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妖怪魔王は鼓動を止める  作者: 日暮
異世界生活黎明・強欲編
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2/4

#2 暇つぶし

どうも日暮です。

「妖怪魔王は鼓動を止める」という作品です。

ぜひ読んでみてください。

「で、なんで君がいるんだよ」

 イライラとした態度でジェヘナはアンヘルに聞いた。

 現在、ジェヘナとアンヘルは市場を歩いていた。

「そりゃ、ただの監視に決まってるじゃないのよ」

 昨日、魔物に殺されかけたアンヘルを助けて以来、多少の信頼は得られたようだが、まだ全幅の信頼を得る、と言うには遠いようだ。

 ジェヘナからしたら正直どうでもいい話なのだが。

 だが、いつまでついてこられるのかと考えると少し面倒だ。なぜなら今ジェヘナが向かっているところはアンヘルに見られたら少し困るような場所であるからだ。

 しばらく歩いていても諦めてくれる様子がないので、渋々ながら目的地にアンヘルを連れて行くことにした。

 撒いても構わないのだが下手なことをすると監視の目がより厳しくなりそうなのだ。

 市場の路地を抜け、暗くジメジメした雰囲気の道に出る。

 既にアンヘルは訝しんでいるようなので、もう追跡を許すしかない。

 着いた先は薬局である。といってもただの薬局ではない。

 危険物専門の《《毒》》薬局なのだ。

「な、何よここ……ジェヘナ、アンタやっぱ何か企んでるでしょ!」

 と言って自衛用なのか、腰に刺している片刃剣に手を掛けた。日本刀のような見た目である。

 この世界にも片刃剣の文化はあったのか、と内心で感心する。

「あ、おばちゃん。アーミースパイダーの眼50個とバジリスクの爪200gと……あとアシッドホークの尾羽3枚ちょうだい」

 店主である老婆に注文する。

「あら、いつもありがとうねぇ。グロスマッシュルームをオマケしてるからね」

「わあ、ありがとう!」

 今出た物体は、当然全て猛毒である。

 誰殺す気なの!? とアンヘルが慌てるのもある意味自然な反応である。

「あ、そうそう。前カトブレパス仕留めたから目ん玉買い取ってくれる?」

「まあ! あの凶悪な怪物を斃したのかい、もちろん言い値で買わせてもらうよ」

 私を救けた理由に金になるからってのも含まれていたんだろうな、と突っ込む気も失せるほど疲れてしまっているアンヘルである。

 

 買い物をすませて、ジェヘナとアンヘルは店の外にでた。

 この路地裏はスラムとも隣接しているので、少年少女二人で歩くのは覚束ないし、人目をひく。

 二人の髪色があまり一般的でないことも相まって、周囲の人間からはチラチラと視線を送られていた。

 そんなことなど気にも留めていなかったが、突然轟音が鳴ったため、二人は同時に振り向いた。

 ハンターらしき人間たちが捕獲網を持って走っていた。

 ハンターらとジェヘナの距離が5メートルほどになったとき、足に強い衝撃が響いた。

 何かが通り去って行ったような感覚だ。

(何かぶつかったのか?)

 と足元を一度見て、次に何かが通って行った方角を見た。しかし、誰もいなかった。

 だが、何かは確実に通って行った。

「アンヘル……」

「うん、透明化系の【固有能力プライムスキル】だと思う」

 この世界には【スキル】という概念が存在している。

 【スキル】は大まかに分別して二種類。努力や経験によって獲得できる【一般能力コモンスキル】。そしてこの世に二つと無い【固有能力プライムスキル】である。

 【固有能力プライムスキル】は、皆が皆獲得できるというわけではなく、ある程度の危機的状況に陥った上で才能を持っていなければ授からない。

 必然的に獲得している物など多くない。

 ちなみにジェヘナとアンヘルも、それに近しい特殊能力は扱えるが、《《前世産》》の能力なのでその本質は異なる。

 

