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外れ職《錬金術師》だったので、世界の果てまで錬成する  作者: nosic


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第11話 白蝕獣

《魔鋼大角兎》を倒し、十分に休憩を挟んでから帰路についた。


行きより荷物はだいぶ増えている。目当てだった《魔鋼石》に加えて、《魔鋼大角》や魔核といったボス素材まで手に入ったし、シルフィアの《狂化》と《鎮心薬》についても実戦で確認できた。


RAGE70で《狂化》しても、《鎮心薬》を飲んでいれば俺を味方として認識したまま戦える。一方、解除後の身体的な反動までは消えない。


今後の課題は残ったが、初めての共闘としては十分すぎる成果だった。


あとは街へ帰ればいい。


――そのはずだった。


「……アーサー」


少し前を歩いていたシルフィアが、急に足を止める。


「どうした?」


「なんか聞こえない?」


言われて、俺も足を止めた。


洞窟を抜ける風の音へ意識を向けると、その奥に別の音が混じっている。


ぺた。


ぺた。


ぺた。


湿った何かが岩肌を這うような音。


しかも、一つではない。


壁。


天井。


いくつもの方向から聞こえてくる。


「……聞こえるな」


「やだなぁ、この音……」


シルフィアが大曲剣へ手を掛けた、その直後だった。


頭上で何かが動いた。


「シル!」


腕を掴み、こちらへ引き寄せる。


ほとんど同時に、俺たちが立っていた場所へ白い塊が落下した。


べちゃっ!


「うわっ!?」


「大丈夫か?」


「う、うん!」


すぐに距離を取る。


落ちてきたのは、小型の魔物だった。


白灰色の身体に、岩へ張り付くための短い四肢。目らしい器官は見当たらず、頭部の半分ほどを占める口だけが大きく裂けている。


一体目が身体を起こすより先に、二体目が落ちた。


さらに三体目。


天井だけじゃない。壁の亀裂からも、同じ魔物が次々と這い出してくる。


「なにこいつら、気持ち悪い!」


「噛まれないようにな」


「絶対やだ!」


飛びかかってきた一体へ、大曲剣が走った。


横薙ぎで一体目を斬り飛ばし、その勢いを止めないままシルフィアの身体が回る。返す刃で二体目を跳ね上げ、踏み込みながら三体目まで薙ぎ払った。


「えいっ! そこっ!」


巨大な大曲剣を振るっているのに、やはり動きが軽い。


刀身の重みを無理に止めず、その勢いごと次の踏み込みや回転へ繋げる。小柄なシルフィアが、自分より遥かに大きな剣と一緒に敵の間を踊っているようだった。


「わははっ! いっぱい来る!」


「楽しそうだな」


「だって弱い!」


余裕はありそうだ。


俺も道具袋へ手を伸ばし、《炸裂玉》を掴む。


投擲。


――バンッ!


炎を伴わない衝撃が炸裂し、数体の小型魔物がまとめて岩壁へ叩きつけられた。


「シル、RAGEは?」


「んー……34!」


「もうそんなに上がったのか」


「だっていっぱい倒したもん!」


この数なら当然か。


一体一体は大した相手じゃないが、シルフィアは倒せば倒すほどRAGEが溜まる。弱い敵が大量に押し寄せてくる状況は、《狂戦士》にとって思った以上に厄介なのかもしれない。


そう考えた時だった。


――べちゃり。


それまでとは明らかに違う、重い音が頭上から響いた。


俺とシルフィアが同時に見上げる。


天井に、巨大な白い何かが張り付いていた。


白灰色の巨体。


岩盤へ食い込む四本の脚。


異様なほど膨れ上がった腹部と、横へ大きく裂けた口。


見た瞬間、記憶のどこかに引っかかった。


――――――――――

【MONSTER:《白蝕獣》】

――――――――――


「アーサー?」


「……知ってる」


ただ、何だったか。


記憶を探るより先に、《白蝕獣》の口が開いた。


「避けろ!」


紫色の液体が飛ぶ。


シルフィアと左右へ跳ぶと、背後の岩肌へ液体が付着した。


ジュッ――!


