表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファンタジア・サイエンス・イノベーション〜第10王子:異世界下剋上の道を選ぶ〜  作者: 国士無双
第二部 【本論】第10王子、異世界下剋上の道を選ぶ
44/186

【第9王子vs.実験部編】白馬の王子様は女の子 ※アンズ視点

【※注意】主人公アダムではなく、アンズちゃん視点です。

 今日の午後、保健室で健康診断があるはずだったのに、なぜか、私とケイちゃん、そしてBクラスの女の子の3人で男子更衣室に閉じ込められていた。

 

「私のせいなんです……! この黒髪、今の国王様に似ているから、勘違いされてしまったのかも。まさか、第一王女だと思われて、監禁されるなんて……。しかも、自作の同人誌を落としちゃった……もう、死ねる……」


 Bクラスの女の子が後悔の言葉を呟きながら、肩をピクピク震わせて、号泣している。

 

 パーカーを着た彼女は、真面目な性分なのか、恐怖を感じながらも、肩身離さずに教科書を握りしめていた。


「大丈夫だよ! 泣かないで。でも、どうしようかな?」


 依然として、絶望的な状況だった。


 外鍵が掛かっているせいか、更衣室のドアを開けることもできず、外へ出られそうにもない。


 どこかに鍵が落ちてないかと探してみたところ、ロッカー近くの椅子にて、不気味な悪魔の人形が横向きに転がっていた。


「ちょっと! この人形、顔色が緑なの? 体調が悪そうね〜?」


 ケイちゃんが正直に思ったことを言いながら、人形を持ち上げたところで――。

 

「逆らうナ、人間!」


 突然、()()()低い声が響いた。


「しゃ、喋ったわねっ?!」


 ケイちゃんが大急ぎで手元から離したのに。


 その人形はロッカーに跳ね返った直後、ケイちゃんの背後に移動し、あろうことか、ケイちゃんのスカートを捲り始めた。


「王女なのに、幼稚なクマちゃんのイラストが描かれたパンツを履いているナ!」


 ベラベラと喋り出す人形――もしかしたら、裏で誰かが操作しているのかもしれない。

 

 かといって、許可なく、ケイちゃんのパンツを覗き見するなんて……信じられない!

 

「こいつ! この変態野郎!」


 無論、ケイちゃんは怒声を上げて、殴り掛かる。


 しかし、その一撃はあっさり躱されてしまった!


 むしろ、人形の姿がだんだんと大きくなっていく。


(あれ? 下手したら、アダムより大きいんじゃない?!)


 ――ガシャーン!

 

 巨大化した人形に足を掴まれたケイちゃんは、体勢を崩してしまい、そのままロッカーの方へ吹き飛ばされてしまった。


「ケイちゃん、大丈夫っ!?」

「えぇ。やっつけるから任せなさいっ!」


 うつ伏せに倒れた状態でも、諦めずに行動を起こそうとしたケイちゃんだが、何かに勘づいてしまったらしい。

 

「最悪だわっ! 今日の授業で3回も唱えてしまったから、魔法自体が使えないわっ! アンズ、何かできないかしら?!」

「ケイちゃん! 杖を教室に置いてきちゃったから、私も魔法が使えないっ! どーしよう!」


 私にとって、人生で二度目の誘拐。


 一度目はアダムが助けてくれたけれど、今回はいない。


 それだけでも、とっても心細いのに、杖がないから、そもそも魔法が使えない。


(うわぁー! マズイよー! ! !)

 

 私とケイちゃんが焦っている一方で、Bクラスの女の子は恥ずかしそうに手を上げながら、人形に懇願した。


「ごめんなさい。どうしても、我慢できなくて……。トイレに行かせてください!」

「排泄したいんだナ! 許可する!」


 すぐに魔法を施したのか、カチャッとドアの鍵が開いた。


(トイレに行くのはオッケーなの?!)


