第124話 獣人差別と1歳児
それから数週間。
事前に決めた通りクードリックの王都は一旦スルーして進んでいる。
とはいえ民に罪はない……と言えなくもないので、村や町には立ち寄っている。
だがそこでもロロップは嫌な思いをする羽目に。
「しかし……まさかクードリック全域で獣人差別が盛んだとはね」
「ぴょん……」
宿の利用を断られるのは当然のこと、町への立ち入りすら拒絶されるところもあった。
それどころか、野営中に襲われることも。どうやら後を付けられていたらしい。
こちらには『聖女の守り』があるからと問題ないし、アステラとロロップが追い返してくれたけど。
「結局聖女像の設置ができたのは小さな村がいくつか、でしたね」
「まあ仕方がない。その村から口伝手で広がってくれればよしとしよう」
さすがに母様の名声を広めるために闇魔法で洗脳……というのは憚られた。
ということで、クードリックでの旅は終わりである。
気を取り直して次に進もう。
「つぎはぁー」
「はい! 地図によると空白地帯です!」
「空白地帯?」
何を言ってるのだろう。
誰も治めていない地域ということだろうが、地図で見るとかなりの広さが空白地帯となっている。
資源としてほっとくのはもったいない気もするが。
「こほん。ここは獣人やその他魔族が多く暮らす地域ですね。厳密に言うと国として認められていない、故に空白地帯となっております」
「獣人と魔族……」
オンモードのタリアさんが改めて説明してくれる。最初からそうしてくれ。
しかし空白地帯とは……完全に差別の結果じゃないか。
しかもクードリックの真横にとはなかなか肝が据わっている。
「魔族とは……獣人が獣との混血だとしたら、魔族は魔物との混血の人間です。クードリックを始め多くの地域では人間扱いしていませんが」
「ぴょん……」
「ごめんなさいロロップ様、ですが……」
「ううん……」
タリアさんが敢えてひどいことを教えてくれたのは、それがこの世界の標準でもあるからだろう。
今まで関わってきた国がそうでないだけで。
グランデシャインはともかく、ロッキンバーグは細かいこと考えてなさそうだし。
「獣人、魔族は迫害を受けている。とはいえその繁殖力と身体能力は純粋な人間よりも高い。加えて広大で肥沃な土地を実質支配しているため、クードリック始め他の国とも渡り合えているのです」
かつてゲオルディクスも、獣人側にも差別を受ける因があると言っていた。
それは強制的な性交。主も許していない大罪。
クードリックの差別も単純な侮蔑ではなくそういう理由かもしれないな。
「だけどそれって、迫害や差別って言うより種族間の戦争って言わない?」
「そうですね。迫害という言葉は人間が上位種だと信じる者たちが使っているだけです」
「……なるほど」
あくまで『俺たちがいじめてるんだぞ』というスタンスということか。
ともあれ、この問題はかなり根深いのでは。
「最早どちらが被害者かは知りようがありません。私としても、ロロップさんがいるから獣人よりの立場を取っているだけです」
「ぴょん?」
「一途でかわいい。それに私たちの危機に駆け付けてくれましたから」
「……ぴょん!」
いかな聖人君子が『差別はやめなさい』と言っても、解決できるわけではない。
結局のところお互いが少しずつ歩み寄って信頼を築いていくしかないのだ。
ロロップが成し遂げたように。
「……やはり後でクードリックの王都にも行ってみよう。1番最後……忘れてなければ」
「ですね。そのためにはまず『獣人の呪い』を解決できたという実績が重要になるかと」
「それって……グラシェルノが今開発してる――」
「ふふ。あの子が次に興味を持ったこと、母としても協力したいと思うのは当然です」
聖女像の有効範囲にいれば『獣人の呪い』――繁殖本能を抑えられる。
それでなく小型魔道具化したものがあれば、他のところでも活動しやすくなるだろう。
「よし! 方針も定まったことだし、獣人たちのところに行こう!」
「おー」
「はい!」
「ぴょん!」
みんな気合を入れなおしている、はずなのだがタリアさんだけオフになるのはなんでだろうか。
切り替えが早すぎる。
「ちなみにー、おんなとしてはえっちな子ぼしゅーちゅー」
「……1歳児になんてことを言うんだ」
えっろ。
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