第65話 実験する0歳児
ゴレイヌを連れて“聖癒の間”に戻る。
どうやらグラシェルノの作業も同時に終わったらしい。
「イクラウス様、一体……おや、グラシェルノ王子殿下では」
「ど、どうも……です……」
グラシェルノが人見知りを発揮する。
こればかりは時間がかかるだろう。
まあそれはいい。
「ゴレイヌ、どこかけがをしてはいないか? 小さなものでもいい」
「はい? ああ、そういえば今日の訓練で肘を切ってしまいましたな」
「よかった」
「はあ……?」
ゴレイヌを切りつけずに済みそうだ。
「グラシェルノさん、どすすればいいですか?」
「は、はい……では……こ、この魔法陣の中心に……その、けがしたところを……」
「ゴレイヌ、頼む」
「? はい」
疑問符を浮かべながらも、言われた通りにしてくれるゴレイヌ。
「わかりましたぞイクラウス様、また悪戯を考えているのですな! 本当に、まだまだ子ども――おや?」
「僕は悪戯などしたことないだろう、まったく……うむ、いい感じではないか!」
「はい! しっかり魔法が発動したことを確認しました! これは……これはすごいことになるぞ……」
ゴレイヌの小さい切傷がみるみる塞がるの確認した。
実験は成功。
つまり、聖魔法も魔道具化できるということだ。
夢が広がるではないか。
「これがあれば……戦いで傷ついてもすぐに治せる……遠方の人でもイクラウス様の恩恵にあずかれる……」
「その通り! 他にも対アンデッドの武器やお守り、高位の呪い対策とかも! さらには武器に付与すれば――」
そのとき、かつてグラウゼルが言った言葉が脳裏を過った。
『勇者しか扱うことのできない剣、聖剣。もしかしたらそのお株を奪う可能性も――』
グラシェルノも同じことを思ったようで、思わず2人見つめあう。
「聖剣……」
「聖剣……」
やはり、彼も同じことを思ったようだ。
本物を見たことはないが、聖なる魔力が宿った剣を聖剣と言うのなら、それが作れるのではないかと。
言ってみればインスタント聖剣。
「お二方」
「何だゴレイヌ、今忙しい――」
「いいえ、心してお聞きください。それは絶対に外部に漏らしてはいけません。絶対にです」
普段滅多なことで怒らないゴレイヌが、強い口調で注意する。
怒っているわけではなさそうだが、その目は真剣そのものだ。
「それで出来上がるのが聖剣かは私にもわかりません。しかし、仮に聖剣を作れると言った場合、多くの勢力が敵となり得る。それこそ、勇者を筆頭に」
「…………」
「少々お待ちください。このゴレイヌ、聖剣について調べてみます。少なくともそれまでは、どうぞご内密にお願いします」
「……わかった」
隣を見ると、グラシェルノも涙目でコクコクと頷いている。
彼の性格からして、誰かに言いふらすこともなさそうだ。
しかし、甘いなゴレイヌよ。
例え勇者が束になってもビクともしない後ろ盾。それを得るためにグランデシャイン王女との婚約を受け入れたといっても過言ではないのだ。
勇者など、主と大国の名の元に滅するのみよ。
とはいえ、ここは従順な子どもを演じよう。
「ゴレイヌよ、感謝する。また世話をかけるな」
「……ですな! この前のことと言い、イクラウス様には手を焼かされてばかり!」
「むぅ……」
「しかしそれもまた楽しいと思う次第で。イクラウス様、どうぞこのゴレイヌ、心行くままにお使いくださいませ」
「……うむ、頼りにしている」
そして退出するゴレイヌを見送る。
先日、他のことでも迷惑かけたばかりだし何か報いたいのだが――。
「……いいなぁ……」
「……さて、グラシェルノさん。他にも試したいことがあるのでお付き合いいただいても?」
「え? あ、はい……でもいいんですか? 今注意されたばかりで……」
「そうですね、だからここから先は……2人だけの秘密ってことで!」
「……はい!」
そこから夜が更けるまで、ああでもないこうでも言いながら魔道具の構想や実験を繰り広げたのだった。
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