白煙を上げながら、岩がみるみる溶けていく。


「うわぁ……絶対当たりたくない」


《白蝕獣》が天井を這い始める。


巨体に似合わず速い。


俺は《炸裂玉》を抜き、その前脚へ投げつけた。


――バンッ!


直撃。


一本の脚が弾かれ、白い体液が飛び散る。


「効いた!」


シルフィアが声を上げる。


その直後だった。


足元に転がっていた小型魔物の身体から、青白い光が浮かび上がった。


一つ。


二つ。


三つ。


さっき俺たちが倒した個体から次々と魔力が抜け、それらは全て天井の《白蝕獣》へ吸い込まれていく。


「……待て」


記憶が繋がった。


見ると、さっき《炸裂玉》で傷つけた脚が、ゆっくりと塞がり始めている。


「シル! そいつら、ちっこいの倒すな!」


「えっ!?」


振り下ろしかけていた大曲剣が急停止し、代わりに岩床を抉った。


「なに!? 急に!」


「思い出した。こいつら《白蝕仔》だ」


「はくしょく……こ?」


「ああ。《白蝕》っていうレアイベントだ」


魔力鉱山系のダンジョンで、極稀に発生する特殊現象。


普段は岩盤の奥に潜んでいる《白蝕仔》が大量発生し、魔力を含んだ鉱石を食う。体内へ溜めた魔力は、巣の中心にいる母体へ運ばれる。


そして一番厄介なのが、母体の近くで《白蝕仔》を倒した時だった。


「こいつらを殺すと、腹に溜めてた魔力が全部《白蝕獣》に戻る。傷も回復するし、その分だけ母体も強くなる」


「じゃあ……」


シルフィアが天井を見上げる。


《炸裂玉》で傷つけた脚は、ほとんど元通りになっていた。


「私、めちゃくちゃ倒したよ!?」


「俺もだな」


「先に言ってよ!」


「今思い出したんだ!」


さらに白蝕仔が押し寄せてくる。


今度は殺せない。


だが。


攻略法が分かっているなら、やりようはある。


俺は《炸裂玉》を抜いた。


「殺さなきゃいい」


「え?」


群れではなく、その少し手前へ投げる。


――バンッ!


