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第2話 『学内でも有名なイケメン先輩を同級生に紹介してもらいました』

ポリクリ3週間目、今週は内分泌・代謝内科研修中、昼食の時間。


大学病院の中庭は一週間ごとにキッチンカーがやってきていて

今日はタイ料理だ。

男性陣ともう一人の女子・朝倉(あさくら)さんも誘ったのだが

パクチーが苦手ということで、私と結衣(ゆい)だけで中庭で昼食を取っていた。


「6年生の(たち)先輩と今日ご飯に行ってくる」


私達は中庭のベンチを確保して、ランチボックスを開く。

日差しは温かいものの、春風はまだ少し冷たかった。


「舘先輩って、「あの」ですか?

「『サスペクト・クラブ』のJUNと親戚って噂の……」


「その噂、マジらしいよ。」


舘先輩は一つ上の6年生で、

大学のミスターコンテストで優勝したこともあるほど顔が整っていることで有名な先輩だ。

桜友館大学(おうゆうかんだいがく)は10学部すべてを合わせると学生数20000を超えるマンモス大学なのだが

ミスターコンを医学部生が取ったことでハイスぺイケメンとして話題にもなった。

実家は両親とも医者らしいが、

親戚に芸能人がいるということでも、噂の的だ。

そのインパクトもあってとてもモテるので、

彼女が途切れているのを見たことがない。

先輩の学年の一番の才女から、朝のニュースで学生キャスターをしている他大のミスキャンパスまで、とにかくバリエーションに富んでいた。


だがなぜか、私のところに飲み会の話がやってきた。


田中(たなか)君に誘われたんだよね。ほら、先輩と同じ部活じゃん」

「田中君って叶梨(かりん)と仲良いんでしたっけ?」

「そこそこ……? 2年の解剖実習の班が同じだったからその時はよく喋ったかな。

舘先輩、実家もお金持ちだし、顔カッコいいし、言うことないんだよね。

明日報告する♪」


そうして、私はその日の実習が19時で終わると、

花柄のミニワンピースとハイヒールという勝負服に着替えて、

先輩と田中君と待ち合わせている新宿の伊勢丹前に向かった。


「一ノ瀬、こっちこっち!」

私が5分前に到着すると、田中と舘先輩はすでに到着していた。


「お待たせしてすみません!一ノ瀬叶梨(いちのせかりん)です。」

「初めまして、舘 流星(たち りゅうせい)です」


舘先輩は噂通り、近くで見てもとてもカッコよかった。

大きめのデニムジャケットとハーフパンツを身に着けている。

ダサい人が着たら、小学生みたいになりそうなこの組み合わせがここまでオシャレに着こなせるなんて

線が細く、KPOPアイドルのような神スタイルのおかげだろう。


医学部の中では肉食を自称している私も

さすがにちょっと緊張する。


「お噂はかねがね聞いてました!今日は光栄です~」

「え~絶対悪い噂だろう……」

「めちゃカッコいいって噂です!」


田中が予約したという店は、

新宿三丁目のほうに向かった、隠れ家イタリアンだった。

店の入り口で舘先輩が名前を名乗ると、奥から店長が顔をのぞかせて彼に挨拶をする。

行きつけのお店なのか、それもまたかっこいい。


「ポリクリ、どう?」

「まだまだ全然慣れなくて、患者さんへの問診もテンパっちゃいます」

「俺の時もそうだったな~」


舘先輩はクールな人かと思っていたが、意外に良く笑った。

基本真顔な彼が、彼が私の冗談や話に笑うと、嬉しい気持ちになる。

そして

「お酒強いんですね」

「そう、お酒好きなの。一人で飲むのは寂しいから

田中とか後輩に付き合ってもらってるんだ。

今日初めて飲んだけど、叶梨ちゃんも飲めるクチだね。

可愛いうえに酒強いなんて、最高」


イケメンに「可愛い」と言われて、私は思わず舞い上がってしまった。

