第104話 考察する1歳児
第2王妃アルネイア。
薄い紫の髪が印象的な40歳くらいの女性。
アステラの治療の時に会ったのが最初で、その時から只者ではない感を出していた。
第2王子グラリオンの母親でもある。
その女性が、反乱を起こした……?
「何でそんなことを!」
「さぁな……気付いたときにはどこにもいなかった。グラリオンが教えてくれなきゃ、犯人もわからんかっただろう」
「グラリオンさん……?」
つまり、王妃だけが反乱を?
一体なぜ……。
「そして王が倒れて城内が混乱に陥っているうちにオフィ-リアスが攻めてきたんだ。どう考えても、内通していたとしか思えん」
「……そう、だね。でもどうして……」
「聞くか? グラリオンならこの城にいる。地下だがな」
つまり、牢屋ということだろう。
本人ではないとはいえ、母親が王の暗殺未遂をしてしまったのだ。
僕がグラウゼルでもそうする。
でも犯人のことを伝えたとも言うし、どうなってるんだろうか。
「……行こう」
「わかった」
再びグラウゼルに連れられて移動。
今度はアステラもついてきた。
「グラリオン兄様のところへ?」
「よくわかったな」
「なんとなく……そろそろかなって」
「……そうだな」
聞けば攻撃を受けてから4日、落ち着いて話をすることもできなかったのだろう。
裏切り者の身内とはいえ、彼女らの大切な家族でもある。
ちゃんと話を聞きたいのも当然だ。
誰も、何を言うともなく進み続ける。
地下の薄暗さはどこも同じようなものだなとどうでもいいことを考える。
そして体の拘束はされていないものの、牢屋に入れられたグラリオンの前に来た。
「グラリオン、調子はどうだ?」
「……グラウゼル兄上。戦況は……?」
「まずい。が、見ての通り、もう大丈夫だろう。早速民を安心させてくれたそうだしな」
「聖子様……! ありがとうございます……!」
民を安心させたのは、グラシェルノの母さんだけどね。
そう言えば名前聞いてなかった。
会ったら聞いとかなきゃ。
「どうも、今は聖子ではなく悪魔の子と言われています」
「悪魔の子? なんですかそれ……あなたのことですか?」
「はい。今は教会も追い出されて流離う身であります」
「そんな……あなたみたいなお優しい方を……一体なぜ……」
僕のことを気にかけてくれているみたいだが、それはまた今度でいいだろう。
今は彼のことを聞きたい。
「もしよろしければ……あなたのお母様のことをお聞きしても?」
「あ、ああ……母上――アルネイアは数年前から父上を暗殺するつもりだったようです。そしてその頃からシェルノの研究を秘密裏にオフィ-リアスに流していたと」
「…………」
「理由は……良くある話ですよ。僕を王にしたかった、と。オフィ-リアスと連携して王国を手に入れるつもりだったそうです」
それはまた良くある話だ。
別の王妃の子である第1王子ではなく、自身の息子を王位に就かせて権力を手に入れる。
本当に良くある話……だけど、グラリオンは本当のことを言っていないような気もする。
「信じられないと思いますが、私もこの話を事後――父上が刺された後にされまして……急いで父上の元へと向かった後、アルネイアは消えていました」
「ふぅむ」
なぜグラリオンには事前に伝えていなかったのか。
巻き込むつもりはなかった?
それとも……。
「これが私の知る今回のことの全てです。誓って、遠い異国にいる姉上は関与していない……主に誓って断言できます。ですので……」
「ほう!」
お姉さん?
お姉さんがいるんだ。へー……。
その時、なぜかアステラに肘打ちされた。なぜだ。
「兄上、無理な願いは承知の上。私を一兵士として戦場に出してください! 敵の1人でも道連れに――」
「ダメだ。お前が内通者である疑いを拭いきれない。それに何より……とにかくだめだ」
「……そう、ですか……」
死ぬ気だろう。
死に場所として、せめて敵兵を1人でも倒して、と願っているんだ。
「どうだ、イクラウス。元聖子として思うところは?」
「……正直よくわからない」
「…………」
「わからないけど……単純に王位を手にしたかった訳じゃないと思う」
「そうか?」
「うん。だって肝心のグラリオンさんが乗り気じゃなさそうだし。それに……」
「それに?」
「……アステラに会った時。優しい顔をしていたんだ。アルネイアさん」
ほんの一瞬だけど。
顔というか、目だけ。気持ち程度に。
やっぱりちょっと自信なくなってきた。
「……そうか。お前が言うなら、そうかもな」
「そうだよ、きっと。間違いない」
「まあ、国家反逆罪で死罪というのも間違いないんだが」
「おう……」
現実は非情である。
大丈夫、その時が来たら僕が優しく主の御許へ案内するから。
主はきれいな人も大好きだから。
「いてっ」
「…………」
再びアステラに肘打ちされたのだった。
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