第63話 第3王子と0歳児
グランデシャイン3番目の王子。
そう名乗る男を連れて“聖癒の間”へと移動する。
確か3番目といえば……誰だったっけ。
「アステラのお兄さん?」
「うん……はい……」
そういうことか。
どういうことだ?
詳しい事情を聞くため、彼が落ち着くのを待った。
「……ぐずっ。ご、ごめんね……」
「いえ、えーっと……とりあえず初めまして、会えて嬉しいです。しかしアステラのお兄さんがどうしてここに……?」
「うん、実はね……」
ゆっくりと話し始めた彼の話をまとめると、こうなった。
妹が国に戻り病気の完治を知った、その感謝を僕に伝えたい。しかしなかなか勇気が出ず時間がかかってしまった。
なぜ護衛も引き連れずに来たかと言うと、何回も何十回も『行く、行けない』を繰り返した結果誰も相手にしてくれなくなったとか。
不憫。そして今頃グランデシャインでは大騒ぎだろう。
「それは……頑張って来てくれたんですね。ありがとうございます」
「いいや、感謝を伝えるのは僕の方だよ――です」
すこし打ち明けることが出来たようで、はにかむような彼の笑顔を見ることが出来た。
兄のような華やかさはないものの、やはり顔が整っている。隠れイケメンとか言われてそう。悔しい。
「僕らがどれだけ頑張ってもできなかったことを、君が叶えてくれた。本当に、妹をありがとう」
「グラウゼル――お兄さんから聞きましたよ。妹さんのために魔道具と呼ばれる物を開発したとか。あの冷蔵庫もあなたが作ったと」
ちょうど“聖癒の間”に置いてあった冷蔵庫を示す。
あれのおかげで僕は毎朝冷たいミルクを飲むことができ、『聖子印の聖子』の保管もできている。
「ああ……お恥ずかしい。妹のために何かできないかと考えて……“遺物”を参考に作ったんです。僕にはそれくらいしかできなくて……」
それくらい?
その偉大さに気が付いていないのか?
謙遜している……ようにも見えない。
だが、人には作れなかった“遺物”の模倣、魔道具を作り出したのがどれほどのことか。
僕は冷蔵庫のことしか知らないが、まだまだ他にもあるだろう。
「……他にもたくさん作られたのでしょう? どんなものかお聞きしても?」
「うん。本を読みやすいようにと思って、ランプに代わる物とか。薬を作りやすいように、火が出る小型の……なんて言ったかな? それと――」
冷蔵庫、小型電灯、コンロ、扇風機、ストーブ、他にもたくさん。
彼女に合う合わないはあったらしいが、その全てが妹のために。
どれほどの月日をかけたのだろうか。彼の苦労は計り知れない。
「――でも、それも全部ダメだった。僕には妹を治すことはできなかった。無駄な努力だったんだ……」
「いいえ……いいえ。あなたたちが多大な努力を捧げてくれた。命を繋げてくれたんだ。そのおかげで、僕はアステラを救うことが出来た」
無駄な努力なんて言わないで欲しい。
その目の下のクマを誇ってほしい。
「僕にはたまたま救う方法があっただけ。本当にすごいのは、あなたたちのような人だ。何もないところから必死になって努力できる人だ……本当にすごいよ」
「イクラウス様……ありがとう……」
◇◇◇◇◇◇
翌朝。
再び泣き出した彼がそのまま眠りにつき、目覚めたのは夕刻だった。
きっと疲れていたんだろう。
ここに来るまでも大変だっただろうし。聞けば城の外に出たのは十数年ぶりだったらしい。
「昨日は……すみません。お恥ずかしいところを……」
「いえいえ。ところで、この後はどうしますか?」
「……さあ……どうしようかなぁ……実はアステラの病気が治ってから……研究に身が入らなくって……」
シンプルに今日の予定というか行動を聞くつもりだったのだが。
どうやら彼の人生相談になりそうだ。
「ああ、燃え尽き症候群ってやつですね?」
「もえつき?」
「目的のために尽力していたこと、いざその目的を達成してしまうとやる気がでなくなるということです」
それまで命を捧げる覚悟でやってきたのだろう。
さもありなん。
「……まさにそうですね。困ったなぁ……」
「もしよろしければ、僕のお手伝いをしていただけませんか?」
「お手伝い?」
かねてより構想は薄っすらあった。
もし機会があればと手つかずにあった、とある構想。
もしかしたら、教会に怒られるかもしれない。
「……獣人の救世主になりませんか?」
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