第88話 冒険者と0歳児
聖イルミナス教会領地内にある、新しく出現したダンジョン。
そこの近くにできた、臨時の支援拠点。
たくさんの食べ物を売る屋台や、武器を売ったり素材を買い取る商人が立ち並んでいる。
中には冒険者ギルドといった機関の支店もあるそうな。
「聖イルミナス教会聖子、イルミナス様。ご無沙汰しております。『果てのない旅路』、リーダーのパトルスと申します」
そこで落ち合ったのは、『果てのない旅路』と呼ばれる冒険者パーティだった。
リーダーと思われる男性――兜以外全身を金属の鎧で身を包んだ戦士風の男が声をかけてきた。
「どもども! 聖子様、私のこと覚えてる~? アレイザよぉ!」
「もちろん、あなたと過ごした熱い日々は忘れられません」
「やん♡ 私も忘れられなかったのぉ~!」
嘘である。
全く覚えていない。
それと僕を抱えるロロップの腕の力が増している。
しかしこのいかにも魔法使いという見た目をしたアレイザという女性、確かに見たことがあるような。
「ケッ! あんときゃ終始澄まし顔の上に『ママのおっぱいが恋しいから帰る』って言って帰ったくせによ!」
「あ? お前旦那様に対して喧嘩売ってんのか?」
「や、やめろロロップ……」
3人目。
腰の左右に二振りの短い剣を刺し、身軽そうな恰好をした男性だ。
彼の挑発を買おうとするロロップを制止しつつも、何かが引っかかるその言葉。
何だろう、言った記憶がある。
こう……もう少しで思い出せそうなんだけど。
「お久しぶりでございます、聖子様」
「あなたは確か…………ヴァスティーユさん! お元気そうでなによりです」
「ええ、主とあなた様のご慈悲のおかげです」
思い出した。
この人たち1番最初の遠征を共にしてくれた冒険者さんたちだ。
この筋肉モリモリのヴァスティーユさんが足を潰され、それを治したことも思い出した。
「現在彼は聖騎士団にてご奉公いただいております。冒険者の経験があると言うことで、今回のダンジョン探索にご同行いただくことに。元パーティメンバーである『果てのない旅路』様との連絡を取ってくださったのも彼なのです」
「なんと!」
あの後本当に騎士団に加入したのか。
確かにそんな話をしていたけども。
「そうなのですね。そうとは知らずお恥ずかしい。主とあなたのご慈悲に感謝を」
「いえいえ、私などまだまだ見習いの立場。聖子様にお知らせする訳にもいきますまい!」
「そうでしょうか。少なくとも僕は、僕を追ってきてくれた人の近況は知りたいです。これからはご気軽にお声掛けください」
「イクラウス様……!」
本当に、実にありがたいことだ。
こうして慕ってきてくれる人は。
「何だかあの頃より逞しくなっちゃったね……お姉さん、何だか寂しいわ~!」
「そんな、僕にはまだまだあなたが必要です」
「んま! そんなこと言っちゃってぇ~、聖子様専属魔法使いになっちゃおっかなぁ~!」
このお姉さんは、魔法使いの方だったはず。
手に持っている大きな杖がその証。
しかし腰に剣も携え、軽装とはいえ革の胸当てなどの装備をしているところを見ると、魔法だけではなさそうだ。
「聖子様、どうかこれ以上パーティメンバーの引き抜きはご遠慮ください」
「そうだぜ! ヴァスティーユが抜けてからこっちは大変だったんだからよぉ!」
「それは……すまない、スティングル。迷惑をかけた」
「……別にぃ、嘘に決まってんだろ!」
「いや、本当に……しかし今回は引き受けてありがとう」
「そりゃあ……お前の頼みだ。引き受けるさ」
スティングルはどうやらツンデレ要素があるらしい。
興味ないが。
彼らも久しぶりの再会らしいので、会話が弾んでいる。
「ほらほらぁ! お子ちゃまが暇そうにしてるよっ! 話は向かいながらでもできるでしょ!」
「む……そうか。それもそうだな。では聖子様、行きましょうか」
「はい。『果てのない旅路』様、どうぞよろしくお願いいたします」
どうやら彼らはダンジョン探索も慣れているようで、気負いは感じられない。
高ランクの冒険者だったと記憶しているがその記憶は正しそうだ。
「……ところでね、怒らないで聞いてほしいんだけど……」
「はい?」
「聖子様を抱えているウサギのお姉さん……さっきからすっごく睨んでて……こわいなーなんつって!」
「……すみません」
その高ランク冒険者をビビらせるウサギ、ロロップ。
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