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聖女から生まれました~母様に代わって聖魔法による慈悲と裁きを施しましょう。闇魔法?つ、使ってないよ?(洗脳魔法発動)~  作者: たゃんてゃん
第9章 母様普及の旅

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第117話 瞳の中の1歳児


 旅に出て1日目。つまり当日。


 馬車に乗りグランデシャイン領地から外に向けて駆ける。

 急ぎの旅ということなので、2頭立ての馬に無理をしてもらいながらの強硬軍だ。

 馬車の揺れと移り行く景色が、今までの旅とは比べ物にならない。


「ああ、王都があんなに小さく……」

「まだ出発してから5分も経ってませんよ!」


 既に母様が恋しい。

 本来なら僕みたいな1歳児は常に親元にいるべきなのだ、仕方がない。


 そうだ、練習もかねて小さな母様を作って気を紛らわせよう。


「『聖女像(フルルーチェ・)降臨(アイドル)』」

「まあ! 小さくてかわいらしいお義母(かあ)様の石像ですね!」

「でしょう? ほら、目元なんかそっくり」


 微笑んでいる顔も眠っている時の顔も似ているからね。

 何度見たことか。


「それにも聖なる力があるのですか?」

「まだだよ。今からやってみる」

「はい!」


 どうか、母様を信じる人が救われますように。幸せになりますように。

 そう思いながら聖属性の魔力を込める。

 すると小さな石像は(ほの)かに輝き始めた。


「すごい……私にもわかります!」

「ぴょん! この前みたいな感じぴょん!」

「うん、成功だ」


 これなら、巨大な物よりは劣るかもしれないが、そこそこの『守り』と『癒し』を発揮してくれるに違いない。

 

「あ、そうだ……昨日母様に提案されたことがあったんだ」

「何をご提案されたのですか?」

「うん……試してみるから見てて」


 そう言って、今作った物とは別の像を作る。

 今度は母様が祈っているのではなく、何かを大事に抱っこしている状態で。


「どう?」

「これは……何かを抱きかかえているのでしょうか?」

「……僕だよ」

「……まあ……」


 言葉にならないらしい。

 それもそのはず、僕と思って作った物はぐにょぐにょした何か。

 自分の姿を見ることはなかなかないもんだ。


「……何だかかわいらしいところはそっくり、かもしれません!」

「無理しなくていいんだよ……とはいえ、母様は僕と一緒がいいと言ってくれたから、できればそうしたいんだ」


 本音を言えばそうなのだが、このままでは母様が得体のしれない何かに襲われているように見える。

 そんなものを作る訳にはいかない。


「確かに、自分の姿を作ると言うのはなかなか難しいかもしれませんね」

「そうなんだよ~……」


 『細胞解析(セル・スキャン)』でどうにかできないものか。

 うむむ。


「ぴょん! いいこと考えたぴょん!」

「ロロップ……?」

「私の目を見るぴょん!」


 言われたのでロロップの目を見る。

 まつ毛が長い。少したれ目。目の奥にハートが見える。


「どう?♡ どう?♡」

「かわいい」

「ぴょん♡ ……じゃなくて! 目の中に旦那様映ってるでしょ?♡」

「いやハートしか映ってなかった」

「ぴょん……旦那様好きすぎて辛い……」


 瞳に映った僕を書けと。

 なかなかロマンチックなことを言うもんだ。

 気持ちはとても嬉しいので落ち込まないで欲しい。


「はい!」

「ん?」

「どうぞ!」

「…………」


 アステラが僕の顔をじっと見つめている。

 これはロロップと同じことだろうと思い、アステラに顔を近づける。

 まつ毛が長い。きりっとした目。目が星を散りばめたようにキラキラしている。その奥に――。


「ちゅ♡」

「あ、アステラ……もう少しだったのに」

「あ、ごめんなさい! どうぞ!」

「うん」

「ちゅ♡」

「……アステラ?」


 もう少しで彼女の瞳に映る僕を捉えることができると言うところで、何度もキスされる。


「うぅ……イクラウス様好きすぎて辛い……」

「言いたかっただけでしょ、それ」


 だけど嬉しいので別にいいや。

 しかしどうしようかと悩んでいると、タリアさんから声がかかる。


「わたしのかばんにかがみ、はいってるよー」

「あ、ありがとうございます」


 さすがは王妃様、身だしなみには気を使ってらっしゃるようだ。

 だけど最初から言って欲しい。


「鏡なら私も持ってます!」

「ぴょん! 私も持ってるぴょん!」

「…………」


 持ってるんかい。

 ロロップなんか黒ウサギの形をしたかわいいカバンだし。

 ああ、『宵越す前の金』はこういうのに使ってたのか。


「ありがとう。3枚もあれば後頭部まで映せるね……」

「はい!」

「ぴょん!」


 色々言いたいことはあったが、ともあれ何とか“母様が僕を慈悲深く抱いてる像”を作ることができそうだ。


 馬車の中でせっせこ練習がてら像を作っていると、再びタリアさんから声をかけられる。

 

「それってさぁ、こうかはおなじー?」

「え? はい。大きい物と出力は劣るでしょうが基本的には同じかと」

「……よし」


 『よし』じゃなくてちゃんと説明して欲しい。

 どうもこの人、オンとオフで差が激しすぎるようだ。


「ああ、なるほど! 国の中心だけでなく、付近の村々にもこの像をお届けすると!」

「さすテラ~」

「…………」


 今のでよく理解できたね。

 しかし目的が母様と主の宣伝であるから、悪い手ではない。


「よーし」

「進路変更ですね! タリア様!」

「ぴょん!」


誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!

★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!


明日は18時20分頃投稿します!

よろしくお願いします!

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