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聖女から生まれました~母様に代わって聖魔法による慈悲と裁きを施しましょう。闇魔法?つ、使ってないよ?(洗脳魔法発動)~  作者: たゃんてゃん
第8章 王国と戦争

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第109話 見届ける1歳児


 既に何十、何百と切り刻まれただろうか。

 深夜に始まったにも関わらず、だんだん東の空から太陽が覗き始めた。


「ぜぇ……はぁ……」

「…………」


 グラリオンが遂に片膝を立ち、剣を杖にして息を切らしている。

 当然だ、傷は回復できても精神的疲労は蓄積し続けるのだから。

 大して勇者は、未だ無傷。息一つ上がっていない。

 しかしその目には焦りのようなものが感じられる。


「ま、まだまだ……!」

「しつこい! 何度死ねば気が済むんだ!」

「わ、私は……兄弟で1番……粘り強い……子……」


 遂に力尽きたか、気を失い倒れてしまうグラリオン。

 よくがんばったね。主も、父上も見ているはずだよ。


「ようやく……これで俺の勝ちだ!」

「お待ちください!」


 それまでずっと見守っていたアステラが声を上げた。


「勝敗はどちらかが『まいった』と言うまでのはず!」

「何を言っている! こいつは気を失っているんだぞ!」

「ですので、私が代わりに戦います!」


 周囲が息を吞む気配を感じた。

 最近まで立つことすらままならなかった少女が、戦うと言っているのだ。

 しかも相手は、今の今まで王国軍第3騎士団長を一方的に(なぶ)っていた男。


「その代わり。私が一太刀でも浴びれば、負けを認めましょう」

「……いいだろう。受けてやる!」


 アステラが、剣を片手に勇者の前に立つ。

 グラリオンにも負けない強い目で。


「イクラウス様、あのお方に回復をしていただけませんか?」

「……わかった」


 アステラとしては、あくまで公平に戦うつもりなのだろう。

 相手は勇者だと言うのに。

 だが、妻を信じるのは夫である僕の役目だろう。

 言われた通りに勇者を治療する。


「なめてるのか小娘がっ!」

「いいえ。しかし本気のあなたと戦うことに意味がある」

「……後悔、させてやる!」


 グラウゼルがグラリオンを引きずりながら、その頬を叩く。


「おいグラリオン! 寝ている場合ではない! お前の代わりにアステラが戦うのだぞ!」

「……んん……私は……はっ!?」

「お前の志を継いだアステラが、お前の代わりに戦うのだ。よく見ておけ」

「な、なんだって……!?」


 グラリオンのその言葉を最後に、再び静寂が訪れる。

 やがて、その時が来た。


「死ねぇぇぇっ!!!」

「グラリオン流剣術奥義――」


 勇者の、超高速の突進。そして繰り出される横なぎの剣撃。

 それを受け流し、アステラが体勢の崩れた勇者を見据える。


「『グランドクロス』!」

「なっ――」


 ニ閃の交差した太刀筋が同時に、勇者の胸を中心に刻まれた。

 豪華な鎧すら粉々に砕けている。


 口から血を噴き出し倒れた勇者。

 あっという間の勝負だった。

 何が起こったのかほとんどの人がわからなかっただろう。僕もだ。


「……峰打ちです」

「…………」


 確かに太刀傷からは血は出てないが、結構へっこんでいる。

 あと勇者がピクピク震えている。

 多分すぐ死ぬ。


「『聖なる癒し』」

「あ、がはっ!? な、何がどうなって……! はっ!?」


 自分の身に何が起きたかすら理解できていないようだ。

 しかし周囲の目で察したのだろう。

 自分は負けたのだと。


「ま、まだ……俺は……!」

「はい、あなたの勝ちです」

「へ?」


 勝負は『まいった』まで続く。

 しかしアステラが負けを認めた。


「そもそも兄の戦い、既に勝負はついておりました」

「…………」

「ですが、いてもたってもいられず……こんな小娘のわがままを受けてくださり、ありがとうございました!」

「あ、ああ……」


 この勇者にわかるだろうか。

 グラリオンには試合に勝って勝負に負けた。

 アステラには勝負に勝って試合に負けた、ということが。


「ということで、グラウゼル兄様、それにイクラウス様。この方は見逃すということでよろしいでしょうか?」

「……ふっ、そうだな。見逃そう」

「僕も異論ない。見逃そう」


 見逃す。

 この状況を理解できるならば、勇者はここに2度と顔を出せまい。

 いつでも殺せる相手を、殺す価値なしと逃してやったということに。


「……ふん。覚えてろ」


 お決まりの捨て台詞。

 本当に言う人いるんだぁ。

 しかし光りながら超高速で逃げていく様は滑稽(こっけい)だ。


「アステラ……よくやったね」

「グラリオン兄様! 兄様のご指導の賜物です!」

「……いいやそんなことは――」

「ご謙遜(けんそん)を。私に戦い方を教えてくれたのは兄様じゃないですか」

「それは……そうだが……」


 俯くグラウゼル。

 どうして俯く必要があるのだろう。


「兄様が絶えず重ねた研鑽(けんさん)。様々な戦い方を学んだ上で私のために考えてくれた剣術。それが、勇者を退けたのですよ?」

「私の……研鑽が……?」

「そうです! 兄様の努力の賜物です!」

「そうか……そうだな……」

「はい!」


 努力は必ず報われるとは限らない。

 しかし、その姿は必ず誰かの心に残る。誰かが続く。

 なぜなら、主が見守っているのだから。


「私たちの勝ち……大勝利です!」


 アステラが剣を掲げ、グラウゼルもグラリオンも、そして周囲の兵もみんな剣を掲げる。


「グランデシャインの勝利だ!!!」

誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!

★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!


明日は18時20分頃投稿します!

よろしくお願いします!

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