第107話 不死の軍団と1歳児
そしてついにアンデッドたちとオフィ-リアス軍が激突した。
武器も持たずに殴りかかるアンデッドたち。
剣対拳、さすがに不利ではあるが――。
「なんだこいつら!? 斬っても死なねぇ!」
「それどころかすぐに治って……」
「ア、アンデッドだ! こいつらグランデシャイン兵のアンデッドだ!」
ここでようやく正体に気が付いたようだ。
敵兵に動揺が広がり始めた。
それとは逆に、アンデッドたちの勢いはさらに増す。
「慌てるな! 戦場ではままあり得る! 落ち着いて数を減らせ!」
「し、しかし――ぐべっ!?」
「し、死にません! 怯みもしない!? ぎゃっ!?」
次第に1人2人と敵が倒れる。
そしてアンデッドの手には敵の物だった剣が握られる。
「うおりゃああ!」
「くたばれ! 2度と王国に近づくな!」
「生前1度も放てなかった我が剣技、とくと味わえ!」
うんうん、アンデッドのみなさんとても生き生きしている。
逆にオフィ-リアスのやつらは腰が引けているのが遠目にでもわかる。
その気持ちもわかる。
「ゆ、勇者殿を呼んで来い! あのお方なら!」
「は、はい!」
どうやらこの騒ぎにも気付かずに奥の方で寝ているらしい間抜けな勇者。
司令官に指示された兵士が後方へと走っていく。
「勇者……」
「うん。僕らがここにいる理由だ。あいつはちょっとまずそうだからね」
聖剣がないとはいえ、腐っても勇者。
さすがにどうなるか予想がつかない。
それに何より、僕の気が収まらない。
「糸であいつを拘束する」
「ぴょん! 技名は?」
「…………」
糸。
「勇者殿! 失礼します!」
「なんだこの騒ぎは……」
「勇者殿! お楽しみ――お休みのところ申し訳ございません!」
伝令係がひと際目立つ天幕の前で勇者を呼ぶ。
現れたのは腰に布を巻いた勇者だった。
こいつ、戦場でお楽しみだったってことか?
「おえ……」
「おえ……はっ!? ロロップ、見ちゃだめだ!」
急いでロロップの目を塞ぐ。
決して他の男の裸を見て欲しくないからではない。
ここで発情されると困るからだ。
決して嫉妬ではない。
「ぴょん♡ 私は旦那様にしか興味ないぴょん♡」
「…………」
「照れてる旦那様もかわいいぴょん♡」
「…………」
目隠ししているのにバレているらしい。
いや、こんなことをしている場合じゃなかったな。
再び勇者の方を見ると、急いで準備をしたらしい勇者が出てくるところだった。
派手な装飾が付いた白銀の鎧、それと儀礼剣のように宝石がたくさんついているごてごてした剣を持っている。
「ふっ、あんなアンデッド共に後れを取るとは。オフィ-リアスも大したことがないな」
「……はっ。しかし敵は――」
「言い訳など見苦しいだけだ。安心しろ、勇者である私が屠ってやろう」
「……お願いします!」
「『勇猛最高位極光強化』!」
勇者が、多分身体を強化させる魔法を使って走り出す。技名がダサい。
しかし速度は相当なものだ。
アンデッドは既に敵陣を半壊させているが、それでもオフィ-リアスが退かないのは、やはりこいつがいるからかもしれない。
なので、こいつにはご退席いただこう。
「『悪魔縛りし拘束具』」
「ぴょん♡ かっこいいぴょん♡」
「でしょ?」
ロロップに言われたからじゃないけど、さっき考えた魔法名。
闇夜に溶けるような漆黒の拘束糸が音もなく忍び寄り、闇魔法で弱体化させつつ対象を捕える。
『ブレイブなんちゃら』よりはかっこいい魔法名だと自負している。間違いない。
「貴様ら落ち着け! 私が来たからには勝利は目ぜ――えええええ~~~~~ん!?」
「勇者様!?」
「ち、ちからが……はいらにゃぁぁぁ~~~…………」
「そ、そんな……勇者様が……」
最前線にたどり着き、かっこいいことを言いそうだった勇者の足をタイミング良く捕まえる。
そのまま引きずるようにグランデシャイン王国門前へと連れて行く。
それを見た敵はどうするか。
「勇者様がやられた!?」
「に、逃げろ! 逃げろぉぉぉ~~~!」
「うわぁぁああああ!?」
「おい待て! 勝手に逃げ――ぎゃあああ!?」
勇者という支えがいなくなったことで、どうにか保っていた士気と戦線が崩れ去ったらしい。
敵は殺しても死なないアンデッド、当然か。
指揮官もやられたようで、半分ほどの兵士は逃げ出し始めた。
そうなるともうおしまいだな。
「よし、僕らは行くぞ」
「ぴょん!」
この場をアンデッドたちに任せ、僕らはグランデシャイン王国に向かう。
そこには捕えている勇者がいるはずだ。
「くっくっくっ、どう恨みを晴らしてやろうか……」
「私も蹴りたいぴょん!」
それだとすぐ終わっちゃうから……。
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