第133話 限界集落と1歳児
一晩泊まり、その間に詳しい話を聞いた。
それによると、ここにいる魔族はドラゴンに仕えるためにここにいるのだと。
しかしそのドラゴンが突如暴れ始め、会話もままならなくなってしまった。
仕方がなく毎日『強制睡眠』を何度もかけることでドラゴンの怒りを無理やり抑えてきたそうな。
「我々は種族的に魔法に長けてはおります。ですが年々人数も減ってきてしまい……」
「ですか……」
ドラゴンほどの存在を眠りにつかせるのに大量の魔力と人数が必要らしい。
長い年月の中で、ずっとドラゴンに縛られて生きるのを良しとしない者や、ドラゴンに殺されてしまう者も多くなってしまったと。
「そこまでしてドラゴンに仕える理由があるのですか?」
「はい。我々、そして祖先は彼の偉大な龍に何度も助けられてきました。人間の迫害、魔物の襲撃と。その恩を忘れドラゴン様を見捨てるなど、あってはならないのです」
大した忠義の心である。
人間は治療してもらったその腕で誘拐まですると言うのに。
「わかりました。早速向かいましょう」
「ありがとうございます!」
「山頂付近に魔法実行部隊の拠点がありますので、まずはそちらに向かってください」
ドラゴンが何に怒っているのか、それがわかるといいのだが。
ザルフォス――ここの族長らしい、の家から出ると、何人もの魔族が集まっていた。
リザード種だけでなく、顔がゴブリン、蛇、といったわかりやすい魔族だけでなく、半透明だったり形容しがたい何かだったりする者も。
「イクラウス様、どうかドラゴン様をお救いください!」
「お願いします!」
「お願いします! イクラウス様!」
みな異なる口で同じことを言う。
その目は真剣そのもので、いかに切実な思いでドラゴンの身を案じているのかがわかる。
「お任せください。必ずや母様と神の慈悲を届け、ドラゴン様に安寧をもたらしましょう」
「どうか! お願いします!」
「イクラウス様もお気をつけて……!」
魔族の期待を一身に背負い、山頂までの道を歩き出す。
と見せかけてロロップを見つめる。
「跳べる?」
「ぴょん! もちろんぴょん!」
「さすが! だと思った」
1週間かかる道のり、正直しんどい。
タリアさんとアステラをここに置いていく選択をしたのもこのため。
つまり、ロロップによる跳躍で一気に山頂まで行くのだ。
「『オーラ』、最大!」
「んっ♡ 旦那様が入ってくりゅう♡」
「……うん」
その通りではある。
しかし『オーラ』状態のロロップに襲われたら多分成す術がない。
耐えてくれロロップの理性……!
「よぉーし! 行くぴょん!」
「おお! やったか!」
「? 今から行くぴょん!」
「……ごめん。頼むね」
つい理性の勝利を祝う言葉が出てしまった。
気を取り直し、ロロップに抱きかかえられて跳ぶ準備完了だ。
「ん~~~……ぴょーーーん!」
「ぐぇっ!?」
締め付けられる体、空気の壁に叩きつけられる頭。
それを耐えながら下を見ると、あっという間にみんながゴマ粒みたいになった。
「ぴょん!? 届かないぴょん!」
「大丈夫、地魔法『ロックシールド』。足場だよ!」
「ぴょん♡ 共同作業ぴょん♡」
「まだまだ必要そうだね」
古来より盾は足場にするものと決まっている。
それを3回繰り返し、ようやく山頂に辿り着くことができた。
山頂は雲がかかっており、空気も薄い気がする。
「ふぅ……ロロップ、助かったよ」
「ぴょん! 今度は1回で来れるようにするぴょん!」
そうなったとしたらロロップの足はどうなってしまうのだろうか。
白くてすべすべでもちもちした足が失われるのは避けて欲しい。
「ぴょん! あっちにおうちが見えるぴょん!」
「ああ、魔法部隊の拠点とやらか。行こう」
下の集落よりは頑丈そうな木材でできた大きめの家。
そこに誰かがいることを期待して進む。
「失礼しま――あれ?」
「誰もいないぴょん」
扉を開けると、誰もいない。
どうしたことだろうか……。
「ぴょん? あっちで何か聞こえる!」
「む? 行ってみよう!」
家を出て、ロロップに導かれるまま進む。
するとさらに登れる道があり、その先で誰かの声が聞こえた。
急いで駆け登る。
「『強制睡眠』 ダメだ! 効かない!?」
「ドラゴン様! どうかお静まり下さい! 『強制睡眠』!」
どうやらドラゴンを眠らせようとしているようだが……。
「ギャアアアォォォォーーーンッッ!!!」
眠る気配の全くない、理性の色もない目をしたドラゴンが、そこにいた。
誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!
★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!
明日は10時10分頃と20時20分頃に投稿します!
よろしくお願いします!