 意外と、この人形……、融通が利くのかもしれない。

 

 私とケイちゃんもトイレに行ってそのまま抜け出せないかなと、淡い期待を抱いたものの、すぐに打ち砕かれてしまった。


「条件がある! 一人で行ってこい! 残った二人はお前が戻ってくるまで、更衣室で監禁しているからナ!」

「わ、わかりましたっ……!」

 

 Bクラスの女の子は大急ぎで消え去ってしまった。


 そして、五分経過して――彼女はちゃんと戻ってきた。

 

 だけど、さっきとは打って変わって、パーカーのフードを深く被り、顔を隠していた。


 案の定、人形が問い詰める。

 

「なぜフードを被っている?! 何か企んでいるのか!」

「ぼ、あっ、私、泣きすぎて……ひどい顔をしているから……」

「アッハッハ! おねしょの後は泣くなんて、赤子のようだナ!」


 蚊の鳴くような声で答えたBクラスの女の子に対し、すぐさま、人形は嗤笑する。


(はぁ……この環境、地獄だよ! ケイちゃんはどうかな?)


 視線をケイちゃんの方へ向けたが、彼女は心身ともにダメージを受けているせいか、すぐ動けそうにない。


「おいおい、どこを見ている?」


 目を離した一瞬の隙に、何故か、私の目の前に人形が立っていた。


「キャァアアア――!」


 突然の出来事に驚いた私は、金切り声を上げたまま、しゃがみ込む。

 

「おぉっ。この娘、なかなか綺麗だナ! 接吻(チュー)してもいいかもしれないナ?」


(き、気持ち悪い……! 距離が近すぎるし、勝てる気がしないっ……)

 

 喉が裂けてもいい。


 私は声を張り上げて、助けを求めた。


「助けて! 助けてっ――! 私たちを助けてください――! ! !」

「ウルサイ! どいつもこいつも生意気だナ! 絶対に接吻(チュー)してやる!」

 

 怒り狂った人形が押し倒すように、私に飛びかかり、私の顔を両手で包み込む。


(最悪! ファーストキスは好きな男の子としたかったのに!)


 力が強く抵抗も出来ない私は覚悟を決めて、目を閉じ、キスを受け入れることにした。


(本当は……アダムとしたかった……)


 シャキ――ン!


「ギエエエエエ!」

 

 更衣室内で、風を切る音と同時に、悲鳴が響き渡る。


(えっ? 何……?)

 

 気になって、私は目を開ける。


「あれ?!」


 なんと、目の前にいた人形の顔が真っ二つに斬られていて、見る影もない姿に。

 

 直後、パーカーを被っていたBクラスの女の子が迷うことなく、人形の背後から剣術技を繰り出していく。


 終いには、彼女は自身の剣で男子更衣室の窓ガラスを割った。


「急いでっ! とにかく、この窓から逃げてっ!」と叫びながら。


「そうね! アンズ、逃げるわよ!」

 

 立ち上がったケイちゃんが、私に救いの手を差し伸べる。


「うん! 一緒に逃げよう!」

「させるカァ――!」

 

 さっきからタチが悪い!

 

「全員許さナ〜イ!」と捨て台詞を吐きながら、人形は尖った爪で、私の顔を斬ろうとしていた。


「いやぁ……!」

 

 またしても、私は覚悟を決めることに。


 ッシュ――……!

 

 だけど、痛みを全く感じない。


 でも、この斬れた音って……。


「あぁっ! 大丈夫?」

「う、うん……」

 

 なんてこと……!

 

 私の代わりに、Bクラスの女の子が斬られてしまった。


 彼女が斬られた箇所は胸あたり。


 血は出ていないけれど、パーカーが破けていて、胸の谷間が見えている。

 

 なのに、彼女は怯む事無く、猛然と立ち向かう。


 私だけでなく、ケイちゃんも、彼女の圧倒的な強さと気迫に息を呑む。


 人形から強烈な一撃を受けたのにも関わらず、彼女は人形の攻撃を避けながら、何度も剣で斬り返していく。


 斬り返しのスピードが速すぎて、何が起きているのか目視ではわからない。


 けれど、とうとう決着がついた。


 彼女の矢継ぎ早の攻撃で、忌々しい人形が、跡形もなく、粉々に砕け散った。


「やったねっ!」

「――みんな無事か?!」

 

 私が嬉しくて声を出したタイミングで、待ちに待っていた人物が現れた。


「アダム……!」


 アダムの顔を見た途端、私は涙が溢れてしまった。


 アダムのところへ、すぐに行きたい!


