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空中庭園、不死の狼、過剰回復

ズガガガガガガガガガガッ!!!


自動防衛タレットからの銃弾の雨が、鼓膜をつんざくような轟音と共に降り注いだ。

巨大なゾンビウルフが地面から立ち上がろうとするたび、無数の弾丸がその肉を焼き焦がし、ズタズタに引き裂いていく。しかし、わずか数秒後には、千切れたはずの肉片が蠢き、何事もなかったかのように完全に結合してしまうのだ。

怪物は2階から自分を見下ろしている獲物たちをねめつけ、ニタリと不気味に笑った。そして血に飢えたように舌なめずりをした――次の瞬間、その頭部がタレットの集中砲火を浴びて跡形もなく吹き飛んだ。


何度肉体を粉砕されても、その直後に蘇り続けるゾンビウルフ。その悪夢のような光景を前に、クラインは冷や汗を流しながら震える声で尋ねた。

「アルテミス……頼むから、あのタレットの弾薬は『無限』だって言ってくれよ……」

「残念ながら、そうではありません。各防衛タレットに装填されている弾丸は、それぞれ1500発のみです」


その無慈悲な回答に、クラインの心臓がドクンと嫌な音を立てた。

「じゃあ、あいつの再生能力にも限界があるはずだろ!? どうやったらあいつを殺せるのか教えてくれよ!」

クラインは藁にも縋る思いでアルテミスに叫んだが、彼女からの返答はなかった。


「無駄ですよ、クライン殿……」

代わりに口を開いたのはサイラスだった。その声は酷く沈んでいた。

「伝承によれば、あれは『ブライトウルフ』。このクイン市を支配する魔獣です。永遠の呪いを受けたあの生き物は、どれだけ肉体を破壊しようと、何度でも蘇る……。決して『死なない』存在なのです」


食堂に、冷や水を浴びせられたような沈黙が落ちた。

息が詰まるほどの圧倒的なプレッシャーが全員にのしかかる。彼らが見下ろしているのは、ただの獣ではない。タレットの『弾切れ』というタイムリミットと共に、確実に迫り来る『絶対的な死』そのものだった。


「ふざけんな! ここまで死に物狂いで生き延びてきたのに、大人しく死を待つなんて冗談じゃないぞ!」

クラインの怒号が沈黙を切り裂いた。

「武器を取れ! 今すぐ上の階へ避難するんだ! たとえ勝てなくても……生き延びる方法だけは絶対に見つけ出してやる!」


青年はゴブリンの巣窟から奪ってきた武器の山へと走り、負傷者も含めた全員に武器を配り始めた。ミアとサイラスは長い槍を手に取り、クラインとキリアンは剣を握りしめた。

生存を賭けた、決死の脱出劇が幕を開ける。


[弾薬切れです。リロードしてください]


やがて、絶望のアナウンスが1基目のタレットから鳴り響き、立て続けに2基目、3基目も沈黙した。

硝煙が立ち込め、何千もの薬莢が散乱するエントランスの奥で、怪物はついに完全な姿を取り戻した。ゾンビウルフは牙を剥き出しにして嗤うと、弾切れのタレットへと飛びかかり、まるで紙くずのように噛み砕いて破壊した。


しかし、怪物の巨体は、施設内部へと続く入り口のドアを通るにはあまりにも大きすぎた。

狼の瞳に狡猾な光が宿る。直後、その巨大な肉体が激しい痙攣を起こし始めた。内側から『何か』が起きている。


バキッ! グチャッ! メリメリメリッ……!