衝撃だけが広がり、白蝕仔たちがまとめて奥へ吹き飛んだ。


ひっくり返った個体が短い脚をばたつかせているが、死んではいない。


「なるほど!」


「シルは本体を見ててくれ。こいつらは俺が押さえる」


「分かった!」


次。


道具袋へ手を伸ばすと、狙った場所に指が掛かる。


取り出し、投げる。


右から回り込んできた群れを壁際へ追いやり、続けて別方向へもう一発。


《百具操術》を取ってから、こういう連続した道具操作がかなり楽になっている。攻撃用に作った《炸裂玉》でも、直接当てずに衝撃だけを使えば、殺さずに群れを制御できる。


問題は。


数だ。


「アーサー!」


「右!」


三体の白蝕仔がシルフィアへ飛びかかる。


大曲剣を振れば殺してしまう。


シルフィアはぎりぎりで身体を捻り、一体を柄で弾いた。


だが、二体目が足元へ食らいつこうとする。


「もうっ!」


今度は避け切れない。


大曲剣が走り、一体を斬り飛ばした。


青白い魔力が《白蝕獣》へ吸われていく。


「RAGEは?」


「……61!」


もうそこまで。


《白蝕獣》から毒液が飛び、白蝕仔はまだ増え続ける。俺も《炸裂玉》で押し返しているが、全てを止め切るのは無理だ。


シルフィアも殺さないように立ち回っているせいで、いつものようには戦えない。


「68!」


長引けば状況は悪くなる。


白蝕仔を一体でも殺せば母体が回復し、シルフィアは戦うほどRAGEが溜まる。こちらが慎重に戦うほど、向こうには増援が増えていく。


《白蝕獣》が大きく口を開いた。


「シル、右へ!」


毒液が降る。


シルフィアが跳ぶ。


だが、その着地点には白蝕仔が三体いた。


「っ!」


一体を蹴り飛ばす。


二体目を大曲剣の腹で弾く。


三体目が腕へ飛びついた。


「シル!」


「大丈夫!」


振り払う。


大曲剣が反射的に走り、小型魔物が岩壁へ叩きつけられた。


青白い魔力が母体へ戻る。


「……72!」


シルフィアがこちらを見る。


「アーサー、どうする?」


《狂化》。


最初に浮かんだのは、それだった。


だが。


《狂化》で強くなって、何度も攻撃するだけでは駄目だ。


《白蝕獣》が天井にいる限り、白蝕仔は増え続ける。俺が群れを押し返せる回数にも限界があるし、シルフィアが戦えばまた仔を殺す可能性がある。


必要なのは、持続的に強くなることじゃない。


俺が一度だけ道を開けた、その瞬間に。


あの母体を崩せる一撃。


「……ある」


「え?」


ある。


この窮地を抜ける手が。


「シル! さっきの《魔鋼大角兎》でレベル上がったよな!」


「上がったけど!?」


あの戦闘で俺は二つ。


シルフィアは一つレベルが上がっている。


冒険者としての経験はシルフィアの方が長いから、本体レベル自体は今も向こうが上だ。


今大事なのは。


一レベル上がったということ。


「SP、三つ残ってるよな!」


「あるよ!」


「専門ツリー開いてくれ!」


「今ぁ!?」


「今だ!」


「敵いるんだけど!?」


「こっちは俺が止める!」


正面へ《炸裂玉》。


群れを吹き飛ばす。


間髪入れず、左にも投げる。


一瞬だけ。


シルフィアの周囲が空いた。


「早く!」


「もう! 分かった!」


シルフィアの視線が宙へ走る。


「開いた!」


前世の記憶を辿る。


狂戦士。


大曲剣系統。


初期ツリー。


確か三段目に、一つあった。


《狂化》とは違う。


一定時間強くなるための技じゃない。


一撃だけ。


斬撃そのものを限界以上まで引き上げる。


「大曲剣の枝! SP3のスキル!」


「えっ……これ?」


シルフィアの視線が止まる。


「《断界》……?」


「それだ!」


――――――――――

【SKILL:《断界》】


分類:狂戦士専門/必殺技

必要SP:3

消費RAGE:70


蓄積したRAGEを一撃へ凝縮し、大曲剣による斬撃を瞬間的に限界以上まで引き上げる。


硬質な部位・強固な防御・巨大な対象への突破力に優れる。


発動後は腕・肩を中心に大きな負荷が残り、一時的に攻撃能力が低下する。

――――――――――


「必要SP、3!?」


「取れ!」


「三つ全部なくなるんだけど!?」


「今使わないでいつ使うんだ!」


「なんで私より私のスキル詳しいの!?」


「それはあとで説明する!」


「絶対だからね!」


「約束する!」


シルフィアが何かを操作する。


「……取った!」


よし。


これならいける。


「シル。必要なのは、長く強くなることじゃない。一回であいつを地面へ落とすことだ」


俺は天井の《白蝕獣》を見る。


さっきから魔力を吸収して再生を続けているが、攻略上の弱点は変わらない。


四本の脚で天井に張り付き、腹の奥に《白蝕核》を抱えている。


脚を落とし。


胴を深く斬る。


そこまで一撃で持っていけばいい。


「俺が道を作る」


シルフィアを見る。


「いけるか?」


一瞬だけ。


シルフィアが《断界》の表示へ視線を向けた。


それから、大曲剣を握り直す。


「うん」


少し緊張した顔。


それでも笑った。


「任せて」


「頼んだ」


俺が先に動く。


正面。


《炸裂玉》。


爆発。


白蝕仔の群れが左右へ割れる。


次。


左から入り込もうとする個体を、もう一発で押し返す。


まだ足りない。


右。


最後にもう一つ。


――バンッ!


