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【完結】ルカが幸せになる時〜銀髪の魔法使いは学園で恋と自分を知る〜  作者: 波音叶
三年生

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37. 花の季・始(3月)〜②


夕日が差し込む学園長室。ロゼッタ学園長は優しく告げる。


「学園に残る道もある。その場合、私の補佐をお願いしたいの。」

「補佐……。」


考えてもみなかった。事務処理の手伝いとか、そういうことだろうか。上手く反応出来ずにいるとふふっと笑う。


「ピンと来ていない顔ね、無理もないわ。やることは色々とあるのよ。」


学園の予算や備品の管理、運営に必要な外部との書類を含めたやり取り。毎年の入学希望者の対応もあるし、学園と生徒を守るための防衛整備や見回りも欠かせない。有事の際には当然、先導する役割もある。


穏やかな口調のまま丁寧に説明してくれた。


「いきなり全てを任せるとは言わない。私の隣や先生たちの傍で、少しずつ色々なことを知って覚えていけばいいと思う。……でもね、簡単な道でもないわ。」


そこでふうっと小さく息を吐く。


「外では……色々な考え方が、あるわね。アストラの在り方に共感されないことだってある。」

「………。」

「信じた道を貫くには、時に大変なこともあるという話よ。でもそんな時でも、貴方を一人にはしない。」


力強い言葉が胸を打つ。応えたいと思った。でも、自分に務まるだろうか。


「……僕で、良いんですか。」

「貴方だから良いのよ。」


贔屓じゃありませんよ、と悪戯っぽく笑ってから続ける。


「ルカ、アストラ魔法学園はね、強い魔法使いを育てることを目的にしていない。魔法は自由であるとともに自己と深く繋がっているからこそ、生まれや力を誇示せずに学び、自分とひたむきに向き合っていく場所なの。」

「……はい。」


「私が思うに、貴方はそれを体現している。氷と闇の膨大な魔力に恵まれながら、それを正しく扱う方法と道をずっと模索しているわね。そして人の痛みを理解し、他者を思いやることが出来る。」

「⋯⋯必要なのよ、そういう人が。可能性に満ちた未来の生徒たちを守り、導くために。」


そこまで聞いて、気がつけば一筋の涙が頬を伝っていた。


受け入れてくれた、見ていてくれた、認めてくれた。それがこんなにも嬉しいことだなんて。


最初にこの学園を見つけてくれたのは母だ。学びだけじゃなくて未来の居場所にもなり得ると、母さんは分かっていたのだろうか。


「すごく⋯⋯光栄な、お話だと思います。」


それでも少し考える時間が欲しい、と付け加えると、学園長は深い眼差しで微笑んだ。


「もちろん、ゆっくりと考えたら良いわ。卒業まではまだ時間もあることだし。」

「⋯⋯ありがとう、ございます。」

「良いのよ。それからもう一つ⋯⋯いつも貴方の傍にいる、騎士さんのことだけど。」


このタイミングで向こうからレオンの話が出てくるとは思わず、黙って見つめてしまう。まるで決意を固めるにあたり、彼のことだけが気がかりだというのを見抜かれているみたいだ。


「彼とも面談がしたいわ。この後で呼んできてくれる?」

「はい⋯⋯。」


頷きながらも戸惑いを隠せない。でも具体的に何を話すのかは聞けなかった。


――レオンにだって、彼だからこそ選べる道がきっとある。だとしたらその背中を押すことが、自分のもう一つのすべきことのように思えた。


**

その後の面談に自分は同席せず、戻ってきたレオンが全てを話してくれた。


「⋯⋯諭された。大事に想うのも分かるけど、ルカを選択基準にするなって。」

「そっか⋯⋯。」


心なしかシュンとしているのが叱られた後の犬みたいで、少しだけ可愛らしく思ってしまう⋯⋯が、これは自分にも責任がある。けれど続けられた話は予想外のものだった。


「そのうえで、アストラ学園の教師を目指さないかと勧められた。」

「えっ。」

「ルカは学園長補佐を提案されたんだってな。役割は少し違うが、授業の補助から始めて、同じように学園に残ることが出来る。⋯⋯駄目か?」


不安そうに揺れる瞳に胸の内をくすぐられる。――駄目なわけ、ない。思わず彼の両手をとった。


「嬉しいよ、すごく。それに⋯⋯たしかにレオンに合ってる。」


真面目で責任感が強くて、守ることに長けていて。きっと生徒を傷つけさせないし、曲がった方向には進ませないだろう。尊敬できる先生になると思う。


ロゼッタ学園長には頭が上がらない。色々なことを見据えて道を提示してくれているのが分かった。


「レオンがそれを良いと思うなら、自信を持って。⋯⋯一緒に学園に残れるのも、幸せだ。」

「⋯⋯本当に?」

「なんで急に、そんなしおらしいの。」


珍しい様子に、くすくすと笑みがこぼれた。レオンもつられたように表情を和らげる。それからそっと打ち明けてくれた。


「この学園の教師になれるのなら、ぜひやりたい。けど……それとは別に、俺はルカに対して重いんじゃないかと。」


触れたままの手をぎゅっと握り返される。多分、無意識だ。安心させるべくそっと指先に力を込めた。


「重くない。もし誰かからそう見られたとしても、僕はレオンが好きだ。」

「⋯⋯ありがとう。」


見つめてくる瞳に少しだけ熱がこもった気がして、反射的に身構えてしまう。


違う、触れられたくないわけじゃなくて⋯⋯それにはまだ早いというか、なんというか。


けれどレオンは何もしなかった。ただ重なっていた手が名残惜しそうに離される。これも優しさだと思った。


――そんな彼だから、これからも一緒に歩んでいける。卒業後も大切な場所で一緒にいられそうなことが、本当に、心から幸せだと思った。

少しお待たせしてしまうのですが、次回更新は金曜です。

もうすぐ完結となります!

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