第25話 四天王(三人)と0歳児
「『聖女授けし希望の剣』」
聖なる光が天高く舞い上がり、無数の剣となって降り注ぐ。
以前用いた『偉大なる神の怒り』のいわば改良版。
より強力な光が、悪意を察知して断ち切る。
「スケルトン共が!」
「どんどん消えていく!」
戦場に散らばる不浄の者が消滅していく。
それに伴い、戦士たちの目が明るさを取り戻していく。
「勝った! 俺たちは――」
「ガァァァァァオオオォォーーーンッ!!!」
しかしその希望を打ち砕くかのように、悍ましい雄たけびが轟いた。
見ると、いつの間にか3つの影が立っていた。
もう戦いは終わったんだけどなぁ。
「ハァハァ……よくも……貴様よくもやってくれたわね!」
「我ら四天王が直々に相手をしてやる!」
「グルルルル……!」
1つは、既に息も絶え絶えな様子の女性の幽霊。
もう1つは、本当に影のような、実体のない存在。
最後の1つは、犬の頭、馬の脚、体は何だろう、筋肉もりもり。そんな様々な生き物が縫い合わせられたかのような……合成獣というやつか? 2メートルはある。
四天王とかいうの、そういえばいたね。
「既に勝敗は決しているかと思いますが?」
「バカめ! スケルトン兵共は無限に沸き続ける! 貴様がしたことは生き延びる時間が少しばかり増えただけだ!」
「既に昇天しそうな女性もいらっしゃいますが?」
「も、問題ない、わ! 私は見たものの生気を奪う『冷笑婦人』! これで終わりよ!」
彼女が微笑んだ瞬間、確かに体を包む魔力に不快感を覚えた。
しかしそれだけ。
代わりに微笑みをお返しする。
「残念ですが。私の身は常に『聖女の守り』で守られていますので」
「なっ!?」
「加えて残念です。あなたのような美しい方とは別の出会い方をしたかった」
「はうぅ!? あっ――あぁ……」
『ちゃんマス』仕込みのウィンクと聖なる魔法を飛ばすと、それだけで彼女は昇天――消滅してしまった。
「『冷笑婦人』!? 貴様……!」
「グルルルル!」
あの2体は……ちょうどいい。
「ロロップ、任せるよ」
「はい!」
ロロップ、その背後にレストリアを添えて。
巨大だったレストリアをそのままいつもの人間サイズに圧縮。
つまり、いつもより更にすごいスーパーレストリア、スーパー母様だ。
「行けっ!」
「とりゃー! ぴょん!」
「――っ!?」
「グルッ!?」
間の抜けた掛け声、しかし瞬きのうちに敵の眼前へと迫る速度は本物。
彼女が突き出した拳はなんとも弱々しい、しかし代わりに母様が思いっきりビンタをしてくれる。
「――ッ、ば、ばかな……無形の我が……消え……」
無形ということは、魔力の影響をより受けやすい。
母様のかわかわビンタでもよく効くだろう。
「グ、グルルル……! ガァッ!!!」
「えいやぁ!」
「ガボェ!?」
最後の合成獣は、蹴り上げたロロップの足により爆散した。爆散した!?
「す、すごい……」
脚力は本物だ。正真正銘強靭でむちむちな足。
そこにレストリアによる強化が入ることで……恐ろしい。
「……さ、さすがです、ロロップ……」
「当たり前ぴょん♡ お義母様との共同作業だぴょん♡」
そのレストリアも心なしかびっくりしているけどね。
「た、倒した! 四天王を倒したぞ!」
「聖子様! イクラウス様、万歳!」
「後は魔王だけだ! このままぶっ殺しに行くぞ!」
「やってやる! 俺たちが国を救うんだ!」
すっかり士気を取り戻した兵士さんたち。
その目は希望にあふれ、高揚心を抑えきれていない。
しかし相手は魔王だ。油断していると足元を掬われかねない。
「あなた方は引き続きここを守っていただきたい。敵も言っていたように、スケルトンがまた沸く可能性もある」
ここで人々に『僕に任せろ!』という感じで、かっこよく腕を横に振る。振りながら、こっそり“とある魔法”を使う。
「し、しかし――」
「問題ない。余が直々に神罰を下しに向かう」
「聖子様が!? しかしお1人では危険です!」
当然の指摘、そこでロロップを手招きする。
おずおずと僕の横に来た彼女を安心させるよう、腰に手を回す。
「余にはこの頼りになる獣人の友がいる。先ほど四天王をたやすく屠った友が」
「じゅ、獣人……」
「ウサギの……?」
「問題か? 彼女も、この国のために危険を顧みず戦った戦士だが」
しばしの間、静寂に包まれる。
差別心というのはなかなか拭えない。しかしそれを打破できるものも、間違いなくある。
「いや……いえ、お願いします! 獣人の戦士よ!」
「我らの同胞! 聖子様を守ってくれ!」
「頼むぞ! 聖子様! ロロップさん!」
それこそが、高揚心。
熱に浮かされた今なら、それも容易い。
全く知らない人とも肩を組み喜びを分かち合いたいという、スポーツの観客によく見るアレ。
そして、先ほど使った魔法は……ちょっとした闇魔法だ。ちょっとだけ思考力を下げて興奮させるだけの魔法だ。『混乱魔法』とも言うが、問題ない。
「は、はい! ぴょん!」
「行こう」
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