そして先輩に促されるがまま、私と田中も同じペースでグラスを開けていく。


途中でお手洗いに立って、席に戻ってくると

田中がいなかった。

「あれ? 田中はどうしたんですか?」

「結構酔ってたから、タクシー呼んで返したよ。

明日も実習だし、遅刻させたらまずいでしょ。叶梨ちゃんも、遅くまで付き合せてごめんね」


田中ナイス! 2人きりになればこれはほぼデートだ。

時刻はまだ22時。

ここから「後輩との飲み」ではなく少し色気のある雰囲気に持って行こう。


「新しい飲み物、頼んどいたよ。ハイボールでよかった?」


「ありがとうございます」


私は景気づけにそのハイボールをぐびぐび飲んだ。

ここからどうやって意識してもらうかを考える。

緊張のせいか、いつもより体が熱い。


「私、舘先輩とゆっくりお話ししてみたかったんです」


「そうなの? じゃあゆっくり休めるところ行く?」


「え?」


「そろそろ行こうか」


――「お話ししたい」って言ったのに「休める」???

私は先輩の言葉が聞き間違いかと思って、

促されるままに外に出た。


先輩は慣れた様子でこっちこっち、と言い

徒歩2分くらいで、目的地に着いたようだ。


そこはホテルだった。

しかも一泊での料金ではなく、「休憩2時間 4500円」という時間制のホテル。

つまり、ラブホテルだ。

先輩は慣れた手つきで「どこの部屋がいい?」と聞いてくる。

私が無言でいると「緊張しちゃって可愛い」と言って手を繋いで、部屋へ行こうとした。

私は全てを察した。


私は足に力を入れて、頑として動かない。

高校時代、水泳部で鍛えた体幹を発揮。


「叶梨ちゃん、どうしたの?」

「帰ります」


食事の途中で消えた田中。

ラブホ街に近い店。

仲の良い店員に、やたら濃いハイボール。


間違いない、彼は女の子をラブホテルに連れ込むのに慣れている。


「酔ってんじゃないの?休んでこうよ」

「いえ、まったく。正直に言うと、可愛く見られたくて酔ってるフリしてました」

「強いんだね」

「両親、九州出身なんで」


私はそう言い残すと、駅に向かった。

舘先輩は「また飲もうね」と言って爽やかに手を振っているのが

また手慣れている感じだった。




「そんなわけで、舘先輩はめちゃくちゃヤリチンでした……」


次の日、ポリクリ実習班の女子たちとのランチタイム中に、私は昨日の出来事を報告する。


「まああれだけ顔が良ければ」


結衣がやれやれ、といった様子でお弁当のウインナーをかじった。


「というか舘先輩がクズなのは有名な話じゃない。

学年一位才女で有名だった歩美(あゆみ)先輩と付き合ってたのは知ってるでしょう?

2か月前くらいに、彼女を妊娠させた上に堕ろさせたらしいわよ。だから6年生から今 総スカンを喰らってるって話。だから後輩に手を出し始めてるのよ」


「うそ!?????」


同じ実習班の朝倉さんがとんでもない新情報を教えてくれた。


ずっとこの学部にいると麻痺してしまうが

医学部の男子というのは一歩外に出ればやはりモテる。

顔が良ければさらに無双。

ゆえに女癖の悪さを発揮する奴が一定数いるのだ。


「金の卵を見つけたいなら、気軽に付いていかないことね。

自分だけ特別、なんていうのは幻想なんだから」


朝倉さんは、怒られないギリギリの明るさの髪をかき上げた。

実習生は身だしなみのため、みんな髪を一つに束ねているので、同じような印象になるのだが

彼女は顔立ちが華やかなので、

同じ髪形で前髪をかき上げるだけでもセクシーに見える。


男を見る目が全くない一ノ瀬叶梨、

金の卵獲得は、まだ遠い。



次は明日の午前8時~9時に更新予定。

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