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ファンタジア・サイエンス・イノベーション〜第10王子:異世界下剋上の道を選ぶ〜  作者: 国士無双
第二部 【本論】第10王子、異世界下剋上の道を選ぶ
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【第9王子vs.実験部編】目には目を、歯には歯を、第9王子にも爆発を!

 俺は学校指定の学ランを部室に置いてきた。


 その代わり、白衣を纏い、オオバコさんが入学祝いで用意してくれた防護メガネを装着する。


 一呼吸置いて、例の研究施設内に入る。


(厳重に管理されているはずなのに、鍵なしで入れる? なるほどなぁ〜)


 姑息な第9王子のことだから、強引に鍵を手配してこじ開けたのだろう。


 その王子との集合場所は、研究施設のプール場だった。

 

 仄暗い廃墟と化した空間で、かつての活気を失っている。


 もし取り壊しが決まっていなければ、今頃の俺は、この研究施設でフラスコを手に持ち、実験に没頭していたのかもしれない。


(ここで研究活動ができていたら、もっと違う未来になっていたのかもしれない……)


 だが、運命の悪戯のせいか、理事長に出会った俺はザダ校内の予備調理室を実験研究室兼部室として自由に使えるようになった。


 我ながら、幸運だと思った。

 

 部員を五人確保できたし、部室で「女神様!」と魔法を唱えるだけで、すぐにお望みの実験器具が現れるのだから。


 自由に実験できる環境に、当初は息を呑んでいた。


 まるで、誰かが「夢を追いなさい」と背中を押してくれている気がした。


 だからこそ、俺には叶えたい夢がある。


 研究所を設立するという、前世では叶えられなかった夢。


 叶えるためにも、今回の対戦相手に負けるわけにはいかない。

 

 プール場に辿り着くと、すでにプールの水が満タンになっていた。

 どうやら、第9王子が前もって、魔法で水を溜めていたようだ。


「よぉ、第9王子様」


 俺から話しかけた。もちろん、煽り付けて。

 

 すると、第9王子は怒気を含んだ声で叫び出した。


「目障りなんだよぉ! 俺のケイを勝手に部活動へ参加させたり、ダチ同士で囲ったりしてよぉおおおお!」


 ()()ケイ?


 もしかして、コイツは……。


「ケイのことが好きってわけか?」

「さっきからその言い方、ウゼェよ! 俺はな、ケイが他の奴らと話してるのを見るとイライラする! アイツは人間で、元々、身分が低い女だった。俺のもとで監視されとけばいいんだよッ!」


(うわぁ……ドン引きだわ。自分より立場が弱いから、権力で抑え込もうっていう魂胆か? 最低だな)


「ケイのこと、何も考えていないんだな。そういうの、世間では()()って言うんだけど?」

「チッ!」


 第9王子は舌打ちをしたと同時に、なぜか、背中から刺々しい黒い羽根が生え始めた。


(悪魔の羽根か? 初めて見た! ここって……本当に異世界なんだな! 一応、確認してみるか?)


「その羽根、本物? それともコスプレ?」


 前世で悪魔といえば、研究室のハロウィンイベントで悪魔のコスプレをした女子大生が羽根を付けていたのを思い出したから、率直に聞いてみた。


「馬鹿かよ! 知らねぇのか! 悪魔は感情が溢れ出ると、背中に羽根が現れるんだよ! ちくしょう、お前と話すのなんて非効率だ! 死ねぇええええ!」


 第9王子が魔法を放った。


 ピシャァアアアアアアア――!


 水中から大量の魚が現れた。

 

 どの魚も鋭く尖った牙を持っていて、刺されたら、致命傷を負うに違いない。


 逃げたいけれど、一斉に俺の方へ向かって、大群が襲撃してくる。


 怒涛の勢いで、俺の全身が硬直した。


(やばっ……! 戦闘向けの魔法なんて、俺は何も覚えていない。完全に詰んだわ……これ)


 俺は覚悟を決めた。


 あぁ、痛いんだろう。


 死ぬんだろうな……。


 アンズやサラたちと、もっと遊んでおけばよかったなぁ。


 後悔を胸の内に抱えながら、俺は目を閉じた。


 そうだ、前もって。


 予告と感謝の挨拶をしておこう。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

【ファンタジア・サイエンス・イノベーション〜第10王子:異世界下剋上の道を選ぶ〜 第二部完!】


【ご愛読ありがとうございました。また異世界転生したアダム・クローナルを応援してください――】


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ありがとう、みんな……。


 ――G G G――


(ん? ? ?)


 ――G G A――

 

 なぜだろう。


 さっきから、グリシンのコドンが浮かぶんだが……。


「俺は、生きてるのか?」


(あれ、普通に話せるぞ?)


 次に目を開け、自分の体を見てみる。


 俺は死んでいない。

 

 むしろ、信じられないことに、誰かが俺の体にバリアを張ってくれたようで、無傷だった。

 

 すでに魚の大群はプールサイドで横向きに気絶していて、動く気配すらなさそうだ。

 

 攻撃を仕掛けてこないのを確認してから、第9王子の方に目線を向けたところ――。


「何をしたんだよ! どうして、俺の攻撃が効かない! こんなの初めてだぞ?!」


 ヤツはとんでもなくアホ面をしていた。


 だが、諦める気配はないらしい。

 

 もう一度魔法で魚の大群を引き寄せ、俺の方へ仕掛けてきたが、攻撃する直前、俺の体に突如バリアが発動した。


(なんだこれ……? もしかして俺、攻撃を無効化できる能力を持ってたのか?)


 理屈が分からないが、攻撃を受けることもなく、むしろ、バリアで跳ね返った魚の大群は第9王子のところへ戻っていく。


「うわぁあああ!」

 

 第9王子は逃げ遅れたのか、自分の魔法で召喚した魚たちに噛まれたようで、何ヶ所か出血していた。


(万が一、肉弾戦になったら「サーセン!」って言って逃げるつもりだったけれど……)


 女神様が授けてくれた奇跡なのかもしれないが、鉄壁の守りで攻撃を防げるのなら、俺の方から仕掛ければ良い。


 何をするかって?


 俺が初めて、異世界に来て行った実験は『爆発』だった。

 

 じゃあ、初めてこの学校で行う実験は?


 無論、『()()』だ!


 事前に用意しておいた空瓶を白衣のポケットから取り出し、天を仰ぎながら高らかに唱えた。


「女神様! 水と共に踊る、例の金属――『No.11』を!」


 声に出した途端、瓶の中からお望みの金属が現れた。

 

 封を開け、たっぷりと水が張られた実験施設用プールに『No.11』を落とす。


 ドカァアアアアアアアアアン! ! !


「ァアアアアアアアアアアアア! ! !」

 

 大爆発に、第9王子は発狂する。


 悲痛な叫び。


 だが、俺は助けない。

 

 全てはお前が蒔いた種――()()()()ってやつだ。


「女の子たちを怖がらせたお前なんか、俺だけでなく、女神様も絶対に許さないだろうよ――」


 らしくなく、少年漫画のヒーローみたいなセリフを言ってみた。

 

 最後に挨拶も添えて。


「さようなら、俺は女の子たちを助けに行く」

<余談>

第9王子のフルネームはメタノ・ジェラル。

「嫉妬」→ジェラシー→ジェラル。

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