道が開いた。


「シル!」


「うん!」


走る。


白蝕仔には目もくれない。


大曲剣を背負うように構え、シルフィアが一直線に《白蝕獣》へ向かう。


「――《断界》!」


赤い魔力が一気に噴き上がった。


《狂化》のように全身を包まない。


全ての力が、大曲剣の刀身へ収束していく。


シルフィアが岩壁を蹴った。


跳ぶ。


《白蝕獣》が反応し、四本の脚へ力を込める。


だが。


もう遅い。


大曲剣が振り抜かれた。


たった一撃。


それだけだった。


けれど、黒鉄色の刀身が通った跡を追うように、《白蝕獣》の二本の脚がまとめて断ち切られ、そのまま斬撃は白い胴体へ深く食い込んだ。


巨体が天井から剥がれる。


――ズドンッ!


岩床が揺れた。


「ギャアアアァァァッ!!」


耳をつんざくような悲鳴を上げ、《白蝕獣》が岩床へ叩きつけられた。


切り裂かれた腹部の奥。


そこから白い光が漏れていた。


《白蝕核》。


「アーサー!」


着地したシルフィアの声が飛ぶ。


だが、次の瞬間。


「っ……!」


大曲剣の切っ先が地面へ落ちた。


右腕を押さえる。


「シル!」


「大丈夫……!腕が、ちょっと……痺れてるだけ!」


ちょっとではなさそうだ。


それでも《断界》は役目を果たした。


《白蝕獣》の腹は大きく裂け、中枢である《白蝕核》が完全に露出している。


あとは。


俺の仕事だ。


《白蝕獣》が身を起こし、大きく口を開いた。まだ毒液を吐くつもりらしい。


道具袋から単体型《火花玉》を抜く。


狙いは露出した《白蝕核》。


毒液が飛んでくるより早く投げた。


《火花玉》が白い核へ張り付き――爆ぜる。


炎に包まれた《白蝕核》が砕け、《白蝕獣》の巨体がそのまま岩床へ沈んだ。


今度こそ、動かない。


周囲を這い回っていた白蝕仔たちも動きを止め、母体が死んだことを察したのか、一匹、また一匹と岩の隙間へ逃げていった。


ぺた。


ぺた。


あれほど響いていた音が遠ざかり、洞窟に静けさが戻る。


「……終わった?」


「ああ」


俺はしばらく《白蝕獣》を見てから頷いた。


「終わったよ」


「よかったぁ……」


シルフィアが大曲剣に身体を預ける。


すぐにそばへ向かう。


「腕、見せて」


「平気だって」


「平気かどうかは見てから決める」


「……はーい」


右腕を取る。


外傷はない。


指も動く。


ただ、腕全体に力が入りにくいらしい。


肩から脚まで確認すると、特に踏み込みに使った右脚にも強い疲労が残っていた。


「初めて使った技だからな。今日はもう使わない方がいい」


「言われなくても無理だよ……」


「ごめん。無茶させた」


シルフィアがじっと俺を見る。


「……あとでちゃんと怒るからね」


「うん。それは甘んじて受ける」


「忘れないでよ」


「忘れない」


そこで話はいったん終わった。


今は休ませる方が先だ。


壁際へ座らせ、水を渡す。シルフィアがゆっくり飲んでいる間に、俺はさっきの戦闘を頭の中で整理した。


《断界》は強い。


RAGE70を一撃へ叩き込むだけあって、普通の攻撃では簡単に突破できない相手に対してはかなり有効だろう。


ただし反動も重い。


そして、それは《断界》だけの問題でもない。


さっきの《魔鋼大角兎》戦では、《鎮心薬》によってRAGE70《狂化》中の精神面をかなり抑えられた。それでも解除後の身体的な負担はしっかり残った。


薬の効果も永続じゃない。


そもそも《鎮心薬》は、シルフィアの身体を強くするための物ではない。


精神面を補助する薬を増やしても、腕や脚へ掛かる負担まではどうにもならない。


今日だけでも、《狂化》と《断界》の両方で同じ問題が出ている。


