオン」と俺との出会いだった。




