第68話 気を失う0歳児
グランデシャイン国まで馬車で片道3日ほど。
今回は聖子によるグランデシャインへの正式な表敬訪問という形らしいので、大勢での移動だ。
僕らの馬車にはロロップ、グラシェルノとゴレイヌが乗っている。
そんな道中の馬車でもグラシェルノとの会話が続く。
「なるほど、“遺物”と魔道具の差は用いられている魔石の質ではないかと、そういうことですね?」」
「え、ええ……さすがに遺物を……分解する許可が下りなかったので……多分、ですが……」
「スー……スー……」
しかし彼の様子がおかしい。
先ほどからチラチラと僕の背後を見ている。
どうやら僕を膝に乗せたうさぎさんのことが気になるらしい。
「どうしました?」
「あ、いえ……」
しどろもどろになり、視線をキョロつかせるグラシェルノ。
見るからに女性への接点はなさそうだし、お子ちゃまにはロロップは刺激が強すぎたか。
しかしロロップが僕のことを離さないから仕方がないのだ。
「そ、そのぉ~……」
「…………」
「く、首輪……に、似合ってます、ね……」
「当然ぴょん。旦那様がくれた物ぴょん」
こいつ……!
せっかくグラシェルノが勇気を出したのに。そんな対応されたら女性不振間違いなしだ。
というか王族に対して不敬にもほどがある。
獣人の印象をよくするんじゃなかったのだろうか。
「うぅ……」
「すみません。おいロロップ、失礼だぞ!」
「スー……スー……」
だめだ。
「本当にすみません……首輪の効果が発揮できているか……気になったもので……」
「ああ、おかげさまでいい感じでしたよ。しかし、もう少し質のいい魔石を用意する必要があるようですね」
「そうなんですね。しかし聖なる魔石はイクラウス様にしか現状用意できない。となると……ふぅむ」
やはり研究のことになると饒舌になる。
ロロップの不敬のことなどなかったように思考に没頭するグラシェルノ。
意識を引き戻しても緊張させてしまうだろうし、ここは僕も静かにしていよう。
ちょうどやることができたようだし。
「…………」
「魔石の質とは言ったものの、見比べたことはない……」
「…………」
「しかし今のところはそれしか考えられない…………」
「…………」
「それに火属性が得意な者と不得意だった者の魔石の質は明らかに違い、結果も異なっていた……」
「…………」
「やはり魔石の質が効果に及ぼす影響は高いのだろう。やはり父上に頼み込んで……」
「…………」
「……いや、勝手にやっちゃうか……」
グラシェルノが物騒な結論を出したころ、辺りは既に日が沈んでいた。
たどり着いたのは小さな宿場。
護衛の騎士たちが既に宿の手配をしたりと走り回っている。
「グラシェルノさん、そろそろ行きましょう」
「――はっ!? すみません、少し考え事をしていました……ってそれは!?」
少しどころではない考え事の間に、僕が用意したのは10個ほどの『聖なる癒し』の籠った魔石。
しかしその金色の輝きは大きく分けて3種類に分けられる。
彼が言うように、質による差を意識した物だ。
「うわわわっ! す、すごい……」
「このかなり暗いのは、僕がゲオルディクスの顔を思い浮かべて作ったもの。こっちのそこそこの輝きのはいつも通り、そしてこの最も美しく光り輝く、まるで絶望を照らす希望の光のような魔石は――」
「…………(ゴクリ)」
ためを作り、仰々しくその3つの魔石を頭上に掲げる。
グラシェルノも緊張からか、生唾を飲み込んだようだ。
「史上最もかわいい母様、を模したレストリア、その縮小バージョンが作ってくれました!」
「…………」
僕の影からササっと登場した手の平サイズのミニレストリア。
彼女もどことなくドヤ顔している気がする。
デフォルメされたような見た目で、いつもの母様とは別の方向でかわいい。
ほっぺたがフニフニしている。
「これは……! 僕でもわかります、質が全く異なる! 本当に……見ているだけで癒されそうな……!」
「でしょう? レストリアは僕の中で最も偉大な存在を具現化した存在です。魔力の効果も最大です」
だが、彼女の姿が変わったように、さらに進化していく予定でもある。
僕はまだまだ子ども、成長途中なのだ。
「さ、早速試しましょう! こうしてはいられない! そうだ、例の陣を刻むための魔石もまだあったはずだ!」
「ふっふっふ、甘いですよ、第3王子!」
「な、なにぃぃっ!?」
「そちらの魔石も用意しております。単純な聖属性のみの魔石も! もちろん3種の質で!」
「これは……! そんなバカなぁ~!?」
反応が面白い。
しかし今日のところはおとなしく寝ないと怒られそうだ。
「グラシェルノさん、明日にしましょう」
「ええっ!? そ、そんな……」
「まだ旅は2日ちょっと続きます。明日のためにも、ね」
「……そう、ですね……そうします……」
残念そうにしながらも、おとなしく馬車を下りるグラシェルノ。
まあ、1つくらいなら後で試しても問題ないだろう。
「レストリア、ありがとね」
ほっぺをツンフニし、彼女に戻ってもらおうと思ったのだが、拒まれた。
どうしたのだろうか。
「レストリア……? へっ!?」
「…………♡」
キ、キス……!?
ほっぺだけど……!
レストリア……母様が……!?
「か、さま……」
その後僕が来ないことを不審に思ったゴレイヌが馬車を覗くと、まるで死んだように気絶した僕がいたらしい。
その間も、ロロップはずっと吸っていたらしい。
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