第24話 希望で照らす0歳児
服を着せ、テントを抜け出し、野営地を後にする。
ロロップがローブを着ていたこともあり、僕はその中でやり過ごすことが出来た。
非常にいい香りがした。
そしてかなり距離が空き、こちらを視認できないほどの距離になったところでロロップに声をかける。
「ここらでいいでしょう。時にロロップ、『オーラ』の魔法は使えますか?」
「……獣人は魔法が使えないぴょん……」
「それは失礼しました」
そうなのか。
もしかしたら、そういうところを理由として迫害されているのかもしれないな。
後で獣人についてもっとしっかり教えてもらおう。
「では、私があなたに『オーラ』を付与します。よろしいですか?」
「へ? は、はい! ぴょん♡」
『オーラ』。
光魔法に属する、いわゆる身体を強化する魔法。
光属性そのものは“正”の性質、つまり物事を強化、発達させる魔法である。
光魔法の回復魔法というのも自己治癒力を高めるもので、聖魔法の外部の力による治療とは異なる性質だ。
「『オーラ』……どうですか、不具合ありませんか?」
「ふあぁぁん♡ 旦那様を……感じちゃいますぅ! な、なんかキちゃいま――んっ!!!」
「…………」
「ハァハァ……ご、ごめんなさい……1人で、イっちゃいました♡」
どこに行ったというのだろうか。
帰ってきて欲しい。置いてかないで欲しい。
「……えと、大丈夫みたいですね。今ロロップにかけた魔法は身体能力を上げる魔法です」
「そういえば……いつもより音もよく聞こえるし目も良く見えるぴょん」
「はい。その力で、僕を担いで走っていただきたいのです」
「ぴょん?」
僕と会う前。
彼女は長時間馬車と並走させられていた。
それにもかかわらず、あの時彼女は息を切らしてもいなかった。
「ロロップ、あなたは走ることは得意ですよね?」
「えへ♡ やっぱ旦那様にはバレちゃうぴょん♡」
「ええ、もちろん。あなたの魅力は留まることをしらないですから」
「えへへへ♡ 私、昔から早く走ることが得意だぴょん! 体力もバッチリぴょん♡」
すばらしい。目論見通りだ。
これなら予定より早く母様の元へ帰れるに違いない。
唯一の誤算は、彼女が想像以上に桃色の頭をしていたことだけだ。
「旦那様を担いで……どこか遠く、誰もいない場所に連れて行って――ぴょん♡」
「いえ、今なお助けを求める戦地へと」
「……ぴょん」
「頼めるかい、ロロップ。君だけが頼りなんだ」
「ぴょん♡」
ああ、どんどん自分が汚れていく気がする。
母様よ、罪深き僕をお許しください。
「しまった、ナナリスさんにも事情を伝えておいた方がいいか」
「ナナリスは大丈夫ぴょん。昔からいろいろと察してくれるぴょん。旦那様の方は大丈夫ぴょん?」
「ええ、大丈夫です」
ゴレイヌ宛に手紙をしたためておいた。
彼ならいろいろとうまく立ち回ってくれるだろう。
「では、いざ!」
「愛の巣へ!」
戦場へ!
◇◇◇◇◇◇
予想以上だった。
予想以上の速さ。急ぎ足の馬車で1日かかる距離。それを、まだ日も見えない時間で走りぬいてくれた。
そして、戦場の厳しさもまた、予想以上だった。
「……あうぅ……」
サンディバーグ王国。
その城が目前に迫る、開けた場所。そこが現在の主戦場のようだ。大量のスケルトンと人間がぶつかり合っている。
その数は……わからない。ずっと奥の方まで、無数の骨がうごめいているのが見える。数千、もしかすると数万か。
「…………」
まだ夜中なのに激しい攻防が――いや、アンデッドたちにとってはむしろ活動時なのだろう。
至る所に兵士や冒険者と思われる遺体が転がっている。
城壁の内部に次々とけが人が運び込まれているが、道の真ん中に寝かされている者も多い。
しかし、彼らがそのまま踏みつぶされるのも時間の問題だ。
「これは……抜け出して正解だった」
城の1番高いところからその様子を伺う。
僕を抱えるロロップの手が、体が震えているのがわかる。
「ロロップ、ありがとう。あとは休んでいて」
「……い、行く……一緒に……」
「ロロップ、無理はしないでいいんだよ。後は僕が――」
「だ、旦那様が行くから……私も、行く……!」
体を、歯をガチガチと震わせながらも、それでも付いていくと言う彼女。
そうだった、既に生涯を共にする約束をしていた。
「わかった。行こう。おっと、その前に……」
「ぴょん!?」
「勝手にごめんね。耳、急だけど治させてもらった」
「はわ……」
「大丈夫、嫌な思いはしないはずだよ」
「ぴょん」
急ごしらえの、形だけ適当に取り繕ったうさ耳。
この窮地を救ったのは誰なのか、知らしめるためだけの耳。
治したというより僕の細胞が無理やりくっついてるだけだが。
「……えへへ! もう怖くないぴょん!」
「よし、行こう!」
絶望を切り裂くように、希望の朝を知らせるように。
聖女を模した巨大な像が、光とともに顕現する。
「『聖女御座す安息の地』」
城壁の手前、その壁よりも大きな聖女がすべての闇を明るく照らす。
傷ついた人々を、優しく包む。
「何だあれは!」
「神……女神様!?」
「怪我が! 怪我が治ってる!」
「おぉ……助かる……我々は助かるんだ……!」
巨大な像となったレストリア。
その両手の上にロロップとともに立ち、宣言する。
「主の思し召しにより、聖イルミナス教会聖子、イクラウスが参った!!!」
「教会の……?」
「援軍か……? あんな子どもが!?」
残念ながら、子どもだと安心には足りないようだ。
ゲオルディクスの言う通り、やはり威厳も必要なようだ。
人々を救うためなら、いくらでも取り繕うじゃないか。
「余が来たからには勝利が約束された! 誇れ、か弱き民を守り抜いた自分を! 誇れ、国を守った英雄を! 主は誇り高きものに希望を授ける!」
戦場にいる人の視線がこちらを向く。
その目に焼き付けるがよい。
「母様に代わり、慈悲深き裁きの光を――『聖女授けし希望の剣』」
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