第35話 後悔する0歳児
「ふむ」
神官が持ってきた手紙、そこに書かれていたことを要約すると明日には到着するらしい。
先日のグランデシャインの王子とその妹さんが。
「お仕事ぴょん?」
「まあね」
先日交わした約束。
約束でもないか。他の人と同じように“聖癒”を受ける条件を教えただけだから。
こちらから出向くことは、その分急な“聖癒の待ち人”を受け入れられないということにもなる。
彼らだけ特別扱いする訳にはいかないということだ。
「しかし向こうが約束通りに来てくれたのだ、こちらもいつも通り全力を尽くそうじゃないか」
◇◇◇◇◇◇
そして約束の日。
“聖癒の間”にはたくさんの人が押し寄せていた。
椅子に座った妹さんらしき子、それにグラウゼルと前にもいた執事さん。
それに加えてメイドさんが何人か。扉の外では護衛の兵士もいるそうな。
「我が最愛にして最高の妹、アステラ・シャインだ」
「ゴホゴホッ、し、失礼、しました……アステラ――ゴホッ」
めちゃくちゃ体調悪そう。
顔色も悪い。
「だ、大丈夫ですか!? こんなにお辛そうに……!」
「ゴホゴホッ……聖子様のご慈悲に――ゴホゴホゴホゴホッ、ヒュー……ヒュー……」
誰だこんな子を外に連れ出して。
こんなに体調悪いなら医者を呼び出すべきだろうが。
そう思い、王子様――グラウゼルを睨みつける。
「……妹は……治るだろうか……頼む……」
「…………」
その顔を見たとき、僕は後悔した。
本当に、心配で……。
なりふり構ってられなくて……藁にも縋る思いで……だからあの時も……。
それを僕は……くだらない意地で……。
「母様に誓って、必ず治します。『聖女御座す安息の地』」
レストリアを呼び出し、治療をしてもらう。
彼らの様子から、もちろんこれで治るわけではないだろうが、一時でも安らいでほしい。
「――あ、あたたかい……ゴホゴホ……」
「はい。この世界で最も偉大でかわいらしく慈悲深い母様――聖女フルルーチェ様がモデルになった魔法です」
「まぁ! あのお優しい聖女様の……ゴホゴホッ」
そうか、この子も母様に会ったことがあるんだ。
ということは……母様も悔しい思いをしたのだろうな。
「グラウゼル様、妹様についてお聞きしても?」
「あ、ああ。この世界で最も愛らしく、そしてかわいい妹だが――」
「余計な言葉は不要。その分妹さんが辛いんだぞ」
なぜかわからないが、冷たく突き刺さるような視線をゲオルディクスから……いや、いろんな方面から浴びせられる。
不敬だ。
「――すまない。妹は生まれてから12年間、ずっと体調が悪く寝たきりの生活を送っている。少しでも動くと咳がひどく、高熱や意識を失うこともある」
12歳、か。とてもそうは見えない。てっきり同い年くらいかと思っていた。
王族として手厚い看病を受けているのだろう。シルバーの髪、顔立ちは兄と同じく整っており、清潔感を感じる。
しかし体は小さく、顔もほっそりしている。
筋肉などつけようがないのか、本当に細い――触るだけで折れてしまいそうだ。
「専属の治療師は? 何と仰っていました?」
「……わからない、と。呪いではと言われたことがある。光の回復魔法を用いても効果がなく、かつて聖女様に救いを求めたこともあったが……同じだった」
レストリアをみると、悲しげに顔を伏せている。
やはり母様も悔しい思いをしたんだ。
であれば、母様のためにも、この子のためにも絶対に治療を成功させる。
「妹様――アステラ様。必ず治すからね」
「聖子、様……ありがと、ございます……ゴホッ」
「こんなに苦しいのに……呼び出しちゃってごめん……」
思わず謝罪の言葉が零れてしまう。
「コホッ、いえ……初めてお外に出れて、楽しかっ――ゴホゴホッ! みんなにも、支えられ――」
「喋らないで……」
自分の迂闊な言葉のせいだが……。
アステラを落ち着かせるために、頭を撫でつつグラウゼルに顔を向ける。
「治療を行いますので、ご退出願います」
その瞬間、周囲にいたメイドさんたちがざわつき始める。
王族の、それも女の子ともなれば理解できる。
しかし、それを手で制したのはグラウゼルだった。
「必要なら、そうさせてもらおう。聖子殿、何卒よろしくお願いします」
「主と母様に誓って、必ず成し遂げます。慈悲深き貴君にも神のご加護がありますように」
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