第66話 実験される0歳児
その夜。
僕はグラシェルノにも秘密の実験をするため、とある人物を呼び出した。
彼にも見せられない、見せたくない実験を行うために。
「ぴょん♡」
「来てもらってすまない」
「いいぴょん♡ 準備はできてるぴょん♡」
「ああ」
「ぴょん?」
ロロップが怪訝な顔をしている。
いつも否定するやり取りを否定しなかったからだろう。
「きょ、今日……本当に……?」
「……そうとも言うし、そうでないとも言う」
「ぴょん?」
「…………」
かわいく首をかしげるうさ耳少女。
その左右の髪には先日上げたリボン。大事にしてくれているみたいだ。
こんなかわいい女の子を、僕は利用しようとしている。
彼女の心を利用する。
母様、ロロップ、罪深き僕をお許しください。
「今日、僕はお前にひどいことをする」
「ぴょん♡ 痛いことしてくれるぴょん?♡」
「え?」
彼女は何を言っているのだろう。
痛いことをされてことがあって、それで快感を得ていたとでも言うのだろうか。
「騎士の訓練で、叩かれたり転んだり、痛くて嫌だなぁってことがあったんだけど……ぴょん」
「…………」
「もしもこれが旦那様にやられたらって思ったら♡ すっごく嬉しくなったぴょん♡」
「…………」
ロロップはドMらしい。
しかし僕が言ったのは、そういうひどいことではない。
だがひどいということには変わりないので、否定しない。
「……ああ、ロロップ。僕の大事なロロップ。お前は誰にも渡さない」
「はわぁ~……♡ 旦那様♡ もーがまんできないっ♡♡♡」
「『聖なる癒し』!」
僕を押し倒そうとするロロップに向かって、聖なる回復――状態の異常にも効果を発揮する魔法を唱える。
「――ぴょん?」
「落ち着いた?」
「は、はい……ごめんなさい、待ちきれずに……」
どうやら成功のようだ。
聖魔法は、獣人の発情を抑制できる。
これこそが、グラシェルノに『獣人の救世主にならないか』と言った真意。
この効果を持つ魔道具を量産できれば、苦しむ彼らを救うことができるはずだ。
そのための実験なのだが、彼にロロップのこんな姿を見せたくなかったのだ。
「実はな――」
ロロップにもこのことを説明する。
ある意味で、聖女を死霊術で呼び出した時よりも怖い。
嫌われてしまうのでは……いや、当然なのだが。
「ぴょん、そっかぁ~……」
「すまない、お前の想いを利用した」
「ううん、旦那様が私たち獣人のことを思ってくれてるのはわかったし……それに……」
「それに……?」
「私のこと、信じてるから実験したんでしょ? ぴょん♡」
その通りではある。
なにより、彼女を1番解放したいという思いがあった。
獣人を苦しめる、呪いのようなものから。
「……うん」
「じゃあいいぴょん♡ ちゃんと2年後まで待つぴょん♡」
「ロロップ……」
そんな彼女に、とある物を渡す。
それはブレスレット。黒い革の生地に、1つの大きめの金色の魔石、そこを中心に4つの小さい透明な魔石をくっつけた急ごしらえの腕輪だ。
「不格好だけど、急いで作ってみたんだ。これさえあればロロップを、望まない衝動から守れるはず」
「旦那様……♡」
ロロップの腕を取ってつけようと思ったところ、腕を引っ込められた。
「こっち……♡」
「く、首……? それは――」
「何だか、こっちの方が“旦那様の物”って気がするぴょん♡」
「…………わかった」
嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ち、そして申し訳なさから言う通りにする。
母様、僕は今確実に大人の階段を2段飛ばしで登っています。
背徳感でいっぱいです。
「ぴょん♡」
「う、動くな……キスしようとするな…………よし、付けられたぞ」
「……ぴょん」
首輪――チョーカーとなってしまったブレスレットに触れた瞬間、ロロップに変化が訪れた。
「ふわぁ~~~……♡♡♡」
「どうだ、苦しく――ロロップ?」
「旦那様ぁ♡♡♡」
「ちょっ!? ロロッ――」
「ちゅう♡♡♡ ちゅう♡♡♡ ちゅう♡♡♡」
この実験で分かったことは。
抑えるにも許容範囲があること。
どっちがどっちのものかわからないこと。
獣人の本気に人類は勝てないだろうということ。
貞操は守れたが、何かを失った気がする。
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