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世界の真実、破滅のランドリー、強制シャットダウン

クラインは皿の中のスパゲッティをフォークで力なくかき混ぜていた。どれだけ味が良くても、それを喉の奥に流し込む気力すら湧かなかった。アルテミスから聞かされた真実は、彼の心にあまりにも重くのしかかっていた。かつては異世界転生を夢見ていた彼だが、そのワクワクするような冒険の裏側に、無数の人々の屍と涙が隠されていることを知ってしまった今、深い悲しみを抱かずにはいられなかったのだ。


食料庫で荷物を整理していたアルテミスも、その真実を知ればクラインがどう感じるかは十分に理解していた。しかし、それでも彼には知っておいてほしかったのだ。


「少しも食べないんですか、クラインさん?」アルテミスが声をかけた。彼が長い間その皿を見つめ続けているのに、一向にスパゲッティが減る気配がなかったからだ。


クラインには全く食欲がなかったが、もしこのスパゲッティをゴミ箱にでも捨てようものなら、アルテミスから延々とお小言を食らうことは目に見えている。そこで彼は、皿を口元に運び、苦い薬でも飲むかのように一息でスパゲッティを丸呑みした。そして慌ててアルテミスに水を要求し、喉の奥へと流し込んだ。


「ぷはぁっ……死ぬかと思ったぜ」クラインは胸をドンドンと叩きながら、さらに水を飲み干した。

「一気に全部流し込むからですよ。それこそ本当に死にますよ?」

「ごちそうさま。俺、先に行って寝るわ」


そう言ってクラインは早足で寝室へと向かったが、その瞳にはまだ何かが心に引っかかっているような翳りがあった。


___________________


クラインは愛用のカプセルの中に横たわり、頭の上にはアルテミスがピタリと吸着していた。体は泥のように疲れているのに、暗闇の中で彼の目はパッチリと見開かれたままだった。脳内がフル回転しており、どうしても眠りにつくことができないのだ。


ダイアナの本当の動機は何だったのか。メヴィスポータルはまだ開いたままなのか。ゴブリン以外の脅威は存在するのか。そして何より……この広大な世界で、他に生き残っている者はいるのか? 俺のことを覚えている人間は、まだ誰か一人でもいるのだろうか?


答えの出ない問いが頭の中をグルグルと回り続け、彼の眠りを完全に妨げていた。


「……なぁアルテミス、起きてるか?」

「私のシステムは常時起動していますよ、クラインさん」頭の上のアルテミスが即座に答えた。

「ちょっと聞いてもいいか?」

「もちろんです。この天才ドローン・アルテミスが、クラインさんのどんな質問にもお答えしましょう」


クラインは少し躊躇いながら、ゆっくりと口を開いた。


「……お前は、この世界にまだ生き残ってる人間がいると思うか?」

「私のデータは現代の人類に関する情報が一切更新されていません。ですから、確実な答えを出すことはできません」

「……そっか」


「ですが、知っていますか? 人類は『生存のスペシャリスト』なんですよ。適応能力に優れ、決して諦めず、恐るべき闘争心を持ち、そして何より賢い。だから私は、どこかに必ず生き残っている人間がいると確信しています。天才ドローンの名誉にかけて保証します!」


アルテミスの明るく力強い声が、クラインの心に再び希望の火を灯した。


「ですからクラインさん、今は強く生きなければなりませんよ。もし他の生存者に出会った時、こんな『ダサいサイボーグ』のままだと、『あれ? リサイクルゴミが歩いてるぞ?』って勘違いされちゃいますからね」


微かな毒舌ではあったが、小さなドローンのその言葉は、クラインの顔に笑顔を取り戻させるには十分だった。


「誰がダサいピンポン玉だって? 俺が『洗濯槽パンチ』をお見舞いしてやれば、みんな俺のクールさに惚れ惚れするに決まってるだろ」

「はいはい、洗濯機は最高にクールですねー。明日は起きたらすぐに洗濯してくださいよ? もう本当に腐った臭いが酷いんですから」


アルテミスの機転のおかげで、二人は再び笑い合うことができた。クラインはふと思った。もしあの時、アルテミスを口の中に放り込んでいなかったら、自分は今頃どうなっていたのだろうか、と。


「ふぁあぁ……眠くなってきた。そろそろ寝るか」クラインは涙が出るほど大きな欠伸をした。

「はい。おやすみなさい、クラインさん」

「おやすみ……ありがとな、アルテミス」

「いつでも喜んで」


___________________


翌朝。


ビルの隙間から差し込む朝日を浴びながら、クラインは上半身裸のまま、ズボン一枚の姿で研究所の前に立っていた。柱と柱の間にロープを張り巡らせて即席の物干し竿を作り、そこに洗い立ての大量の服を掛け、風になびかせていた。


