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はじめての戦闘と

「グワッ!」

「ギィー! ギギッ!」


通りの中央、焚き火を囲む4匹のゴブリンたちの喉の奥から鳴る非人間的なおしゃべりを聞いて、クラインの心は歓喜に打ち震えた。


「やばっ、マジでファンタジーじゃん!」


クラインは満面の笑みを浮かべ、純粋なテンションの高さゆえに、足元でタップダンスでも踏むかのようにリズミカルに地団駄を踏んだ。本物のモンスターを見てみたいという、すべての青少年の夢がついに現実になったのだ。


彼は暗がりに潜み、動物園のライオンの展示に魅了される子供のように、少し離れた場所から彼らを観察した。そのゴブリンたちは、中世ファンタジーに出てくる姿そのものだった。ヒキガエルのような肌、突き出た牙、そしてボロボロの古びた服を着ている。


クラインはさらに別のことにも気がついた。火にかけられた串には、正体不明の肉塊が刺さっている。溶け出した脂が炎に滴り落ち、ジュージューと音を立てていた。


「……焼けた……肉」


ゴブリンもかっこいいが、その肉はあまりにも魅力的だった。何百年もの眠りから覚めたばかりの彼の胃袋は、その肉が元々どんな生き物だったかなど関係なく、新鮮な食べ物を求めて悲鳴を上げていた。


「めっちゃ一口食いてえ! 見ろよあの光る脂……滴り落ちる肉汁! 一口噛んだら絶対に旨味が爆発するぞ。ジュルリ……」


クラインは顎から垂れたよだれを拭った。いつまでもここで見ているわけにはいかないと気づき、彼は壁の裏に隠れて、自分自身との短い作戦会議を開くことにした。


「よし、あいつらはゴブリンだよな? ファンタジーのお約束なら最弱モブだ。こっちにはテーブルの脚の棍棒がある。倒すのなんて楽勝だろ。でも待てよ……作品によっては文化的な生活を送ってるのもいる。都市を作ってるゴブリンだっていたぞ。丁寧にお願いしたら、あの肉を少し分けてくれるんじゃないか?」


クラインが自問自答している間に、ゴブリンの一匹が角の向こうから聞こえる物音に気づいた。そいつは棍棒を手に取り、集団から離れて様子を見にやって来た。


『ぶっ潰せ! ワンヒット・ワンキルだ!』と、彼の攻撃的な部分が囁く。


『でもあいつらに法律があったら? 殺したら違法だぞ。刑務所に入りたいか? 死刑になるかもしれないぞ!』と、論理的な部分が反論する。


『馬鹿言え、ただのモンスターだろ。ここに文明なんてないっての』


『でも「モンスター保護法」の特別天然記念物かもしれないだろ!』


『なんだその法律!? 目を覚ませ、ここに人間なんていないんだぞ!』


『ここにいないからって、他の場所にもいないとは限らないだろ!』


「ああもう! わかったよ! じゃあどうすればいいんだよ!?」


「……グワッ?」


「え……グワッ?」


大声で一人芝居をしていたクラインは、ゴブリンが自分の目の前に立っていることに全く気づいていなかった。一瞬、視線が交差する。時が止まったかのように激しい瞬間。ああ、初めての出会いのロマンス……。


「グワァァァァッ!!」

「うわぁぁぁぁっ!!」


ゴブリンが恐怖の悲鳴を上げ、クラインも負けじと大声で叫び返した。化け物は即座に、持っていた粗末な棍棒を全力でクラインに向かって振り下ろしてきた。


クラインの生存本能が働く。腹を引っ込め、背中を反らせて、間一髪でその一撃を躱した。空振りした勢いでゴブリンはバランスを崩し、地面に転がる。完璧な隙だった。


「友好的じゃないなら、殺してもいいんだよな!? 少なくとも裁判官には正当防衛だって主張できるぞ!」


クラインは「テーブルの脚」を抜き放ち、頭上に高く掲げると、演劇のように大げさに深呼吸をした。


「見よ、この怒りを……『マイ・レッグ=テーブル・レジェンダリー(伝説の俺の机の脚)』!!」


彼はその痛々しいほど中二病全開の必殺技名を腹の底から叫び、全力でゴブリンの頭に棍棒を振り下ろした。


バキィィィッ!!


通りに大きな破壊音が響き渡る。そう、それはクラインのテーブルの脚が、千個の役に立たない木っ端へと砕け散る音だった。一方、ゴブリンの頭は100%無傷のままだった。軽く足で踏んづけただけで折れるようなテーブルの脚なのだから、中まで腐りきっていたことくらい、クラインも気づくべきだったのだ。


「あ……ヤバ」


「ヤバい」という言葉では控えめすぎる。彼の唯一の武器は今や、一握りの木くずに成り果てた。


ゴブリンは頭を振り、一秒だけ目を回した後、再び立ち上がった。どうやらクラインの「究極奥義」は、相手を極限までブチギレさせることにしか成功しなかったらしい。


「ごめんね、ハニー? 俺が悪かった?」


「グワァァァァッ!!」


純粋な怒りを原動力に、ゴブリンは再び棍棒を振るった。


ガキィィィンッ!


