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ファンタジア・サイエンス・イノベーション〜第10王子:異世界下剋上の道を選ぶ〜  作者: 国士無双
第二部 【本論】第10王子、異世界下剋上の道を選ぶ
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【第9王子vs.実験部編】第4王女と第10王子じゃだめですか?〜それってあなたの持論ですよね〜

「アダム、あんたも会議に出る?」

()()?」


 突然、俺は第4王女であるケイから会議に参加するのかと質問された。


(一体、何の会議だろうか?)

 

「これさ、下駄箱の中に入っていたの! アタシとあんたの名前が載ってた。王族子女会議(おうぞくしじょかいぎ)だって」

()()()()()()? その会議名、初めて聞いたけど……?」

「でも明日の放課後って書いてあるわよ? あんたも出るでしょう?」


 彼女が持っている招待状を覗き込んでみたら、会議の日程と開催場所が記載されていた。

 あんまり遠出したくないから断ろうと思っていたけど、『ザダ校大会議室で会議をします』と書かれてあった……もろ、この学校である。


「アタシ、一人はちょっとさ……」


 どうやら、ぼっち参加は嫌らしい。

 

 俺はあんまり会議が好きではない――ただ時間が失われるだけだからだ。でも、彼女から頼まれるとは思わなかったため、「まぁ……俺はなんも準備しないけど、それでいいんなら出るよ」と当たり障りのない回答をした。つまり、「やる気はないけど、出てもいい」という意味だ。そんな俺の偏屈な態度でも、ケイにはちゃんと伝わったらしい。


「一緒に出てくれるってことね! あんたがいてくれるだけでも助かるし、せっかく参加するんだから、準備して行くわ! 明日よろしくね!」


 ケイは最後に「ありがと!」と言い残し、そそくさと女子寮へ帰っていった。


 ケイはなんやかんやで意外と真面目な性格だ。この後も、机に向かって資料作成に取り組むのだろう。

 一方の俺はというと、部室で道具を並べ、自由気ままに実験を始めていた。

 窓から差し込む夕暮れが、試験管の中で揺れていた。

 

 翌日。

 放課後になり、終礼が終わった後、ケイは大急ぎで俺を引き連れて大会議室へ向かっていた。


「ここが入口よね? 変ね、入れないじゃない!」

 

 ケイの言う通り、何故か鍵が掛かっていて、まだ入れなさそうである。


「しまった、15分前だった! アタシ、この会議に初めて参加するから、緊張するわ……」


 ケイは手元に分厚い資料を持っていた。

 昨日から今日にかけて、会議用に資料を作っていたのかもしれない。


(うーん、不思議だ。やっぱり、王族子女会議なんて聞き覚えがない……。本当にこの会議は行われるのだろうか?)


 大人しく待っていたところ、俺たち以外にも誰かがやってきたようだ。


「あれ……人間が、なんでこの会議に来てるんだよ?」

 

 人を小馬鹿にした態度で、ある男が話しかけてきた。

 

「メタノ! 今日は会議があるってこの招待状に書いてあったのよ!」とケイは招待状を直ぐに見せた。


(なるほど。コイツがケイに嫌がらせをする第9王子か、感じ悪いな……)

 

「残念でした〜。その招待状、パチモンじゃない? この王族子女会議に出られるのは、1から9位までの王子と、1から3位までの王女だけ。人間が出しゃばるなよ〜」

「なんですって?!」

「それはこっちのセリフだ、消えなよ」

 

 誰が見ても一目でわかる――喧嘩が始まった。

 ケイもキレそうになっているけれど、参加できない悔しさを噛み殺すことで精一杯のようだ。

 赤く充血した目がその気持ちを物語っていた。

 

 彼女の姿を見て、放っておくのは気の毒だと思い、俺は第9王子から聞いた話について、正直な感想を述べることにした。

 

