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聖女から生まれました~母様に代わって聖魔法による慈悲と裁きを施しましょう。闇魔法?つ、使ってないよ?(洗脳魔法発動)~  作者: たゃんてゃん
第4章 病弱王女と望まぬ婚約

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第36話 自分を模する0歳児


 グラウゼルたちグランデシャインの人間だけでなく、ゲオルディクス始めこちらの人間が全員退出した後。

 部屋に残ったのは僕とアステラさん、そしてレストリアだけだった。


「アステラ様、返事は結構ですので思い浮かべてください」

「…………」

「治ったら、何をしますか?」

「それ、は――ゴホゴホッ」

「喋らないで、ゆっくり考えるのですよ。ゆ~っくり、ゆ~っくり……」

「…………」


 考え事をしているうちに眠った。

 そういうことになる。

 闇魔法のことは決して知られてはいけない。


「さて、まずは……細胞を注入して全身をスキャンしよう」


 『細胞解析(セル・スキャン)』を用いて体の内部を確認する。

 時間をかけて調べた結果、どうやら片方の肺と脾臓(ひぞう)それに腎臓も1つない。

 おそらく生まれた時から欠けていたのだろう。

 もしかしたら他にもないものがあるかもしれないが、この『解剖図』を信じるしかない。


「しかし、さすがに骨と違って内臓を作り出すのは初めてだ……」


 うまくいくのだろうか。

 形だけうまく作れたとして、拒絶反応というものがあると聞いたことがある。


「主よ母様よ、純朴な姫君にご慈悲を……」


 グラウゼルの顔がよぎる。

 不遜(ふそん)な態度とるこちらに対しても、ただただ妹のために頭を下げる男。

 そして、辛いだろうに周りを気遣うことのできる少女。


「なんとしても……」


 決意を新たに、彼女の内部と向き合う。

 肺は問題ないだろう。片方あるものを反転させてコピーすればいい。

 ない左側、そこに右側と同じものを……左側の肺があるであろう場所にある肉を押しのけて――。

 本当にそうだろうか。肺は左右対称……?

 そんなことはない、右手と左手が少し異なるように肺も同じわけがない、まず心臓のある右肺が――やはり解剖図を見て形だけでも――。


「…………」

「母様――んっ」


 内心で猛烈に慌てる僕の頭を、レストリアが優しくなでる。

 そしてその手を僕の胸元へと移動させ、同じように優しくなでる。


 母様、とてもえっちで魅惑的ですが今はそんな場合では――。


「あ、そうか」

「…………」


 一番身近にある体内の見本。

 それは自分自身のものじゃないか。


「『細胞解析(セル・スキャン)』、そして僕と同じものを彼女の中に形成する」


 果たしてそれはうまくいきそうで、肺だけでなく脾臓(ひぞう)や腎臓、それ以外のもののコピーが生成されていく。

 注入した細胞だけでは全く足りず、何度も追加。


「くっ……はぁはぁ……きっと、もう少し……」


 何度か気を失いかけるも、気合で乗り越える。

 自身のスキャンをしながらアステラの体内に同じものを作る。

 僕は人間でも悪魔でもなかった。ただのコピー機だ。


「できた……後は、回復魔法で――」


 最後の仕上げに、レストリアの魔法で回復させようとするが、そこで大変なことが起こる。


「作った内臓が……消えて行ってる!?」


 徐々にではあるが、元のアステラさんの器官と新しく作った内臓の結合部から徐々に細胞が消失していっている。


「これは……レストリア、ストップ!」

「…………」


 なぜだ。

 いや……よく考えれば当たり前か。

 アステラさんからしたら新しい内臓など異物も当然。『聖女の癒し』で異物を無くすのなんて当たり前だ。

 しかしどうすれば……。


「……」

「……ん?」


 何かを感じる。

 アステラさんの体内にある細胞、今は待機している細胞が何かを感じている。

 いや、何かを聞いている……! 何かが話しかけてきている!


「……そうか、アステラさん本人の……」


 きっとアステラさん本人の細胞だ。


 彼女を構成する細胞1つ1つが(ささや)いてくる。

 『形が違う』『成分が――』『大きさも――』。

 そんな声が聞こえてくる。すべては『善くなりたい』、その一心で。


「…………」


 あとは、声の導くままに……。




 ◇◇◇◇◇◇


 今すぐベッドに倒れこみたい、その欲求を押し殺しながら“聖癒(せいゆ)の間”の扉を開ける。


「……終わり、ました」

「――っ! せ、聖子様! 妹は……アステラは……!」


 声に出さず指をさす。

 もう限界……。


「お、兄さま……」

「アステラ! どうだ体調は! 苦しくないか!?」

「はい――ゴホゴホっ! ガホッゴホ……」

「なっ――」


 アステラさんが咳き込み、血を吐く。

 これはあれだ、気管支に血が――。


「貴様ぁぁぁっ!」

「や――き――う」


 グラウゼルが懐から取り出した小刀を僕に向ける。

 やめろ、今の血は気管支に残っていた血が出ただけだろう。


 しかし声は声にならず、僕はあっさりと――。


「安心しろ! 私もすぐにお前を追って――」

「やめ、て――」

「地獄に行ってやる!」

「やめて! お兄さまぁーーーっ!!!」


 しかし、グラウゼルの凶行を止めてくれたのは他ならぬアステラさんの大声だった。

 

誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!

★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!


明日も18時20分頃投稿します!

よろしくお願いします!

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