怪物の体内から、骨が砕けるおぞましい音が連続して響き渡った。自らの骨格を強引にへし折り、肉体を歪ませ、その巨体をドアを通れるサイズにまで『圧縮』したのだ。

施設内のホールへと侵入した怪物は、鼻を高く上げ、空気に漂う獲物の匂いを深く吸い込んだ。……獲物たちがすぐ近くに隠れていることを、悪魔はすでに察知していた。


___________________


クラインたちは、13階まで駆け上がり身を潜めていた。

この階は他のフロアとは完全に異なっていた。かつては憩いの場として使われていたのだろう、壁が一切なく、四方から風が吹き抜ける開放的な構造になっている。残されているのは、コンクリートの森のように規則正しく並ぶ支柱だけだ。

しかし長い年月により、この場所は『空中庭園』へと姿を変えていた。床のひび割れからは蔦や原生林の植物が鬱蒼と生い茂り、すべての柱を飲み込んでいる。高層ビルの一部とは思えないほど、静かで不気味な空間だった。両端には、それぞれ階段とエレベーターホールがある。


ガシャァァーン!


クラインとキリアンが手分けしてかき集めた瓦礫や机を積み上げ、両側の通路を封鎖する音がフロアに響き渡った。ただし完全に塞いだわけではなく、いざという時に人間一人がすり抜けられる『抜け穴』だけは意図的に残してある。

作戦はこうだ。もし怪物がどちらかの通路から現れたら、負傷しているサイラスとミアは反対側の階段から即座に逃げる。クラインとキリアンが前衛(盾)となり、仲間が下の階へ逃げ切るまで、命がけで怪物の足止めをする。


「この作戦が上手くいくといいんだけどな……」クラインが祈るように呟いた。

「アヴェリーンがここにいてくれたら、よかったのですが」サイラスがポツリとこぼした。


「アヴェリーン? 誰だそれ?」

「私たちの探索部隊の『錬金術師』よ。彼女がいれば、調合した『魔法石マジックストーン』を使ってあのブライトウルフに対抗できたかもしれない。……でも、彼女が今生きているかどうか……」ミアが悲痛な顔で答えた。


「魔法石!? マジか、君たち魔法が使えるのか!?」

クラインは緊迫した状況にもかかわらず、オタク特有の好奇心を隠しきれず食いついた。


「魔法使いというほど大層なものではありませんよ。以前遭遇したゴブリンの老王と同じです。奴の杖には『火属性』の魔法石が埋め込まれていたから、炎を操れた。要するに、属性を持った石の力を引き出しているだけです。石同士を特定の割合で配合し、新たな効果を持つ魔法石を作り出すこともできます。……アヴェリーンほど詳しく原理を説明することはできませんが、もし彼女が生きていれば……クライン殿が興味をお持ちなら、彼女から教わることもできたでしょうね」


サイラスの丁寧な説明を聞きながら、クラインは内心ワクワクしていた。『魔法をぶっ放す俺、絶対カッコいいだろうな』と妄想が膨らむ。しかし、今の絶望的な状況を思い出し、すぐに我に返った。

今必要なのはカッコよさじゃない。あのふざけたゾンビウルフを、完全にあの世へ送り返すための『力』だ。


「えっ……待てよ!」クラインの脳内に、あるRPGのセオリーが閃いた。「それなら、『神聖ホーリー属性』みたいな魔法石もあるのか!?」


目を輝かせるクラインに対し、サイラスは少し考え込んで答えた。

「あるとは聞いていますが、調合が極めて困難なのです。天才のアヴェリーンでさえ、その領域には達していません。配合が複雑すぎて、我々の想像を超える代物らしいのです」


クラインは少しの間沈黙した。彼の脳内で、ゲーマーとしての思考が高速でフル回転している。そして、確信に満ちた強い眼差しで相棒のドローンを振り返った。


「アルテミス。お前、回復薬ポーションを『水風船』みたいな形にパッキングして量産することはできるか?」

「可能ですが……一体何にお使いになるのですか?」アルテミスは不思議そうに聞き返した。


クラインの口角がニヤリと吊り上がった。

「今まで誰もあいつを殺せなかった理由……それは、誰もあいつを『回復ヒール』しようとしなかったからさ!」


ゲーマーなら誰もが知っている、お約束の裏技。

――無限に再生するアンデッド系モンスターに対する最も有効な手段。それは、限界を超えた過剰回復オーバーヒールを強制的に与え続け、細胞を暴走させて自壊させることだ!

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