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聖女から生まれました~母様に代わって聖魔法による慈悲と裁きを施しましょう。闇魔法?つ、使ってないよ?(洗脳魔法発動)~  作者: たゃんてゃん
第9章 母様普及の旅

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第126話 妥協する1歳児


 なぜこの旅をかよわい女性と子どもだけでしているのか。僕らを守る護衛はいないのか。

 それは簡単である。

 誰も僕らを傷付けられないからだ。


「っつー訳で、こいつらは全員俺が――何? 近づけねぇ……」

「え?」


 どうやらセキは『聖女の守り』の範囲外にいたようで気が付かなかったらしい。

 でなければ明確な害意もちということで弾き飛ばされていただろう。


「僕らは聖女様の偉大さを伝え、その慈悲を分け与えるためにここに来ました」

「あん? 何言ってんだ?」

「ここでは強い者が他の物を従える、そうですね?」

「そうだが……」


 ならば話は簡単である。


「ではお見せしましょう。偉大にして世界一かわいい、そして勝利を授ける聖女フルルーチェ様! その恩恵を受けし我が力を!」

「あ!? やるってのか!?」

「行け、ロロップ!」


 秘技、ロロップ。


「ぴょん! 不快!」

「なっ!? あぎゃぱっ!?

「えーっ!? ガルベン!?」

 

 ガルベンと呼ばれた虎男、ロロップの蹴りでミンチとなってしまった。

 何もミンチにしろと入っていないのだが……。

 虎の肉は獣臭くてまずいと聞いたことがあるし。

 しかし目的は制圧ではなく、対話なのである。


「『聖女の癒し』」

「はっ!? い、今のは一体……」

「今体験していただいたように、これこそが聖女フルルーチェ様のご慈悲です。我々はこの奇跡をあなた方に――」

「納得いくか! 不意打ちしやがって……!」


 図らずもその偉大な技を体験したにもかかわらず、虎男は納得していない様子。

 一瞬で気絶して目覚めたら元通り、となればそうか。


「もう1度だ! かかってこい!」

「いいですけど……ロロップ、気を失わないようにしてあげて」

「ぴょん!」


 生存戦において不意打ちを否定する輩など大したことがない。

 しかし僕は母様の使徒、寛大な心を持って再戦を許そうではないか。


「ぴょん!」

「――足がっ!?」

「ぴょん!」

「腕がっ!?」

「ぴょん!」

「尻尾まで!?」

「あとは……目?」


 こわっ。

 足が吹っ飛んだ時点で勝負はついたも同然だったけども。


「『聖女の癒し』」

「ま、参った……俺の負けだ……」

「では、我々の話を聞いてくれますね」

「あ、ああ……」


 ということで改めて聖女像設置の経緯を説明する。

 いつの間にか虎男――ベンガルだけでなく他の獣人たちも集まってきていた。


「――ということで、聖女――母様は偉大! 母様を(あが)(たた)えて! 母様にひれ伏せるのです!」

「お、おお……まあいいけどよ」


 いいのか。


「俺らは正直人間が信仰する神だとかわからねえが……それでもいいのか?」

「はい。なんとなくでも聖女像のありがたみがわかってくれるなら、今はそれで構いません」


 聖女像の効力は確かなもの。

 それの恩恵を実感できれば、ゆくゆくは信仰にもつながるだろう。


「不本意な衝動が抑えられる……」

「それどころか人間の侵入を防ぐだって!?」

「傷ついても治るのか……それなら――」


 周囲の獣人も口々に聖女像の素晴らしさを口にしている。


「「人間を狩り放題だ!!!」」


 と思っていたら物騒なことを言い始めた。

 中には『戦争だ』と言って雄たけびを上げる獣人も。


「坊主――イクラウスつったか? 悪いがここは人間の境界に最も近い、いわば最前線だ。人間に持つ恨みは相当深いやつらが集まっている。人間憎しってな」

「なるほど」

「だから人間との和解を求めたって無駄だぜ?」

「構いませんよ」


 虎雄がきょとんとしている。

 騒いでいた周りもきょとんとしている。

 獣人は単純、それを実感。


「この聖女像の設置は、母様と主、イルミナスの偉大さを広めるための物です。獣人と人間の争いに心を痛めてはいますが、目的が違う」


 それこそ、今はその時ではない。主も言っている。

 何より生命の安全すら脅かされている現状で人間と仲直りしろなんて、無理筋もいいところだろう。


「いいんだな? 聖女像とやらを人間との争いに使っても」

「ええ。ちなみに、周囲の国にも同じものを設置する予定です」

「何だと?」

「困っている人に平等に手を差し伸べる、それが母様と主の慈悲ですから」

「…………」


 今僕らにできることは、両者に安全な領域を提供することで争わずに済む状況を生み出すことだけだろう。

 後は時間をかけて解決していくしかないのだ。


「……ここは最前線、人間への恨みが強い者が集まっていると言ったな」

「? はい」

「この森を奥に進めば、そうではない奴らの集落がある。お前の言う慈悲が必要なのはそいつらだろう。行ってやってくれ」

「ありがとうございます」


 どうやら少しだけ虎男、ガルベンの信頼を得られたようだ。そう言うことにしておこう。 


「そこに大頭(おおがしら)――お前らの言うところの獣人や魔族をまとめていらっしゃる方もそこにいる」

誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!

★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!


明日も18時20分頃投稿します!

よろしくお願いします!

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