第54話 原因は0歳児
翌日。
ゲオルディクスに呼び出され、彼の部屋――教皇の執務室に連れてこられる。
そこにはゴレイヌがいた。
ついでに言うと、僕はロロップに抱きかかえられている。
「よくぞおいでくださいました。さて早速本題ですが、本日は改めて、教会から坊ちゃんへのアンデッド討伐以来となります」
「ああ、昨日言っていたやつか。今日はこのメンバーで?」
「はい、ゴレイヌ他数名の聖騎士。そしてロロップさん。彼女も客員聖子護衛騎士という肩書が与えられることになりましたので」
「ほう。それはいいことだ。よかったな」
「ぴょん♡ 旦那様のために働くぴょん♡ 旦那様のお仕事が無くなっても、私が支えるぴょん♡」
何その売れないホストは私が支えなきゃ的な。
しかし学校はいいのだろうか。
彼女もマリンたちと一緒に通っていたはずだが。
「学校はいいのか?」
「ぴょん♡ 神官さんたちと訓練してる方が楽しいぴょん♡」
「そうか」
まあ向き不向きがあるし、本人が嫌なら無理に通わせる必要もない。
あくまで選択の1つとして提示しただけだ。
「少し前から、女性騎士の訓練に参加していたそうですよ。勝手に」
「不審者じゃないか」
「はい。しかし最初は警戒していた騎士たちも、彼女の一生懸命さに心打たれて……私に入団を訴えてくるまでになっていました」
「ぴょん!」
なんだそのドラマ。
僕の知らないところで何が起こっていたんだ。
しかし……うん。当初の目標達成に向けて着々と進んでいるようだ。
「ロロップ、僕も誇らしいよ」
「え? 愛してる?」
「…………誇らしいよ」
「え? 私が必要?」
「…………必要、だ」
「ぴょん♡ ぴょん♡ スー……スー……」
「……吸うな」
大丈夫だろうか。
ダメな気がする。
しかしゲオルディクスもゴレイヌも、明後日の方を向いている。
「では……行きましょうか」
ゴレイヌが重々しい様子で、出発を告げた。
◇◇◇◇◇◇
久しぶりの馬車。
今日は人数が少ないということもあり、僕とゴレイヌ、ロロップが馬車に乗り、その周りをそれぞれ馬に乗った騎士3名が同行している。
「お外、ひさしぶりですね♡ ぴょん♡」
「そうだな」
表向きはそうだが、1週間くらい前にロロップと夜の散歩に出かけている。
僕にとっては割と最近ではある。
「ここから遠いのか?」
「いえ、馬車で1時間もかからない、近くの森だそうです」
「そうか。被害が出ていないといいが」
ちょうど僕らが行った場所もそのくらいの距離だと思われる。
とはいえ地図もないし、適当な場所だったからわからないが。
「ぴょん♡ あのお店、見覚えがあるぴょん♡」
「ん? ああ、あれはミルク屋だな」
ミルク屋。
店頭での販売の他に、朝早く近隣の民家や店に配達を行っているらしい。
そのため、配達準備は夜遅くから始めている。
というのを前回の散歩の時に気になったので、調べて知ったのだ。
「…………」
「あっ! あの街灯、覚えてるぴょん♡」
「……あれは……」
折れていた街灯。
前回の散歩のとき、折れていたのを見かけたので匿名で領主に知らせたもの。
早速の修繕でありがたいが……嫌な予感がしてきた。
「あっ、この森……」
「仰る通り、この森です。イクラウス様、ロロップ殿」
「…………」
そう、この森。
僕とロロップが訪れた、森。
ロロップに抱きかかえられ下りたそこは、やはり先日ロロップに抱えられて来た森。
「へへへへ、へぇ~……初めて来た、なぁ」
「このま――はむっ♡」
余計なことを言う口を塞ごうとしたら、はむっと咥えられた。
塞げたから良しとしよう。
「お気を付けを。既にここは敵の領域、魔物がそこかしこにいるやもしれません」
「むー♡ むー♡」
「…………いらぬ世話でしたな」
そうだろうか。
子どもを抱えたままその手をはむはむしている護衛に対し、本当にいらぬ世話なのだろうか。
「むー、むーむー♡」
「……敵がいたらわかる、だってさ」
「なるほど、さすが獣人のお方! 頼りになりますなぁ!」
1番手を放してほしい僕が、なぜ彼女のフォローをしているのだろうか。
そして何がさすがなのか。
他の護衛神官も周囲を警戒するふりをしながら、こちらを見ないようにしている。
頼れるのは自分だけだと理解する。
「目撃されたのはこの辺りだそうです」
「むー? むっ!」
十数分ほど森の中を歩き、たどり着いた場所。
少しだけ開けた場所にたどり着く。
おやおや、これはこれは。
こっそり魔法の訓練を行うのに適した場所ですねぇ……。
「……そこの木の影、どうやらいるようです……」
「むっ! 全員構えろ!」
「はっ!」
先ほどまでの緩んだ空気を吹き飛ばし、ゴレイヌともう1人が僕らの前に。2人が左右に移動する。
さすが訓練された騎士様、本当に申し訳ない。
「ギギ……?」
「いたぞ! 警戒しろ! 敵は神官の浄化を受け付けなかった正体不明のアンデッド! 高位モンスターと心得よ!」
「おう!」
あの、それ……。
「…………」
「む~……」
「ギッ! ギィッ!」
案外、円らな目でかわいいでしょ?
ほら、『ごしゅじんさまやっときたぁ~、まってたよぉ!』って言ってるみたい。
あはは、かわいいやつだねぇ~。
「……う、動きません、ね……」
「……報告によれば、攻撃を仕掛けるまではじっとしていたらしい。しかし油断するな!」
「はっ!」
わかってる、わかってるよ。
こいつ、間違いなく僕がアンデッドにしたやつだ。
あの時、試してみた死霊術が成功していたんだ。
ごめんね、今主の御許に案内するからね……。
「『聖女の――』」
「てめぇっ!」
「ギッ!?」
祈りを捧げるために手を組もうとしたところ。
目の前でゴブリン・ゾンビが爆散した。
ロロップが、思いっきり蹴り上げたんだ……。
「人の旦那様に色目使ってんじゃねえよこの雌豚が…………ぴょん♡」
誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!
★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!
明日も18時20分頃投稿します!
よろしくお願いします!