 今の騒動について少し気になったから近くにいた人に話を聞いた。

「ああ、あいつらは“タニカケ商会”だよ。最近絶滅したはずの獣人が見つかったとか言って捕獲して売ろうと躍起になってるのさ」

 獣人____身体に獣の特徴を受け継ぎ、人よりも運動能力が極めて高い亜人だ。

 15年ほど前にとある事件がきっかけで滅んだ種族らしいのだが、まだ生き残りがいたようだ。

 そんな存在なら国が保護してくれそうなものだが、この土地は特別なようだ。

 この市場周辺は“タニカケ商会”の支配下にあり、国すらも口を挟めない自治地区とかしているそうだ。

「でもおかげでこの辺りで飢える人はいないから誰も文句など言わないのさ」

 ふうん、飢える人がいない、か。どう見てもスラムの住人は食うに困っているようだったけどな。それに国すら口を挟めない組織が一商会で収まっているのだろうか。少々きな臭いな。

 それに今逃げているであろう獣人だって、この土地から離れて仕舞えばなんとでもなるだろうに。

 この事件、思ったよりも面白そうだ。

「アンタ、まさか関わる気? あの商会の幹部はすでに国の中枢に食い込んでいると聞くわ、商会を的に回すのは国を敵に回すのと同義だと思っておいたほうがいいわよ」

「ご忠告ありがとう、でももう決めた♪ こんなに面白そうなこと滅多にないよ。それにアンヘルだって経験値は積んでおいたほうが成長になるよ」

 あくまでジェヘナが異世界に転生した理由は“暇だから”である。面白いことに関わらなければ意味がない。それにもし商会に自分を殺せるほどの強者がいるのであればそれはそれで良しというところだ。

「ああーもう、手伝えばいいんでしょ、手伝えば!!」

 

 ***


 それから二時間後、ジェヘナとアンヘルはスラムの廃墟の中にいた。

 しばらくそこで暇を持て余していると、突然少年が現れた。

 犬のようなとんがった耳と、腰ほどまで伸びている焦げ茶色の長い神が特徴的だ。

 身長からして、年齢は高校生程度だろう。

 間違いなく、獣人の少年だ。

「みーつけた」

 ジェヘナがそういうと、獣人の少年もこちらに気づいたようだ。

「な……商会か!?」

 そういうや否や、慌てて逃げて行った。が、その行動は予測済みである。

 事前に掘った落とし穴にうまく落ちてくれた。

 ここに少年がくることも、逃げることも【くだん】の力を借りて予知していたのだ。

穴に落ちた少年は、自身の最期を覚悟したかのような悲壮な顔つきをして睨んでいた。

「こんなところで捕まってたまるか……!!」

 そういって、とんがった爪を僕に向けて切り掛かってきた。

 さすがは獣人、穴から跳躍することくらいわけないようだ。

「わわー、ドウドウドウドウ。落ち着いて、僕らは別に敵じゃないよ」

 そういうと少年の行動が少し和らいだ。

「アンタら、商会の人間じゃないのか……?」

 少年の興奮を落ち着かせ、一旦話し合いの席につかせた。


「で、アンタらの目的はなんだ? 俺はまだアンタらのことなんて欠片も信用していないぞ」

「目的……? 別にないけど、暇だからきな臭い商会の正体を暴いてやろうかと、あっ商会の正体って韻踏んでるね」

 なんとまあ、我ながら雑な理由だ。でもそれ以上の理由などないのだから仕方がない。

 “妖魔王”時代も、私腹を肥やしている貴族の家に雷を落とす遊びとかよくしてたし。

 獣人の少年は、意味がわからない、という顔をしているがまあ無理もない。

「そういえばまだ名前を名乗っていなかったね。僕はジェヘナでこっちが」

「アンヘルよ」

「君は?」

「俺の名前はシャルルだ。見ての通り獣人だ」

「そうか、早速だけど一緒に商会を潰そうぜ!」

「いや、だからアンタらになんのメリットがあんだよ」

「言ったでしょ、ただの暇つぶしだって」

 そういうと、シャルルはなんとも驚いた顔をした。この変な顔が見られただけでも今回の件に関わった意義があったかもしれないね。

「そんじゃあ僕たちは明日の日の出とともに商会の窓口に突撃するから」

 シャルルとしても当然僕らのことなど信用していないだろう。

 だから《《一旦は》》僕らだけで動く。アンヘルの迷惑? 知らないね。

「これは人類に仇なすってのにはノーカンでいいよね」

「特別よ」

 やれやれ、とでも言いたげにアンヘルは首を横に振った。

 

