#24 ダンジョン・オペレーター(後編)【さらら視点】
『さ、さらら……?』
「そ。私がオペレーター。……驚いた?」
サプライズが成功して、私――破瀬さららはにんまりと笑っていた。
ここはギルド本拠地内に設けられたオペレーター室だ。
私の目の前には何枚ものモニターが並んでいる。
その内の1枚には、お兄のライブ配信の模様を全画面で映している。
《サ・サララ、とは……?》
《早く攻略始めろよー》
ああ、いけない。
サプライズが上手く行きすぎた。
私は共同配信者として、マイクの音声をオンにする。
「ちょっと、お兄! なにボーっとしてるの! 早く依頼を終わらせないと、晩ご飯遅くなっちゃうでしょ!」
『――ハッ、確かに!』
よし、お兄が再起動した!
配信の視聴者たちは、前置きもなしに発声した私に驚いていた。
《えっ! 今のオペレーターの声!?》
《おニイ? おニイちゃんってこと!?》
《ハセコーのオペレーターは妹だった?》
《会話1往復だけで兄妹の上下関係がわかって草》
幸い、反応は悪くなさそうだ。
改めて、視聴者にあいさつをしておこう。
「みなさん、突然失礼しました。探索者『ハセコー』の妹のさららです」
……「ハセコー」っていうの、やっぱ恥ずかしいな。
もう、なんでこんな探索者名にしたのよ!
《やっぱり妹なんだ》
《声が若いな。ハセコーも若いし、その妹ってことは……》
《JK? ――もしかして、JCですか!?》
《……中学生はさすがに無理やろ》
うんうん。まあ、そういう反応になるよね。
「ふだんは高校に通っています。今回、アルバイトとしてオペレーターを務めることになりました」
《JKだった》
《クッソ、なんだよハセコー。JKの妹までいるのかよ》
《ってか発声いいね。アナウンサーみたい》
《いっぱい練習したんやろなあ……》
そんなコメントを見つけて、胸が温かくなった。
そうなんだ。
この数日間、ダンジョンの勉強だけじゃなく、オペレーターとしてきれいな声を素早く正確に届けるための特訓を徹底的に行なった。
まだまだ付け焼き刃だと思うけど、少しでも努力が実ったのなら嬉しい。
高輪ダンジョンの探索は順調に進んだ。
「……あ、お兄。ちょっとそこ右曲がって」
『ん? そうすると、遠回りじゃね?』
「いや……モンスターがけっこう湧いてるみたいだから、ついでに間引きも済ませちゃおう。お兄は強いんだから」
モンスターの間引きは、できるときにやっておくべきだ。
それによってダンジョンの魔素総量を減らし、「ダンジョンブレイク」のリスクを下げることができる。
『――おっしゃ! それなら任せとけ!』
お兄が勢いよく返事をした。
《妹ちゃんの手の平ころころやな〜》
《「強いんだから」で、明らかにやる気スイッチ入ったよね》
《兄妹配信おもろい》
私はもともと探索中はマイクを切っておくつもりだった。が、視聴者からの要望を受けてオンにしておくことを決めた。
……まあ、お兄に任せっきりにしておくよりはいいよね?
「――え、ウソ?」
『どうした、さらら!?』
あ、しまった。
「ごめん。同接が100万超えてたから、ビックリしただけ」
ガクッと、カメラの向こうのお兄が肩を落とす。
同接――同時接続数は、リアルタイムの視聴者数を表す配信用語だ。
元からお兄は注目株だったけど、前の叶純さんとのダンジョン配信でも、100万には達していなかった。
《お兄ちゃん、あせりすぎw》
《ふむ……。妹を想う兄に悪いやつはいない。我はハセコーを認めよう》
《……ラオウみたいな視聴者おる?》
そんなコメントをよそに、お兄が思い出したかのように話し始める。
『しっかし、100万超えたのかー。そっかー。さららの力はすごいなー』
「…………」
……あの、100万人の視聴者の前でそんなこと言われるの、すごく恥ずかしいんですけど。
《シスコン》
《シスコンだ》
《シスコーン、しばらく食ってねぇな》
視聴者たちは「シスコン」の大合唱だ。穴があったら入りたい……
「……お兄、今日晩ご飯抜きね」
『なんでっ!?』
――なお、この後のダンジョン探索と依頼は、特に問題なく終わった。
お読みいただき、ありがとうございます。
面白かった分だけ★の評価を頂けると、本作のランキング順位が上がり、作者のモチベーションがブーストされます!
※★評価は目次ページからも可能です。