「ふぅーん。つまり、第9王子殿は今日開催される王族子女会議のメンバーの中では、()()()()()ってことなんすね。頑張ってください」

「おいッ! 馬鹿にしてるのか?」

「いいえ、あなたの言葉をそのまま言い換えただけです」

「何を! 人間の分際でッ!」

「ん? それって、あなたの持論なのでは?」

「なんて弁が立つんだ……クソ!」


 ケイは、いつもと違う俺の饒舌トークに戸惑ったのか、ポカーンと口を開けている。

 

 俺が第9王子と討論を続けようとしていた最中、他の王子が声をかけてくれた。

 

「あれ……どうしたんだい?」


 キリリと引き締まった茶色の瞳に、オールバックにした茶髪で堂々たる王子――大柄な体格と相まって、自然と目を引かれる。

 

「うす」と、その王子と一緒に……なぜかニコがいて、俺たちに挨拶してくれた。ニコは実験部の部員だし、バイクを見に行った仲だ。「うす」と挨拶を返す。「ニコ……あんた?!」とケイはニコが現れると思っていなかったらしい……驚いている。


「こいつら勝手に、今日の会議に出られると思ってきたらしいですよ。第1()0()王子と第4()王女なのに」と例の第9王子が俺とケイをゴミを見るような瞳で睨んでいた。

 

 一方、ニコはその話を聞いて疑問に思ったようで、スマホを取り出し、とある画像を俺たちに見せた。そして、第9王子を指差した。


「ん? それは違います。第9王子が作った偽物の招待状をケイたちは受け取って、ここにきたんだと思います。会議用フォルダの中に、()()()この王子が作っていた書類があって……気になったので写真を撮ってきました」


 ニコのスマホ画面を見ると、【ファイル名:招待状(ウソなので開かないで下さい)】、【作成者:メタノ・ジェラル】と書かれてあった。


 呆れるほどのリテラシーの低さだ。


(第9王子、頭悪くないか?)


 さすがにこれでどちらが悪いのか明らかだ。

 例のガタイの大きい王子は第9王子のことを説教し始めた。

 

「そうか……! メタノ、君は大嘘つきだ。そういうの良くないぞ?」

「わかりましたよ〜! 今回は冗談(ジョーダン)でやったんですよ、第2王子様。次からは絶対にしないんで!」


 第9王子は反省する素振りも見せずに、大会議室内へそそくさ入っていった。

 

 その様子を見て、「ハァ〜」とため息をついた第2王子は、俺たちの方を向いて、頭を下げた。

 俺はこんな上位の第2王子様が頭を下げるなんて、ある意味、これも事件じゃないかと思った。


(謙虚すぎるな……?!)

 

「いやいや、頭を下げちゃダメですって! 第2王子様!」とケイも慌てた様子だ。

 

「すまなかった、二人とも。ここまで来させてしまって。代わりに私が会議内容をまとめておくから、あとで議事録(ぎじろく)を渡すよ。後、君はケイさん? だっけ。手元に持っている資料をお借りしても良いだろうか? わたしからみんなに、会議で情報共有しておくさ」


 そう言って、第2王子はケイに右手を差し出した。


「えっ……いいんですか?! ありがとうございます!」とケイは元気の良い声で手渡した。


(落差があるな……。でも、この王子様はめちゃめちゃ善人だ!)


 俺が「おぉー」と感心していたところ、第2王子の方から優しく話しかけてくれた。


「君は……アダムくんだっけ? 初めまして。わたしはダン・オーガーだ。わたしの父から、君は最年少で研究取扱者の資格を取ったと聞いた。未来のために、これからもよろしくな」


()()()()』の名前を聞いて、研究取扱者試験の審査員だったバグさんを思い出した俺は、やはり息子さんだったのかと納得した。

 