クラインは目を閉じ、ゆっくりと深呼吸をしながら、まるで武術の達人のようなポーズをとった。そして突然、カッと目を見開いた。


「発動、『洗濯』スキル! モード『手洗いコース(弱水流)』!!」


スキルが発動した瞬間、クラインは水と服が入ったバケツに機械の腕を突っ込んだ。その瞬間、彼の腕は洗濯機のパルセーター(回転翼)の動きを完璧に模倣し、汚れを瞬時に落とすために左右に高速で反転し始めた。


「今回はちゃんと洗ってくださいね。前回は服を全部ビリビリに破いちゃったんですから」

アルテミスは小さな体で服を押し上げ、物干しロープに掛けながら注意した。


「俺のせいじゃないって! この服が古すぎてボロボロだったからだろ!」


クラインは即座に言い返した。だって、最初に試した時、彼の腕はまるでフードプロセッサーかのように猛烈な勢いで回転し、結果として……まともだった3着の服が一瞬でシュレッダーにかけられたように粉微塵になってしまったのだから。


「まだ言い訳するんですか? もう着られる服はこれしかないんですよ」


これらの服は食料庫のロッカーから見つけたものだった。どうやら食料と同じく、衣類を長期間劣化させずに保存する技術が使われていたらしい。


クラインはバケツの水を捨てて軽く服を絞ると、次のスキルに切り替えた。


「発動、『洗濯』スキル! モード『乾燥』!!」


今度はクラインの腕が一定方向に少しスピードを上げて回転し始め、腕の中から熱風がブォォォと吹き出し続けた。彼は得意げにアルテミスの方を向いた。


「なぁアルテミス、俺、将来何をするか決めたぜ。クリーニング屋を開くんだ!」クラインは上機嫌で言った。自分がやっていることを心の底から楽しんでいるようだ。しかし、振り返ったアルテミスは彼の作業を見て悲鳴を上げた。


「クラインさん、服が!!」


クラインが振り返ると、バケツの中で大きな火の玉が燃え盛っていた。どうやら彼の『乾燥』モードは、服を乾かすどころか、ご先祖様への供物としてお焚き上げする機能まで付いていたらしい。彼は慌ててバケツをひっくり返し、足で火を踏み消したが、結局さらに3着の服を失うことになった。


「クラインさんのお店の名前、何にすればいいか分かりましたよ」

「なんて名前?」

「『破滅と絶望のランドリー』がピッタリだと思います」


相変わらず、この小型ドローンは皮肉のキレが抜群である。


その後も、クラインは残りのスキルを次々と試していった。


・『ソーイング(裁縫)』スキル:発動すると指先から針と合成糸が飛び出し、服の破れをあっという間に修復することができる。

・『ウォーター・ザ・プラント(水やり)』スキル:発動するとクラインの手が超ハイテクな散水ノズルに変形する! ……が、このハイテク機能は自給自足できなかった。システムを稼働させて水を噴射するには、まず水道ホースを見つけて肘のポートに接続しなければならない。もちろん、そんなものはどこにもない。

・『ベッドメイキング』スキル:発動した途端、機械の腕や脚の動きがガクッと遅くなり、もっさりとした動きになった。しかしその代わり、油圧ジャッキのような凄まじい怪力を発揮し、分厚く重いマットレスを軽々と持ち上げることができるようになった。

・『スイープ・アンド・モップ(掃き拭き掃除)』スキル:クラインの左足が一瞬で掃除機に変形! 足元が床のゴミを一生懸命吸い込んでくれるのは良いのだが、不運なことに排気口がちょうど『膝』の位置にあったため、吸い込んだホコリがすべて自分に向かって逆噴射されるという地獄の仕様だった。おかげで今のクラインは、掃除を始める前よりもずっと薄汚れていた。

・『クッキング(料理)』スキル:これはすべてのスキルの中で最も興味深いものだった。発動すると、右の手首が回転し、機械の手が鋭利な包丁に変形した。つまり、近接武器が標準装備されたということだ。さらに、左膝がポータブルガスコンロに改造されていることが判明した。ただし条件が一つ……点火するためには、ガスボンベを探して膝に接続しなければならない。当然、そんなものはどこにもない。


「悪くないな。これなら色々と応用が効きそうだ」クラインは満足げに腰に手を当てて言った。

「ほら、言った通りでしょう? このスキルたち、すごく役に立つんですよ」

「ああ、全くだ。さすが天才の俺が——」


言葉を言い終わる前に。突如としてクラインの視界が激しく回転し、目の前の景色がぐにゃりと歪んだ。そして彼は、顔面から地面に激しく倒れ込んだ。完全に意識を失い、システムが強制的にシャットダウンしてしまったのだ。


「クラインさん!!」

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