第113話 神敵認定と1歳児
翌日。
昨夜は疲れていたこともあり、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
隣を見ると、グラシェルノも同じように眠っていた。
「グラシェルノさん、起きて起きて! また護衛の人に怒られちゃいますよ!」
「ん~……あ、イクラウス様……お、おはよ、ございます……」
「お、おはよ……」
恥ずかしそうに俯き、顔を赤らめるグラシェルノ。
その様は一夜の過ちを犯したかのような空気を醸し出す。
え、してないよね。
何もしてないよねぇ?
「……は、はずかし……」
「……………………」
主よ……。
「イクラウス様! おはようございま――」
「はっ!?」
2人してドギマギしていると、そこにアステラが勢いよく扉を開けて入ってきた。
「……ふ~ん」
「…………」
僕たちは何もしていない。
だと言うのに、どうしてだろう。
アステラの目が非常に冷たいものになっているのは。
「イクラウスちゃん、おっはよーございます……!」
「イクラウス様! おっはよー!」
そこにマリンやクゥたちもやってきて……。
「……ふ~ん」
「……ふ~ん」
主よ、お助けください……。
僕が一体何をしたと言うのでしょうか。
◇◇◇◇◇◇
微妙な表情のアステラに手を引かれ、食堂を訪れる。
そこにはグラウゼルやグラリオンがいた。
「おおイクラウス、ちょうどいいところに……朝から人の妹といちゃつきやがって糞が」
「イクラウス様、おはようございます。朝から仲睦まじいようで何よりです」
グラウゼルは朝からうっとうしい。
少しはグラリオンの爽やかさを見習ってほしいものだ。
「グラウゼル。僕が僕のアステラと仲よくするのは当たり前のことだ。相思相愛なのだから」
「まあ、イクラウス様ったらぁ♡」
「…………」
アステラの機嫌も良くなる。グラウゼルにも一泡吹かせられる。
我ながら素晴らしい一手である。
「……はぁ、まあいい。ほれ、お前にいい知らせがある」
「ん?」
グラウゼルから紙を受け取る。
この世界では貴重な紙、そこに施された慎ましくも贅沢な装飾が施されたには見覚えがある。
聖イルミナス教会のものだ。
「なになに……『聖イルミナス教会は元聖子イクラウスを悪魔の子と定め、神を冒涜する』――」
冗長な文章をまとめると、『悪魔の子とそれに与するグランデシャインを神敵に指定、宣戦布告する』と書かれていた。
宣戦布告も何も、既に攻撃を受けてるのだが。
「で、こっちは我が同盟国が持ってきてくれた教会からの通達だ。内容は『神敵に共に立ち向かおう。でなければ貴国も敵だ』と書かれている」
「はぇ~……」
これは本格的によろしくない事態になっているのでは。
最悪の場合世界が……グランデシャイン含めて全てが敵になるかもしれない。
「クク……いい知らせだろう?」
「朗報過ぎて泣きそうだ」
こうなったらどこか小さな島を占拠して母様やマリンたちと引きこもりスローライフを決め込むしかない。
主よ、この世界に破滅を。
「そう怖い顔をするな。我々は何があってもお前の味方だ」
「そうですよ、イクラウス様。あなたが我々に施してくれた慈悲、それを忘れることなどできません」
グラウゼルもグラリオンもありがたいことを言ってくれる。
「……そうです。我々は未来永劫イクラウス様の味方。この教会を名乗る不届き者こそが真の神敵。髪の毛一本残さず灰燼に帰して見せましょう……!」
昏い目をしたアステラ、覚悟が決まりすぎている。
だけど僕のために怒ってくれて嬉しい。
「それはそれとして、実際問題どうするかだ」
「そうですね……このまま手をこまねいていてはいずれ滅びるのは我々でしょう」
「そうだな。今は第3王妃――タリアを中心に同盟国と連絡を取る準備をしているが、もしかしたら同盟を破棄される可能性もある」
そうだろうなぁ。
さすがに世界に強い影響力を持つ聖教会から敵視されるとなれば、仕方がないところでもある。
「何かないか?」
「へ? 何か……?」
「要は、教会に背いてでも味方をしたくなるような何か」
何か、とは。
もしも僕のポケットが四次元に繋がっていれば、何とかできたかもしれない。
いやそもそもそのポケットに入れておかなければ意味がない。
「……考えてみるよ」
「ああ。なるべく早くな」
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