 けれど、足がすくんで、一歩も動けない……。


「うぅっ……ごめんね。後で追いかけるからぁ……えっ?」

「アンズ、俺が運ぶから、気にしなくていい」


 なんと、アダムが私をおんぶしてくれた。


(アダムの背中、温かいや……って、嘘?!)


 私はさっきと違うドキドキを味わっていた。


 私がいつも尊敬している――カッコよくて、天才で、大好きなアダムが、私のことをおんぶしている。


「アダム、重たいかも」

「ううん、そんなことない」

「ちゃんと来てくれてありがと……」

「あぁ、遅くなってごめん」


(やだ……お気遣いまで?! 紳士的なところも好き……!)


 私は甘酸っぱい思いを心に描きながら、アダム、ケイちゃんとBクラスの女の子の4人で、部室へ向かった。


 * * *


 部室に着いた私たち実験部。

 

 そして、Bクラスの女の子。

 彼女は、さっきの剣術で体力を消耗したのか、「はぁ……はぁ……」と息切れしている。

 

 ケイちゃんも、私と同じように、彼女のことが気になっていた様子。


「さっきは怖かったわね? でも、安心して。ここはアタシたちの部室よ。お顔を見せ――えぇっ!」


 彼女のフードを強引に外したケイちゃんが奇声を上げる。


「ど、どういうこと……?!」


 私も彼女の顔を見て、ありのままの感想を伝える。


 なぜなら、目の前にいるのは、同じ部員で()()()()のサラ。


 男の子のサラが、女子生徒の服を、堂々と着こなして……って、大変……!


(む、胸があるってことは、サラは女の子なの?!)


「あなた、女の子だったのね?! 胸の()()がしっかり()()じゃない!」


 私が聞く前に、すでにケイちゃんが代弁してくれた。


「あっ……うぅ……お願い……誰にも言わないで……!」


 ずっと張り詰めていた緊張の糸がぷつりと切れてしまったのか、サラは顔を隠して、涙を流す。


(そっか、何か事情があるんだよね?)


 私は何も聞かず、サラの隣に行き、彼女の背中をさする。

 

「サラ、ごめんなさい! 泣かせるつもりはなかったわ!」

「ぁっ……ぼく……」

「本当にごめんなさい!」

「っ……」


 ケイちゃんが謝っても、サラは泣き止まない。


 私も何て言えばいいのか、言葉が見つからない。


「今回は完全にケイが悪い。確認もせずに、パーカーのフードを外したのだから……」

「違うわ! アダム、あんたが悪いわよ? あんた、全く怪我していないじゃない?! サラは勇敢に戦った! アタシはサラの味方よ!」

「それはそれ。普通、『外していい?』って、聞くけどな」

「はぁ?!」

「うぅっ……」


 あらら、大変!

 

 アダムとケイちゃんは口喧嘩をしているし、サラは泣き続けている。


 だからこそ、私は私ができることをしよう!

 

「ねぇ! みんな無事だったんだし、結果オーライじゃないっ?!」


 シーン――……。


 全員が、ポカーンとした顔で、私を見つめていた。


(あー! 静かになっちゃった……?!)

 

 だけど、ケイちゃんが「あっはっは! ウケる! アンズのそういうところ、アタシは好きよ。貴女の言う通りだわ〜」とお腹を抱えていた。

 

 サラも「アンズちゃんの言う通りだね……」と自身の指で涙を拭い始める。


「よく頑張ったよ、俺たち。アンズ、ありがとう」


 最後に、アダムが私の方を向いて、微笑んでいた。


(アダムって笑えるんだ……!)

 

 今日は誰もが辛い思いをしたけれど、それでも、お互いに助け合って、なんとか乗り越えることができた。


 私たちはサラの秘密を共有した。

 

(どんな秘密を抱えていても、私はサラの味方だからね……?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