 ***


 アンヘルは、あらかじめジェヘナと約束していた通りに日の出とともに商会の窓口にやってきた。

 が、付近には少女が一人いるだけだ。ジェヘナの姿は見られない。

(まさかアイツ、すっぽかしたんじゃないでしょうね……!) 

 とイライラしていると、近くにいた少女に脇腹をつつかれた。

「ひゃっ!!」

 思わず変な声がでる。

「僕だよアンヘル」

 少女が、声変わり前の少年のような声で喋った。

「その声、ジェヘナ?」

 声質はジェヘナと同じだった。ジェヘナはまだ声変わりしていないので少女の姿でその声でもおかしくはないが、いかんせん違和感がある。

「って変態! いきなり女子の体に触るな!!」

「えー、僕そもそも本来は性別なんてないのに。この世界では便宜上男のフリしてるだけなのさ。だから僕が女でもなんの問題はないのだ」

 解せぬ。やはり前世からジェヘナは男であるという印象が強かったので、今更そんなことを言われても困ってしまう。

「ともかく潜入捜査するよ」

「潜入捜査って……どうやってするのよ」

 ジェヘナは窓口までまっすぐ歩いて行って、受付の若い女に

「バイトの採用面接に応募したジェヘナとアンヘルです」

 といった。

「(昨日の今日でなんでこんなに準備万端なのよ!)」

「(そこはちょっと裏技せんのうを、ね)」

「(やっぱアンタ滅ぼしたほうがいいでしょ!)」

「(やたー)」

 締まりがなさすぎで無性に腹が立つアンヘルである。

 だが、ようやくジェヘナの掴み所のない性格が掴めて来たような気がする。

 要はコイツ、刹那的快楽主義者なのだな、と痛感する。

「(で、潜入した上でどうするのか具体的な作戦を説明しなさいよ)」

「(今回は一旦建物の構造を把握するだけで済ませるよ)」

「(それだけならアンタの下僕の【滑瓢ぬらりひょん】でも使えばいいじゃないのよ)」

「(は? 何言ってんの、そんなのスリルがないじゃん)」

 コイツ……殴りたい……。

 殴った。

 といったように口論をしている間に採用手続きが完了したようで

「受理しました。それでは今から仕事内容を説明しますね」

 と受付の女性が言った。

 異世界の採用手続きザルすぎるだろ! と内心で突っ込んでいたが、ジェヘナが裏技せんのうを施していたのを思い出した。


 それからしばらく様々な部屋を案内されたが、その間ジェヘナが何か行動を起こしている様子は無かった。

 そして何事もなく、説明会は終了した。

「それでは、こちら社員証になります。次は明日の夜明けに来てください」

「はい、ありがとうございます」

 とジェヘナがいけしゃあしゃあと言った。


 ***


「で、もしかして構造を把握って本当にそれだけなの?」

「なわけないじゃん。ちゃんと面白いのが見つかったよ。連絡通路が5個に地下室への入り口が1個だね」

「いつの間に……」

相変わらずアンヘルは鈍臭い。

妖力を振動させたのだ。理屈はコウモリみたいなものだね。

 

 瞬間、突然僕とアンヘルの首根っこを誰かに掴まれて路地裏に引きずれ込まれた。

 引っ張った主はシャルルだった。

「テメェら、パメラをどこにやったら!! お前らが俺を懐柔して裏切ったんだろ!!」

 ふうん、事件の匂いがする。久しぶりに楽しめそうだ。

いかがでしたか?

面白かったらぜひ感想やブックマーク登録などお願いします。


キャラクタープロフィール

名前:アンヘル

種族:優人

性別:女

年齢:13

固有能力:五行四神陰陽纏

備考:双六が好き、暗闇が嫌い

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