第32話 嫉妬に狂う0歳児
「尋ねたいことがある」
旦那さんと思われる男性。
それに事故を起こしたご老人も退出しようとはしない。
一体何があるのか。
「あの足……切断しなければ治らないと聞いた。我から見てもそう思ったものだ」
「…………」
「いかに聖女と言えども治せない可能性が高い、とも聞いた」
「…………」
何だかよろしくない雰囲気だ。
治らないと言われた足が治ったことを喜んでいる様子はなく、怪しんでいるような。
この男、旦那さんではないな……?
もしや『悪魔の子』関連のの輩か?
「…………」
ゲオルディクスを見ると、視線を明後日の方向に向けていた。
やはり、僕を守ると言っていたのは噓だったらしい。
「そなたは……可能なのか?」
「……はい?」
「聖女にすら癒せなかったけがや……病気を治すことが」
「…………」
どう答えるのが正解だろうか。
この男の質問の意図するところがわからない。
だが……。
「頼む、答えてくれ……!」
どうも、彼が抱いているのは疑念や疑惑の類ではないようだ。
それよりは懇願……祈りにも似た、そんな目をしている。
彼は助けを求めている?
「できます」
「――――!!! 本当か!? やはり……!」
「グラウゼル様、どうか落ち着いてください」
「う、うむ……」
ご老人に窘められる、グラウゼルと呼ばれたこの男。
先ほどご老人に主と呼ばれていたはずだが。
「名乗らなかった非礼を詫びよう。我はグランデシャイン王国の第1王子、グラウゼルと申す」
「改めまして、グラウゼル様のお仕えする執事のケビンと申します」
なぜ今まで黙っていたのか。
何かめんどくさそうな問題がありそうだ。
というか関係ないのに何でいるんだ。関係者を装って聖癒をこっそり見に来たと?
腹立ってきた。
「……ケビンさんはまだしも、“聖癒”に関係のないあなたがなぜここに?」
「その言葉通り、無関係だからと追い出されそうだったからだ」
「それがわかっているなら、許されないことをした自覚はおありのようですね」
「む……しかし我はどうしてもここに――」
「どうしてもというなら、まずは正式な面会の手順を踏んでください。王族とはいえ、身勝手が過ぎるのでは?」
「…………そ、それは――」
「主は仰られています。『人はみな、主の元に平等である』と。今すぐご退出を」
「…………」
少し意地悪だろうか。
しかしこちらとしても騙し討ちされたようで不快だ。
王族だから許されると身勝手な考えなら尚更消えてもらいたい。
「……ここには、主とそなたらしかいない。そうだな?」
「はい」
「では……この通り、謝罪させていただく! どうか話を聞いていただけないだろうか!」
「グ、グラウゼル様……!」
自称王子様が頭を下げる。
おいおい、王族がそんな簡単に頭を下げるなよ的な。
しかし許さない。なぜなら頭を下げたといっても尚、僕の頭の位置より高いからだ。
「…………」
そんな怒りと高身長への嫉妬に狂った僕の肩を、レストリアがそっと叩く。
話を聞いてあげましょう、そう言っている気がする。
ああ、なんと慈悲深くお優しい、そしてかわいい目だ。閉じてるけど。
「……謝罪を受け入れましょう」
「感謝する! 主とそなたのご慈悲に!」
「母様――聖女フルルーチェ様に、です。それで? 僕を試した理由は?」
「うむ、それなのだが……」
先ほどまでの鬼気迫ったような目は鳴りを潜め、どこか安心したかのような顔になる王子。
きれいなシルバーの髪と金の瞳も相まって非常にかっこいい。加えて高身長。実に腹立たしい。
そして母様に似てかわいい顔つきの僕とは逆に、ハッキリとした顔立ち。
きっと、僕らは水と油。決して相容れることのない存在であろう。
「妹の治療を頼みたい」
「金貨10、場所はこの“聖癒の間”」
「そ、それは……」
言っただろう、『人はみな平等』と。
そんな思いを込めて王子を見つめる。
謝罪は受け入れたが、彼を受け入れたわけではない。
「――わかった。今は僅かでも可能性があるなら、賭けさせていただこう」
「はい」
「主とそなた、そして聖女様のご慈悲に感謝を。それでは失礼する」
「お大事に」
話も決まり、早々に部屋を出ていく王子様と執事さんだった。
しかし、僕のこの行動を後悔することになろうとは。
僕の考えは、いつも甘い。
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