棍棒がクラインの右脇腹にクリーンヒットし、彼は5メートルも後方へと吹き飛ばされた。地面に激しく叩きつけられ、埃まみれになりながら転がる。


「ゲホッ! ゴフッ!」


クラインは口いっぱいの血を吐き出した。運が良かった。棍棒はまず彼のサイボーグ化された腕に当たり、肋骨に届く前に衝撃の大部分を吸収してくれたのだ。もしそうでなければ、彼の手作り内臓セットが外界へと自己紹介の挨拶に出ていただろう。


「最弱モブだと、ふざけんな! ラノベ作家の奴ら、ちゃんとフィールドワークしてんのかよ!?」


息を弾ませながら、クラインは慌てて立ち上がった。だが、事態はさらに悪化していた。残りの3匹のゴブリンが到着したのだ。これでフルメンバー集結である。


「へっ……『ビートルズ』の登場ってわけか」


ゴブリンの群れは彼を睨みつけ、醜い笑みを浮かべて黄色い牙を剥き出しにした。彼らは錆びた剣、槍、そして棍棒で武装している。どうやら「サイボーグの丸焼き」が新メニューとして追加されそうな雰囲気だった。


「お前らが俺にそうさせたんだ! こうなったら、アレを使うしかない!」


クラインが咆哮すると、ゴブリンたちは少しだけ怯んだ。


「動力炉起動! 全エネルギーを下半身に集中! 最大出力! うおおおおおおっ!!!」


クラインは身を低くし、すべてのエネルギーを一点に集中させているかのように見せた。ゴブリンたちは躊躇して顔を見合わせる。この人間が一体どんな恐ろしい切り札を放とうとしているのかと。


「くらえ! 俺の最終奥義! 『マイ・レッグ・イズ・ランニング(全力疾走)』!!」


クラインはクルリと背を向け、弾丸のように駆け出した。トイレの危機まであと5秒だと気づいたオリンピックの短距離選手のように、その足は残像が見えるほど高速で動いていた。そう! 彼の最強の技とは、伝説の『戦略的撤退』だったのだ!


ゴブリンたちはそこに立ち尽くし、3秒間ほど困惑して瞬きをした後、怒りの遠吠えを上げて追いかけ始めた。


「グワッ!! グワァァァァッ!!」


群れを背後に引き連れ、クラインは必死に逃げた。どこへ行けば彼らを振り切れるか全く見当がつかない。思い浮かんだのはたった一箇所、ついさっき出てきた廃墟の研究施設だけだった。あそこなら少なくとも間取りはわかっているし、瓦礫の隙間を通り抜けられる。しかしそれは、唯一の安全地帯にモンスターを案内してしまうことを意味していた。


ブンッ!


ゴブリンが剣を振り回し、クラインのシャツの背中をかすめたが、自分の足につまずいて転んだ。


「わかったよ! 研究所へ行くしかない!」


他に選択肢はない。まずは生存、結果は後回しだ。


長い距離の追いかけっこが続いたが、脚の長いクラインのほうがわずかに有利だった。彼と緑色のモンスターとの距離は徐々に開いていく。そしてついに、彼は研究所の前に辿り着いた。


「捕まえられるもんなら捕まえてみろ、短足ども! ハハハ!」


ゴブリンたちに彼の言葉は理解できなかったが、舐められていることだけは確実に伝わった。激怒した槍持ちのゴブリンが、槍を頭上に掲げて投擲した。槍は空気を切り裂いて飛び、クラインの脚をかすめ、彼を建物の入り口の階段のふもとで転倒させた。


「いっ!」


クラインは這い上がろうとしたが、脚の痛みは深くはないものの、勢いを殺すには十分だった。


「ギギッ……ギギ……ヘヘヘ」


ゴブリンたちの下品な笑い声が聞こえる――彼らはクラインの敗北を味わっていた。どうやらこれがクラインの終点のようだ。スタート地点に戻って死ぬなんて……詩的な皮肉が効いているが、最高にクソったれだ。この新しい世界でまだ見ていないものに思いを馳せると、悔し涙が目に浮かんだ。


「クソったれがああああ!!!!」


ゴブリンたちが止めを刺そうと迫る中、クラインは絶叫した。


[ピピッ]

[敵対的生命体を検知]

[制圧プロトコルを開始します]


冷たい機械的な音声が入り口から響いた。突然、天井のパネルがシューッという音と共に開き、3機の巨大なマシンガンタレット(自動迎撃銃座)が滑り降りてきた。


カチャッ。ウィィィィン――


ダダダダダダダダッ!!!


3機の自動タレットが、鉛の暴風雨を解き放った。すべての一撃が寸分の狂いもなく命中する。その轟音は、近所の人が旧正月に鳴らす大量の爆竹をクラインに思い出させたが、致死率はその千倍だった。


[制圧完了。ネオゲート・セキュリティサービスをご利用いただき、ありがとうございます]


陽気なチャイム音と共にタレットは天井へと引っ込み、続いてエレベーターで流れるような穏やかなBGMが鳴り響いた。騒ぎは収まり、あとに残されたのはオゾンの匂いと、薬莢の山、そして穴だらけになった4匹のゴブリンの残骸だけだった。


階段に座り込み、両手で耳を塞いだクラインは、まるで雷に打たれたニワトリのように呆然としていた。

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