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聖女から生まれました~母様に代わって聖魔法による慈悲と裁きを施しましょう。闇魔法?つ、使ってないよ?(洗脳魔法発動)~  作者: たゃんてゃん
第3章 ヤンデレうさ耳獣人と魔王

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第19話 日常を崩される0歳児


 読書に耽る僕。

 それをニコニコしながら見つめているマリン。

 そしてきっと、見守ってくれている母様。

 ずっとこんな日々が続けばいいと思うが、きっとそうもいかない。


「イクラウス様、少々よろしいでしょうか」


 いつまで経ってもゲオルディクス呼びに来ないことを怪訝に思っていると、久しく聞かなかったゴレイヌの声が部屋の外から聞こえてきた。


「どうしたゴレイヌ」

「はっ。至急イクラウス様をお呼びしろと大教皇様からのご指示がございまして!」

「……大教皇、か」


 教皇ゲオルディクスの上に立つ、聖イルミナス教会の頂点。

 そのお方が何の用か。厄介ごと以外の何物でもないだろう。


「わかった。すぐに向かう」

「イクラウス様……」

「マリン、何も心配はいらない。だが、母様のことは頼んだぞ」

「……はい」


 確信めいた予感を抱きつつ、眠っている母様の頬にキスをする。

 枕元に置いてあるウサギのぬいぐるみをひと撫でし、後ろ髪をひかれる思いで部屋を出た。


「……遠征です」

「だと思ったよ」

「詳しくは大教皇からお聞きくだされ」


 ゴレイヌとともに、階段を3階分ほど下る。

 案内されたのは、謁見の間。先日僕が座っていた玉座には大教皇の姿があった。

 長く真っ白な髪を後ろで束ねた女性。初老をはるかに超え、既に長寿と言っても差し支えないほど、刻まれた皺は深い。

 その顔を優しく歪ませながら、大教皇は口を開きしわがれた声を発した。


「まぁまぁイクラウスちゃん。突然呼び出して悪かったねぇ」

「いえ、大教皇様に呼ばれたならいつでも飛んでまいりますよ」


 僕をイクラウスちゃんと呼ぶのは、この大教皇と例のメイドだけである。

 何者だよ、あのメイド。


「いやだわ、イクラウスちゃん。私のことはアレシアと呼んでと言ってるでしょ?」

「マザー・アレシア。僕をお呼びした理由をお聞きしても?」

「ああまあ、若者はせっかちでいけないわ。けれどそうね、ゆっくりしている時間もないわね」


 その通りである。

 こちらはおばあちゃんの相手をするより、優しくてかわいい母様と一緒に過ごす方が優先事項なのだから。

 早く用事を済ませてしまいたいのだから。


「イクラウスちゃん。“骸の魔王”というのは覚えてる?」

「? いえ……何ですかそれ。怖いです」

「イクラウスちゃんが派手な魔法を使って倒した骸骨さんいたじゃない? それの飼い主よぉ」

「…………」


 思い出した。

 初めての遠征の時に戦った巨大骸骨。そいつが言っていた気がする。

 しかし僕が口をつぐんだのは、それが原因ではない。


「腹立たしいことにねぇ……そのド腐れ魔王が攻勢を強めてきちゃってねぇ……」

「…………」

「我がよき友好国であるサンディバーグが攻め落とされそうなんですって。本当に……忌々しい……!!!」

「は、はい……」


 彼女、マザー・アレシア。

 別名狂乱聖母。要は、魔物を憎み果てて半分狂ってるおばあちゃんってこと。

 最強と名高い聖マリアンヌを育て上げたのは彼女だという噂だ。魔物を滅ぼし尽くしてほしかったのだろう。


「マザー、後は私から。坊ちゃん、今もこうしている間にも罪なき人々が地獄の苦しみを味わっているのです。主は言われました。『罪なき子羊をいたずらに害するとき、必ず我が怒りの光が汝らを穿(うが)つであろう』、と。今こそ彼の友に救いの手を差し伸べる時なのです」

「はい」

「主の御心のままに、よろしいですね」

「はい。主の御心のままに」


 こういう時は余計なことは言わず、ひたすら頷くに限る。

 前の時に『母様と離れたくありません』とごねたところ、3時間余計な説教を食らう羽目になったのだ。

 僕は同じ過ちを繰り返さないのだ。


「うふふ。いい子ですねイクラウスちゃん。あなたが魔物の敵である限り、主と私はあなたの味方でい続けるでしょう」

「ありがとうございます」


 その言葉に含みがあるように思うのは考え過ぎだろうか。

 うすら寒いものを感じながら、ごまかすように背後のゴレイヌに声をかける。


「ゴレイヌ、行こう。主と母様の威光を知らしめに」

「御意!」

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