え?いつから?
あぁ、このセリフ。
この後に続くのは『嫌い』に属する言葉のどれかだ。
人の家まで押しかけてきてわざわざ言うセリフじゃないだろ?
だいたい。
なぜ、どうして?と思うくらい嫌われてる。
最初から、仲のいいときなんてなかったんじゃないかと思う。
近所だし?幼馴染の一人と言っていいとは思うんだけど。
特に何かした、とかじゃない。
何かする間もなく、嫌われていたんだから。
「悟っっ!!」
つい、一人の世界に入っていた俺。
不満だったらしい友子が襟元をグイッと引っ張りながら見上げている。
「あ・・あぁ、悪りぃ。でもさ、どうせ嫌いって・・・」
「好きなのっ!!!」
ほらなやっぱりだ。
「知ってるよ。嫌いなんだろ?・・・・って、え??」
今なんつった?
聞きなれない。いや、初めて友子の口から聞く台詞が飛び出したような?
「だからっっ!!好きだって言ってんのっっ!!」
「友子が・・・俺を・・・好き?」
顔を真っ赤にした友子が俯いて小さく頷く。
俯いたから顔が見えなくなったけど、耳が真っ赤。
フンワリとカールした髪の毛の間から見える耳は今にも湯気が上りそう。
っと、そんなことより。
この状況、どうするよ?
今までかなりの年数を『嫌い』という単語で表現されていた俺を今度は好きだと言った。
嫌よ嫌よも好きのうち。という言葉があるが、アレには当てはまらないくらい嫌いと言われ続けた気がする。
もしかして・・・冗談か?
同窓会で流すドッキリビデオの製作か?
何かたくらみがあるんじゃないか、という考えを捨てきれない。
だって、アノ友子だよ?
疑うなってほうが無理だろ?
結局、俯く友子を見つめながら思案しまくっていると、ポケットの携帯が震えだした。
「も・・・もしもし?」
相手は彼女。
そりゃそうだ。
約束の時間をすでに30分は過ぎてる。
さすがに心配してかけてきたらしい。
「あぁ、ごめん。ちょっとトラブルで・・・、え?いや大丈夫だから。ちょっと時間潰してて。うん、必ずいくから・・・」
すねた口ぶりながらも、待っていてくれる彼女。
電話を終えると小さくため息を漏らす。
「友子・・・」
名前を呼ばれてピクリと反応する友子。
とにかく今は時間がない。
この話は今度じっくり時間のあるときにでも聞くほうがいい。
「友子、俺さぁ・・・」
「悟なんか・・・大嫌いっっ!!」
目に涙をためて、真っ赤な顔をした友子が、俺を見つめてそう叫ぶと腹にグーパンチを食らわし、部屋を飛び出していった。
「・・・うぅ、いてぇ」
不意をつかれて、しかもいいところにパンチが入ったおかげで追いかけることすら出来ない。
やっと覗いた窓からは公園を突っ切る友子の姿が見えた。
いったいなんだったんだ?
結局、嫌いなんじゃないか。
やっぱ、同窓会のドッキリだな。
「危なかった」
とにかくみんなの笑いものになるのだけは避けられた。
約束の時間に1時間以上も遅れて到着した俺は、彼女に最近できたというケーキ屋さんのケーキ食べ放題で許しを得た。
幼馴染が突然家にやってきて、勝手に話はじめて・・・なんて彼女に言い訳した俺。
幼馴染てのは合ってるけれど、話の内容が内容なだけに言えない・・・。
その後も、買い物やら、映画やら。
彼女の行きたいところへ連れて行き、門限のある彼女の家へ送った。
けれど。
隣にいる彼女が話したり、笑ったりする姿を見ながらも、俺は友子のことが頭から離れなかった。




