39. 陽の季・中(7月)〜②
本編最終話になります…!
そして、夜。満天の星の下、四人並んで草原に腰を下ろした。
学園で見る夜空も綺麗だけど、ここは格別だ。標高が高く空気も澄んでいるからか、無数の星が瞬いている。いつまでも見ていられそうなくらいに綺麗だった。
「……良いところだね、ここは。」
「だろ?まあ、ここにないものっていうのも沢山あるけどさ。」
セルジュの呟きにテオが返す。
静かで穏やかで、大切な時間だ。こうして見上げた光景も交わした会話も、きっと忘れない。忘れたくない。
「また……来たいな。」
「おう、何回でも来いよ。」
そう、何度だって来たらいい。進む道が別々でも、また四人で集まることだってきっと出来るから。
それでも学生のうちに来るのは最後だと思うと、なんだか感傷に浸ってしまう自分がいた。歩んできたこれまでを思い返す。
学園を目指す道中で、レオンと出会った。無事に入学が決まり、テオやセルジュとも仲良くなった。図書館でアリシアと知り合って、その縁でアルバイトを始めた。
時に戸惑い揺れ動きながら、学びのなかで自身と向き合い、失っていた記憶を取り戻した。受け入れられたのは学園という居場所とそれを守る先生たち、かつての"自分"のお陰でもある。
それから――生まれて初めての感情を知った。
右隣に座り、夜空を見上げる横顔へと視線を向ける。星明りだけが頼りの暗がりでも驚くほどに絵になっていた。
レオンへと抱く感情は、一言では纏められない。恋と呼んでしまえば簡単なのかもしれないけど、そう単純なものでもなかった。
ただ、これだけははっきりとしている。これからもずっと、彼の傍にいたい。
そんなことを考えていたからか、気が付けば右手を伸ばし、そっと小指を絡ませていた。
「………。」
一瞬だけピクリと反応するも何も言わない。その顔も空へと向けられたままだ。
しばらくの間が空いて、その手が絡んだ小指ごと包みこんできた。温かで大きな手にそっと握られる。
「……っ……。」
始めたのは自分のくせにドキドキした。でも、嫌じゃない。むしろ今は……こうしていたい。繋いだ手は泣きたくなるくらいに優しかった。
守られている。支えられている。それがどんなに心強くて幸福なことか、ちゃんと伝わっているだろうか。
「……なあ、レオンは起きてんのか?さっきから一言も喋ってないぞ。」
ふいに投げかけられたテオの呼びかけに、ふっと気が緩む。「起きてる。」と短く答える彼もまた、琥珀色の瞳を楽しげに細めていた。
――ああ、この時間が愛おしい。本当に、今ここにいることが出来てよかった。
ゆっくりと瞼を閉じる。草の匂いや風の囁き、触れたままの温もり。すべてが心地よく感じられた。
これから先、どんな未来が待っているんだろう。幸せな瞬間を取りこぼさずに覚えていたい。
世界が必ずしも優しいわけではないことも、充分に分かっている。また自分の在り方や選択に揺らぐことだってあるかもしれなかった。
でも、それでいい。迷っても傷ついても、もう一人じゃないから。
誇ってみせる。守ってみせる。
幸せであるために。幸せにするために。
そっと目を開ければ、そんな想いを肯定し祝福するかのように、夜空の星々が輝き続けていた。
〜本編(Sideルカ)END〜
ここまでお読みいただいた方、ルカの物語を見守ってくださりありがとうございました!
完結前にあと1話だけ投稿予定です。
(彼の視点をまだ描いていないですからね…!)
良かったらこちらもお楽しみください。