だったら次に考えるべきものは、薬じゃない。


「……装備か」


「ん?」


シルフィアが水瓶から口を離した。


「次に作る物」


「また薬?」


「いや。今度はシルの装備」


「私の?」


「ああ」


腕、肩、脚。


大曲剣の反動を受ける場所と、踏み込みで負担が集中する場所。


そこを外側から支えられれば、《狂化》や《断界》を使った時の負担も多少は減らせるはずだ。


狂戦士の火力をさらに上げる必要はない。


今でも十分強い。


むしろ。


「シルの力に、身体の方を耐えられるようにしたい」


「……私の力に?」


「ああ。無理に力を抑えるより、その方がシルには合ってるだろ?」


シルフィアが少し目を丸くする。


やがて、小さく笑った。


「うん」


「じゃあ、帰ったら考えてみるよ」


「……楽しみにしとく」


「任せて」


少し元気が戻ったようで安心した。


◇ ◇ ◇


三十分ほど休んだ。


シルフィアの腕の痺れもだいぶ引き、自分で歩くくらいなら問題なさそうだった。


「立てる?」


「うん!」


勢いよく立ち上がり、大曲剣へ手を伸ばす。


「よいしょ……っ」


持ち上がる。


ただし、いつものように軽々とはいかない。


「重そうだけど」


「持てたから大丈夫!」


「無理そうなら言ってくれ」


「分かってる」


本人がそう言うなら、ゆっくり帰れば問題ないだろう。


その前に。


戦闘が終わった以上、やることがある。


《白蝕獣》がいた周辺を見て回ると、岩の隙間に青白い光が見えた。


「お?」


手を伸ばし、結晶を引っ張り出す。


――――――――――

【ITEM:氷結晶】


属性:氷

特性:《素材》《鉱物》《冷却材》

――――――――――


「氷結晶か」


この辺りで拾えるとは思っていなかった。


周囲を見ると、もう二つ。


「ラッキー」


全部回収する。


さらに《白蝕獣》が残した素材も確認した。


――――――――――

【DROP】


《白蝕獣の腐蝕腺》

《白蝕獣の白皮》

《白蝕獣の魔核》

――――――――――


腐蝕性を持つ腺。


薬品に強い白皮。


それに魔核。


どれも錬金素材として使い道がある。


予定外の《白蝕》に巻き込まれたが、結果だけ見れば収穫はかなり増えた。


素材を全て採取袋へ収めて立ち上がる。


「シル。帰ろうか」


「うん!」


二人で来た道を歩き始めた。


《白蝕》は、今まで見つけた異常配置とは違う。


前世のゲームにも存在した、単なるレアイベントだ。


知らずに《白蝕仔》を殺し続ければ母体を強くしてしまうが、仕組みさえ知っていれば攻略できる。


それより、今回の収穫は《断界》だった。


《狂化》とは使い方がまるで違う。


長く戦うなら《狂化》。


強固な相手を一撃で突破したいなら《断界》。


選択肢が増えたのは大きい。


同時に。


シルフィアの身体が、その力に追いついていないこともよく分かった。


「……アーサー」


隣から声を掛けられる。


「ん?」


「また楽しそうな顔してる」


「そう?」


「してる。何考えてたの?」


「シルの装備」


「もう?」


「ああ。腕と脚は補助したいな。大曲剣の邪魔にならないようにしつつ、踏み込みと振り抜きの負担を――」


「ちょっと待って」


「ん?」


シルフィアが呆れたように笑う。


「帰ってから考えようよ」


「……そうだな」


「あと」


「何?」


「私に怒られるのも帰ってからだからね」


「覚えてたか」


「忘れるわけないでしょ!」


どうやら。


装備を考える前に、一つ済ませることがありそうだった。


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