「あっ! そうでしたか……アダム・クローナルです。こちらこそよろしくお願いします」


 お互い、自己紹介も兼ねた挨拶をした後、握手を交わす。


 会議に参加はできなかったけれど、第2王子の神対応で『結果オーライ!』と思うことにした。

 そもそも王子自らが議事録を作ってくれるなんて……優秀過ぎる。

 前世でこういう仕事のできる上司や部下に会いたかった……。


「じゃあ行こうか、ニコ」と言って、第2王子はニコと共に、会議室の中に入ろうとしていた。

 

 だが、ケイは半信半疑のまま、ニコの背中を見続けている。

 

「そうだ。ニコは第6王子なんだよ。後日作成した議事録でわからないことがあれば、私やニコに聞いてくれ。では」


 第2王子はケイの心許ない様子を見て、しっかり声掛けを済ませてから、会議室に消えていった。


 一般科の生徒に俺たち以外にも王族がいるとは思っていたが、まさか、同じ実験部のニコが第6王子だったとは。

 

 しかも、一桁台!


 俺はいいことを考えた……。王位戦、ニコにも出てもらおうかな?

 

 都合の良いことを頭の片隅に入れつつ、空いた時間で今日も実験しようと思っていたのだが……ケイに引き止められた。


「はぁ〜。会議の参加権がないだけでも驚いたのに、ニコが第6王子だったなんて……もう頭がついていけないわ。仕方ないわね。ところで、あんたは悔しいと思わなかったの? 今の出来事!」

「悔しいって感情は、一切ないな。会議なんて非効率過ぎるから、俺は興味ない。会議に出るぐらいなら、実験の試薬を作った方が楽しい。ニコも会議に興味ないタイプだろうから、今日の会議に出席するのは……意外だと思った」

「さすが研究オタク! あんた、本当にブレないわね。じゃあ、今日はこのままアンズのお店に行きましょう!」


(えっ、俺……部室に行こうと思ってたんだけど)


 断ろうとしたが、ケイがまた奢ってくれるそうだ。

 しかも、今日はアンズがバイトでコーヒー屋さんにいるらしい。


 それなら話は別だ。俺たちはアンズが働いている職場へ向かった。


「いらっしゃいませー!」

 

 アンズは笑顔で業務に励んでいた。


「アンズ〜! 頑張ってるじゃない? ホットコーヒー2つと、アダムが好きそうなクッキーを頼むわ」

「ケイちゃんに……アダム?! なんで二人とも、ここにいるのー?」


 アンズは俺たちの注文をレジで入力しながら、目を丸くしている。


「今日の会議、本当はなかったのよ〜! 例の第9王子に、()の招待状を渡されたの」とケイは腕を組んで、ため息を吐く。

 

「辛かったね……って、なんなの、その王子! 悔しいから、私の差し入れでクッキー以外に、二人分のケーキをサービスしとくね。ゆっくりしていってね!」


 一瞬、アンズは怒っていたが、いつもの愛嬌のある顔で俺たちに商品を渡してくれた。

 

(珍しい、アンズが怒った……。でも、すぐに表情を変えられるなんて、さすがだ)


 商品を受け取った後、アンズの姿が見える席に座る。

 

「アンズが怒ってるところなんて、初めて見たかも」とケイに本音を漏らしていた。

 

「そうよね〜。でも、アタシは嬉しいわ。こんな素敵なお友達に出会えてね」


 ケイもらしくない本音を俺に言ってきた。


 こうして、俺とケイはアンズのバイトが終わるまで、のんびり過ごすことにした。


 アンズが最後までバイトをこなしたのを見届けてから、3人でファミレスに行き、夜食を食べた。

 

 今回の夜食も無論――ケイの奢りだった。


 なお、食事中、アンズに「実はニコも王族だったんだ」と伝えたら、「嘘でしょー?!」と脱帽していた。

【余談】王子たちの名前の由来

<第2王子>ダン→ダントロレン(Dantrolene)

<第6王子>ニコ→ニコランジル(Nicorandil)

<第9王子>メタノ→メタノール (methanol)

<第10王子>アダム→アダリムマブ(Adalimumab)

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