第148話 センチメンタル1歳児
着々と戦の準備が進むグランデシャイン王国。
3日目の今日、装備や物資の最終確認をして、いよいよ明日には出陣するのだとか。
今はきびきびと指示を出すタリアさん、おどおどと装備の確認作業をするグラシェルノを、微妙な気持ちで眺めている。
「グラシェルノさんも頑張っているのですね」
「イクラウス様……はい。兵たちが生き残れるように……といっても、イクラウス様の糸のおかげですが」
ここを発つ前に搾り取られた糸。
どうやらそれを装備に縫い付けた物らしい。
「……そうですね。戦いに巻き込んでしまって申し訳ない。僕も可能な限り彼らを支援します」
「イクラウス様……それは違います!」
グラシェルノにしては大きな声で否定される。彼が魔道具以外のことで声を張るのは珍しい。
「僕たちは自分の意思で戦うと決めました……兵たちも、きっと同じ気持ちです」
「それは……」
どうだろうか。
兵とは所詮王の指示に従わなければ行けない存在だ。
「兄様が言っていました……この戦いに赴く兵は希望者のみにしたと。結果的にはほぼ全員従軍することになりましたが……」
「なんと……」
「そして、彼らはイクラウス様をお守りし、その道を切り拓くのが使命です。だから……その……」
戦場において、僕からの支援は不要。
そう言いたいのだろう。
しかしグラシェルノとしては兵にも傷ついてほしくない。
だからこそ、今準備をしているんだ。
「ありがとう、グラシェルノさん」
「……いえ!」
グラシェルノたちに別れを告げ、王城の中を目的もなく歩く。
ありがたい。グラシェルノの気持ちも、兵たちの気持ちも本当にありがたい。
だけど、心は晴れない。
僕たちが、グランデシャイン兵たちが勝つ、ということは……。
「イクラちゃん、おいで♪」
「母様」
グラウゼルたちと打ち合わせをしていたはずの母様が目の前にいた。
どうして母様は、いつも僕が悩んでいる時にそばにいてくれるのだろうか。
「……何か心配事があるのかしら?」
「母様……」
疑問符を浮かべてはいるが、どうやら母様には見透かされているようだ。
そっと頭を撫で、視線を僕の高さにまで合わせてくれる。
「……教会には……お世話になった人たちが……」
「……そうね」
いつも僕を見守り、時に叱ってくれたゲオルディクス。
もちろん彼だけではない。護衛をしてくれた神官兵や、お世話をしてくれたメイドさん。
それにゴレイヌだってどうしているか。
僕のことを『悪魔の子』呼ばわりしたことは腹が立つ。
だけど、彼らの中には騙されているだけの人もいるだろう。
そんな彼らが犠牲になるなんて、あっていいのだろうか。
「……大丈夫、きっと何とかなるわ」
「母様……だけど……」
「主が彼らを見捨てるはずがないもの。それに、教皇様はきっと大丈夫よ」
「ゲオルディクスが?」
「うん……だって、教皇様って死んでも死ななそうじゃない?♪」
「……ぷっ。そうですね」
最後だけ、まるで冗談を言うように微笑む母様。
不思議だ。具体的な解決策が見つかった訳でもないのに、不安な気持ちが無くなっていく。
何だか大丈夫な気がしてきた。
「さ、イクラちゃん! 一緒に主にお祈りしましょ♪ 今度ばかりは本気で祈るのよ~?」
「そんな! 僕はいつだって本気で祈ってますよ! 母様に」
「私じゃなくって、主! イルミナス様!」
「……そうですね」
主よ、ゴミムシとか言ってごめんなさい。
僕を仲間外れにしたことは許してあげます。
だから、みんなが幸せな結末を迎えられるよう、見守り下さい。
「主よ、どうかご加護を……」
そして時は流れ、10回目の夜が明ける。
誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!
★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!
明日も18時20分頃投稿します!
よろしくお願いします!




