第105話 グラリオンと1歳児
グラリオンから話は聞いたものの、結局目新しい情報はなかった。
1つ重要なことは、きれいなお姉さんがいると言うこと。
それとアルネイアさんの事情についても知ることはできなかった。
「さて、では……この戦いをどうするか、だ」
「そうねぇ……僕にいくつか候補はあると言えばある」
「聞こう」
「1つ。聖子らしく兵の皆さんに『オーラ』と『聖女の守り』を付与して無敵の軍隊を作る」
しかし、正直これは気が進まない。
『聖女』と名付けた魔法で戦争に加担するのは、本当に最終手段としたい。
「他は?」
「2つ。同じく聖子らしく、城全体を『聖女の守り』で包み、敵が退くのを待つ」
「それはないな。物資不足で詰みだ」
「……そだね」
そこもどうとでもなるが、まあいいだろう。
「3つ。『悪魔の子』が降臨、敵を魔法で焼き尽くす」
「何だそれは。冗談か?」
「事実だよ。僕は聖魔法以外も使えるからね」
持ち前の魔力と各種属性魔法、そして体内に宿る遺物を合わせれば。
それに糸も出せるし。
「魔法、か。例のジリアン皇女も悪夢のような魔法が使えたと聞くが……」
「どんな?」
「天から巨大な岩を……城ほどに大きな岩を落としたらしい」
「メテオかな」
「めて男? 誰だそれは」
そうか、こっちに隕石はないのか。
ないのか?
「何でもない。けど似たようなことはできると思うよ」
「ふむ……意趣返しとしては面白い。だが、被害も甚大だろう?」
「ん~……」
戦いの後に配慮した戦いができない訳ではない。
闇魔法による同士討ちとか面白そう。
「……私としては、やはり聖子様に矢面に立っていただくのは避けた方がいいと思う」
思わぬ人から反対が入ったな。
グラリオンさんは『悪魔の子』のこと知らないから、猶更かもね。
「ではお前はどうすればいいと思う?」
「ふっ、僕に尋ねるのかい? 裏切る可能性のある僕に。しかも兄上が『まずい』という状況で?」
「ああ。本当は誰もお前が裏切るなんて微塵も思っていない。お前は俺たちの中で1番粘り強い。だからこそこういう時に頼りになる。父上もそう言っていた」
「…………え?」
どうしたことだろうか。
グラリオンが呆気にとられたような顔をする。
そんなに変なこと言ったか?
「『え?』ってお前、別に変なことは――」
「父上が……なんて……?」
「あ? 『俺たちの中で1番粘り強い。だからこそこういう時に頼りになる』か? 正確に言えば……何だったかな」
「…………」
グラリオンが、まるで縋るような目でグラウゼルを見つめている。
いいや、違う。父親を、王の言葉を求めているんだ。
「そうだ、『粘り強く、弛まぬ努力ができる子。最後に信頼できるのはそういう人間だ』。俺に言ってどうすんだって感じだが――」
「……そうか……」
グラリオンが遂には泣き出してしまう。
それを見たグラウゼル、そして僕もアステラも声を発せなくなってしまった。
それほど、顔をクシャクシャにして泣き出してしまった。
「父上は……父さんは、ちゃんと僕らのことを……見ていてくれてたんだ……!」
「グラリオン……当然だろう。俺たちだけじゃない、アルネイア――母上のこともちゃんと見ていたぞ」
「……なんと……?」
「『冷静かつ、最も愛に満ちた女性。彼女のおかげで道を誤らずに済む』と」
「そんな……! 母さん……父さんは……ああ……」
家族間のささいなすれ違いで溝ができ、それが積み重なって……今回の結果になってしまったのだろうか。
なんとなく、そんな気がする。
「……情けないところをお見せしました、聖子様」
少しの間泣き崩れていたが、すぐに持ち直すグラリオン。
その顔は、どことなくすっきりしたものだった。
「いえ」
「はは……しかし、我々家族間の諍いが戦争の引き金を引いてしまうとは……死んだ兵も浮かばれないでしょう」
「そんな……それを言ったら『悪魔の子』である僕にも一因がある」
と言いつつも全く悪いとは思っていない。
勝手なこと言って戦争起こしたのはあっちだもの。
亡くなった方々よ、恨み事は教会と主に言って欲しい。
「亡くなられた方のご冥福は戦いが終わったら…………あー……」
とある考えが浮かんでしまった。
しかしどうだろう。
僕だったら……“苛烈”様だったら『よし、やれ!』なんだけども。
「何だ、間抜けな声を出して」
「……僕が表に出ずに済み、ほぼ確実に勝て、亡くなった兵も報われるであろう方法があるんだけど……聞く?」
「ん? ああ」
「聞いても怒らない?」
「ああ。聞くだけなら」
「絶対?」
「……本当だから早く言え!」
本当だろうか。
もし怒ったら、アステラ連れて逃げよう。
「ネクロマティック奥義というものがあってね……」
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