8話
一体誰を信じればいいのやら・・・。
いままで師匠を信じてきたけれど、すこし不信感が湧いてきた。
教えてくれた情報は正しいように思うが、どうやら都合の悪いことは教えてくれていない。
異世界人だと教えてくれなかったのは結構ショックを受けた。
まだ隠していることが多そうだ。
師匠にもいろいろ事情があるようだから、仕方ないとは思うけど・・・。
かといって、ギルたちを信じるのも恐い。
どこかの国の隊長と兵士。
それぐらいの情報しかない。
次に誰かを信じて、不信感を持つような行動をされると精神的にキツイ。
自分がこの世界について分からないぶん、相手に対する精神的依存度が高くなってるような気がする。
いままで、充分時間があったのに、この世界で生きぬくことに必死になりすぎて、情報を仕入れるのを疎かしてしまった。
こういう時は、とにかく冷静にならないと。
自分が置かれた状況を客観的に考えないと今後危険な目にあうことになる。
どうやら、いつの間にか寝てしまっていた。
詩帆は重たいまぶたを開け、周りを見た。
辺りは日が沈み、暗くなっていた。
この時期の夜は少し肌寒いはずだ。
なのに、寒さを感じない。
さらに、体の右側が少し温かい。
そう、人肌くらいの温度だ。
そっと横を見てみると、ギルが座っていた。
しかも、体の右側に触れるくらい近くに。
怖い!!!!
いままで全然気配感じなかったよ!?
恐る恐る視線を上げ、顔を見ると目が合った。
「目が覚めたか?・・・急にいなくなったから心配した。あっちにテントを張ってある。行こう。」
詩帆の手をとり、ゆっくり立たせて歩き始めた。
どうやら、怒ってない?
勝手にどこかに行ったのだから、怒鳴られるぐらいはあると思っていたのに。
最悪、殴られ逃げないように縛られるくらいの想像も。
逆に心配させてしまい、申し訳ない気分になった。
2,3分ぐらい手を引かれながら歩いていくと焚き火が見えた。
その近くに人影が一つと、こじんまりとしたテントが張ってあった。
人影はおそらくあの兵士だろう。
こちらに気がついたのか、声をかけてきた。
「やっと見つかりましたか、よかったですね隊長。」
「ああ・・・。」
「あんたも勝手にどっか行ったらだめだよ。」
「ごめんなさい。」
「ほんとにもう・・・。隊長、半狂乱で暴れ回るからビックリしたよ。普段あんな冷静な人がああなるとは・・・。」
兵士の顔が引きつっていた。
・・・本当に?
ギルの顔に視線を向けると、目が合ったが頬を染め逸らされた。
「・・・それはお疲れ様でした。」
「ほんとにね・・・。まあ、そのお陰で晩御飯はこんなにいっぱいあるけどね。」
兵士の視線の先を追うと、猛獣の山ができていた。
全部、息絶えていて動かない。
「ただ焼くだけで料理とはいえないけどね、食べる?」
「ありがとうございます、いただきます。」
兵士は猛獣の山に近づき、適当にさばき始めた。
詩帆は焚き火の近くに近寄り、座った。
するとギルも付いてきて、隣に座った。
二人は話をすることもなく、ただ火を見つめていた。
「勝手にどこかに行ってすいませんでした。」
「謝る必要はない。・・・疲れていることに気づかなかった俺が悪い、すまなかった。」
「・・・。」
逆に謝られてしまった。
あきらかに悪いのは私なのに・・・。
異世界人にもちゃんと人権があるみたいだ。
奴隷のように使われると勝手に思っていた。
この人は私が異世界人だからといって、冷遇することはないのか・・・。
アザの持ち主はこの人でよかった、実際にアザはまだ確認できていないけど。
こんなに優しい人なら私を連れて行っても過酷な労働を強要することはなさそうな気がする。
少しの出来事でギルを信用するのは浅はかだと思う。
でも、少しは信用してもいいかもしれない・・・。