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聖女から生まれました~母様に代わって聖魔法による慈悲と裁きを施しましょう。闇魔法?つ、使ってないよ?(洗脳魔法発動)~  作者: たゃんてゃん
第8章 王国と戦争

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第102話 利用される1歳児


 もうすぐ日が沈みきる頃。

 僕とロロップはグランデシャインの王都にたどり着いた。


「ひどい……」


 ロロップが力なく呟く。

 それもそうだ。王都の街並みは、前に来た頃の面影がない。

 王都を囲む城壁の一部が崩れ、その周囲の建物は破壊されている。

 多くの人々で賑わっていたが、今は兵士が走り回っている。


「今は戦闘はしていないみたいだね」

「うん……」


 誰かが戦っている様子は見られない。

 敵は夜を前に1度退いたと言うことだろうか。

 しかし王都内で戦いがあったことは、至る所にある兵士の屍が物語っている。


「……城に行こう」

「うん」


 王都の端からでも見える城はいまだ健在で、最悪の事態は免れていることは見て取れる。

 僕らの助けが間に合えばいいが。


「……すごい人だ」

「ぴょん!」


 城の内部には、至る所に人が溢れていた。

 門から入ってすぐにある訓練場でそのまま寝ている人たちが見える。

 どうやら城の内側に人々は避難していたらしい。


「あ、あの人は!」


 そこでようやく知っている人に出会う。

 緑髪の女性、シェルノのお母さんだ。

 訓練場の近くで兵士に色々指示を出しているのが見える。


「グラシェルノさんのお母様!」

「あ、えっちな子だ」

「今そんなこと言ってる場合ですか!」


 そしてえっちではない。

 純粋無垢な子どもに何を言っているのだろうか。


「出して」

「まだ出ません!」

「そっちじゃなくて、女神さまの方」


 彼女の視線の先には、国民の方々。

 みんな不安そうな目をしている。家族と思われる人たちは肩を抱き合い、励ましあっている。

 そうだ、僕はこのために来たんだ。


「『聖女御座す(フルルーチェ・)安息の地(レストリア)』」

「ついでに気の利いた言葉を1つ」

「…………」


 無茶ぶりである。

 状況すらわからない。

 何より僕は0歳――いや、1歳になったんだ。何でもできる年齢だ。

 光るレストリアに驚いている人たちに向かって励ましの言葉を振り絞るくらいできる。



「みなさま! グランデシャイン国民のみなさま! お辛い思いをしているかと思いますが、安心してください! 主は我々の味方です!」

「あれは……?」

「あの子が……『悪魔の子』……?」


 しかし様子がおかしい。

 みんな戸惑いの目を、それどころか敵意を向けてくる人もいる。

 そして『悪魔の子』という言葉も。


「みなさん、静粛に! ここにいらっしゃるのは神の使徒イクラウス様です! 主が我々に遣わされた希望です!」


 グラシェルノのお母さんが、さっきまでボーっとしていたとは思えない声で、国民に呼びかける。


「ふざけるな! そいつのせいで戦争になったんだろうが!」

「そうよ! 何が神の使徒よ! 悪魔の使徒でしょう!」


 しかし国民の怒りは収まらない。

 徐々にその怒りが広がっているようにも見える。


「その通りですね」

「な……み、認めるのかよ……」

「ほ、ほら……!」


 認めるのかよ。

 僕もびっくりだよ。


「これは戦争です。正しき使徒様をお守りする聖戦です! 悪に落ちた教会から使徒様を守る聖なる戦いなのです!」

「え?」

「罪のないあなた方を傷つけたのは誰ですか! 正義を(かた)る教会と帝国、それに勇者ではないですか!」

「そ、そうだが……」

「そして! 我々を癒してくれるのは誰ですか! この温かい光をもたらしているのは誰ですか!」

「……イクラウス……さま……」

「私たちは屈しない! 真の悪の手先などに! 絶対に!」


 力強い宣言の後、肩の力を抜いたように彼女が続けた。


「それに、彼がいる以上みなさまの安全は保障されたようなものです。安心してお過ごしください」


 ニコリと国民に笑いかける彼女。

 やはり一国(いっこく)の王妃様なのだと思い知る。

 ここにいる国民の人たちも、安心したような顔が増えたみたいだ。


「行きましょう、イクラウス様」

「はい」


 彼女に手を引かれ、王城に入る。

 そしてつながれた手から、少しずつ伝わってくるものは――。

 脱力。


「ふぃー。ほめて」

「……え?」


 王城内部も人が溢れていたが、1階までらしい。

 2階からはさすがに王族や家臣の人しかいない様子。

 そして国民の姿が全く見えなくなったとたん、彼女――グラシェルノのお母さんがしなだれかかってきた。


「民の不安を払拭するための演説。頑張った。ほめて」

「あ、はい。よくできました」

「ん~……手つきがえっち」

 

 友達の母親に対してこれでいいのだろうかと思いつつ、頭を撫でる。

 えっちと言われることも、何だかやましいことをしている気がして逆にえっち。

 とてもえっち。


「イクラウス様!」

「やばっ!? アステラ!?」

「イクラウス様! イクラウス様ぁーーー!!!」

「アステラ! 無事でよかった……!」


 飛び込んできたアステラを受け止め――ようとしたが倒れる。

 その直前でロロップが何も言わずに支えてくれた。


「ありがとう、ロロ――」

「ぴょん」


 その目はとても昏い目だった。

誤字脱字、感想などいただけたらうれしいです!

★★★★★いただけたら泣いて喜びます!!


明日も18時20分頃投稿します!

よろしくお願いします!

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